校長ブログ

2024年2月の記事一覧

24/02/26(48)歴史を楽しむ②

 私の愛読書の1つに「熊本の石橋313」(熊本日日新聞社)があります。熊本県には多くの石橋があり、同書によると「全国にある石橋の半数が熊本に現存」しているそうです。この本は1998年(平成10年)が初版で、紹介されている313のうち、その後の災害で失われた石橋も少なくありません。川の大小にかかわらず橋を架けることは、往来や運送などの利便性を格段に向上させ、人々の生活を豊かなものとしました。石橋の建設に関わった石工(いしく)たちは、当時の最先端の技術を駆使しながら命がけで臨みました。石工たちの苦労、住民の希望が石橋の造形美の中にあらわれているようで魅了されてしまいます。この本では、人吉・球磨の石橋として17基が紹介されています。校長ブログでは相良村の橋谷橋と湯前町の下町橋を紹介しました。石橋に関心を持つと、ほかの石造物(せきぞうぶつ)にも感心を持つようになりました。五輪塔(ごりんとう)や宝篋印塔(ほうきょういんとう)、板碑(いたび)、六地蔵塔(ろくじぞうとう)が好きで、「石仏と石塔」(石井進・水藤真監修 山川出版社)を手に、県内を巡っていました。意識して歩くと、石造物にはよく出会います。例えば錦町ですと、土屋観音堂。本や地図、カメラ、野帳をバックに詰めて、道に迷いながら、目的の文化財を探し回っていた30歳代。見つけたときの達成感とともに、授業で生徒に紹介する楽しさも忘れられません。

ご紹介した本

 ▲ご紹介した本

下町橋(湯前町)現在修復工事中

 ▲下町橋(湯前町)現在修復工事中

土屋観音堂と石造物(錦町)

 ▲土屋観音堂と石造物(錦町)

24/02/16(47)春めく

 しばらく寒い日が続きましたが、近ごろめっきり暖かくなりました。事務室横の花壇では、事務の先生と生徒さんが植えたチューリップとムスカリの芽が元気よく出ています。花壇のすぐ側には優雅なしだれ梅、ミツバチが蜜を吸いにやってきます。散歩も気持ちよく、気のせいか、少しずつ彩りが増えてきたような気がします。付近の道を歩いていると、ナズナやオオイヌノフグリ、ホトケノザが一緒になって咲いています。まるで花束を見ているようです。たくさん咲いている菜の花も素敵ですが、私は、ひっそりと咲いている菜の花が好きです。それにしても人吉・球磨の草花は、澄んだ青空と溶け込み、何とも言えない心地よい空間を創っています。「雑草という草はない」とは牧野富太郎の名言ですが、ひとつひとつよく見ると、それぞれに個性があってたくましく生きています。自宅に近づいたころ、どこからかワタゲがゆらゆらと飛んできて、無事に土へ着地。「きれいな花を咲かせてね」と心に願いながら、散歩を終えました。

本校のしだれ梅

 ▲本校のしだれ梅

しだれ梅2

 ▲しだれ梅2

事務室横の花壇・チューリップの芽

 ▲事務室横の花壇・チューリップの芽

ワタゲ

 ▲ワタゲ

一武の野花

 ▲一武の野花

一武の野花2

 ▲一武の野花2

一武の野花3

 ▲一武の野花3

24/02/13(46)歴史を楽しむ

 前回のブログで書きましたが、私は江戸時代の熊本を研究していました。研究は生みの苦しみもありますが、地道に史料を集め、積重ね、自分の仮説を証明する楽しさはそれに勝るものでした。修士論文を書いていたころ、自分の仮説を裏付けために、来る日も来る日も古文書(こもんんじょ)の波の中を泳いでいたある日、6文字の、たった6文字の語句を見つけた時、大きな叫び声をあげたことを思えています(周りに人がいなくてよかった!)。その6文字こそが、自分のすべての論証を紐(ひも)づけるものだったからです。平成18年に「新宇土市史通史編第二巻 中世編・近世編」「新宇土市史資料編第三巻古代・中世・近代」の担当部分を書き終えたあと、単純に歴史を楽しむようになりました。熊本県の高校教師たちが執筆した「熊本県の歴史散歩」(熊本県高等学校地歴・公民科研究会日本史部会編 山川出版社)は、各市町村の文化財やおすすめの文化財散策コースが紹介されています。コンパクトで写真も豊富、地図も載っていますので、まさに歴史散歩にうってつけです。「県史43 熊本県の歴史」(松本寿三郎ほか 山川出版社)や、「街道の日本史51 火の国と不知火海」(松本寿三郎ほか 吉川弘文館)熊本県の歴史が分かりやすく書かれていますので、大きな流れを理解するには便利です。「火の国と不知火海」では、その地域のキーとなる歴史や文化などが取り上げられているので、全部読まなくても、その項目だけ読むのも楽しいです。(例えば、人吉・球磨ですと「人吉町の商人」、「市房信仰」「百太郎溝と幸野溝」など。) 本校図書館には、熊本県や人吉・球磨の歴史に関する本がたくさんあります。図書館で身近な歴史に触れてみてはいかがでしょうか。

 

 ▲ご紹介した本

国指定重要文化財 桑原家住宅(錦町)

 ▲ご近所の国指定重要文化財 桑原家住宅(錦町)

24/02/05(45)辞書

 先月19日、英語科の研究授業を参観したところ、授業で辞書をひいていました。今どきは電子辞書が主流で、辞書を一所懸命ひいている生徒の姿を見てうれしくなりました。

 私にとって辞書は、なくてはならない存在です。記憶力がなくて漢字や言葉の使い方をすぐに忘れてしまうことと、もとからの調べ好きであることがその理由です。
 国語辞書は「現代国語例解辞典」(小学館)、高校生の時から使っていた辞書がボロボロになり、確か30歳頃に買ったものだと思います。分からない・知らない言葉の意味を調べることはもちろん楽しいのですが、たまにくすっと笑える用法に出会えるのも魅力です。「広辞苑 第六版」(岩波書店)も持っていますが、何となく堅い気がして、使う回数は格段に少ないです。
 漢和辞典は「漢語林」(大修館書店)、これは高校時代から使っています。もちろん漢字の読み方や意味、用例を調べるのですが、なぜか画数好きで、漢字の画数が一発で正解するとそれだけでうれしくなります。我ながら変な癖です。
 私は熊本の江戸時代を研究していましたので(過去形です!)、古文書(こもんじょ)の解読は必須、「くずし字用例辞典 普及版」(東京堂出版)は漢和辞典とともに、常に私のそばにありました。現在は二代目ですが、先代は使いすぎて壊れてしまい、本当に使い切ったという思いでした。たった一文字が解読できず、1か月くらい辞典とにらめっこしたこともありました。
 「漢字筆順ハンドブック」(三省堂)はさすがに使う機会は減りました。小学生のときに厳しく筆順を指導されましたので、分からないことはあまりないのですが、たまに悩む漢字があるので(例えば「繍」とか「凹凸とか」)、やっぱり必要です。正しい筆順は美しく文字を書く順と思います。
 最近とくに必要なのが「用例でわかるカタカナ新語辞典」(学研)です。一見して分からないカタカナ言葉や略称が多くなってきたので、とても重宝しています。次々と新しい言葉が出てくるので、辞書に書き足すようにしています。

 電子辞書や検索アプリは本当に便利だと思いますし、私も使っています。ただ、紙の辞書は「繰る」「見る」「考える」など、いろいろな感覚や思考を伴うので、何となくですが記憶に残りやすい気がします。また、説明文が分かりやすく、簡潔に書かれているので、理解しやすいと思います。分からなかったことが分かる喜びと予期しない発見、私が辞書を手放せない理由です。

漢和辞典

くずし字用例辞典

国語辞典

※「悩んだ文字のひとつ」の写真は「くずし字用例辞典」掲載の文字を使って復元しています。
 実際の文字はかなり雑に書かれていてとても悩みました。漢字2文字で、人の下の名前です。二文字目は簡単ですが、一文字目がなかなか解読できませんでした。

悩んだ文字のひとつ