徒然雑記帖

徒然雑記帖

牛乳1リットルが955mlの話題を巡って

 

 昨日は大寒でした。でも、今朝のほうがうんと寒かったように思います。そんな厳しい寒さの中、1年生は朝5時頃から続々と学校に集合しました。福島(スキー)・東京(班別自主研修)の3泊4日の修学旅行です。

 インフルエンザ等で2名が不参加と連絡を受けましたが、出発式を済ませて6時前に鹿児島空港に向けて元気に出発しました。

 

 旅行団を見送り、校長室でネットニュースを見ていたら「1リットル牛乳は実は1リットルない?」というタイトルが目にとまりました。

 何でも小学校の算数授業がきっかけで物議を醸しだしているそうで「牛乳パックに1000mlと書いてあるのに計算すると955mlしか入っていない!」とありました。

 「それって、20年前に生徒に計算させていたことだよね!」と思いながら読み進めてみると、概略次のようなことが書いてありました。

 

 きっかけとなった算数の問題

 ある小学校の先生が算数の授業で子どもたちに出した問題:「牛乳パックに入っている牛乳の量は?」というものだっだ。

 その中で取り上げられたのが、一般的な1リットルの牛乳パックの大きさ。

 縦と横の長さは7センチで、高さは19.5センチだ。これをもとに3つの辺を掛けて入る牛乳の量を計算すると…

 7×7×19.5=955.5 (立方センチ)

 つまり955mlしか入らないというのだ。では差の45mlはどこに入っている?

 勿論、上の三角の部分には入っていません!

 この謎について、日本乳牛協会が説明をしている。

 それは、「牛乳をパックに入れると中に圧力がかかり、膨らむ。そのため、パックは955mlでも、膨らみの分だけ量が増え、1リットル入る」というのだ。

 

 その記事の中で、最後に教育評論家の方が次のような趣旨のことを述べておられますが、本当にそう思います。

 「授業の中で身近なものを題材にして勉強するのはとても良いことだと思う。教科書的な解答と現実は違う。もし子どもたちがそういうことを学ぶきっかけになったら素晴らしいと思う・・・」

 

 話は変わりますが、普段何気なく「1,500cc」、「3.5L」などと車のことを呼んでいると思います。生徒の皆さんは、エンジンの排気量とはそもそも何なのか、計算方法はどうなっているのかご存知でしょうか?

 

 私、40代のとき、カワサキ・ZX-10(ゼットエックス-テン)というリッターバイクに2年間ほど乗っていました。丁度その頃、授業では原動機を教えていて、総排気量や圧縮比を学習する単元で生徒に具体的なイメージを持ってもらおうと、そのバイクのエンジンの諸元を板書して総排気量等を計算させたことがあります。

 冒頭、「20年前に生徒に計算させていた」と書きましたが、いきなりエンジンの排気量を求めるのではなく、小学校の算数で学んだ「体積」の復習をイントロとして扱い、そこで牛乳パックの容積を求めさせていたのです。

 そのとき、45mlの謎についても生徒に考えさせていました。だから、余計に懐かしく今朝の記事を読んだわけです。

 

 ZX-10のカタログ諸元は次のとおりです。

 

 水冷4ストロークDOHC並列4気筒16バルブ

 内径×行程 / 圧縮比 74.0mm× 58.0mm / 11.0

 

 これを元に、排気量を計算します。まず、排気量の定義から説明していました。

 排気量とはマフラーから出る排気ガスの量ではありません。エンジンの排気量とは、シリンダーの容積を表しています。もっと正確に言うと、エンジンのシリンダー内でピストンが動く範囲(上死点と下死点の間)の体積を行程容積といい、この値とシリンダー(気筒)数との積が総排気量になります。

 

 内径(ボア)をd(mm)、行程(ストローク:ピストンが動く距離)をS(mm)、気筒数をNとした場合、エンジンの総排気量D(cc)は

 

D=πdSN / 4000

 

 で求めることができます。πを3.14として計算すると、

 

D= 3.14 × 74.0 × 58.0 × 4 / 4000 ≒ 997.29 cc

 

 ここで、1リットル=1000ccですから、計算上でも確かに約1リットルで、「リッターバイク」と呼ばれることを納得できます。言うまでもありませんが、「ナナハン」と呼ばれるバイクは、この総排気量が750ccということです。

 

 勿論、赤色の公式も、底面積に相当する円の面積を求めるところから説明しますし、4000(=4×1000)に含まれる単位換算の考え方、1cc=1ml=1cm など押さえておかなければならないことは盛りだくさんあります。

 

 このようにして排気量を求めた後、車の排気量が多いということはどういうことか、メリットやデメリットを考えさせるのが常でした。

 メリットは、エンジンのパワー(動力)が大きくなるので、加速がスムーズになり、上り坂もすいすい登り、最高速度も速くなります。また、振動や音が小さくなることが多いです。

 でもデメリットとして、燃費(燃料1L当たりどれだけの距離を走れるか)が悪くなり、重たくなる分頑丈に作らなければならないので必然的に車体価格が高くなることがほとんどです。また、排気量が多いと自動車税も高くなります。

 

 今、若者の車離れがしきりに言われています。私が初任の頃は、機械科の教室には、後ろのロッカーの上などに回し読みされたバイクや車の雑誌が置いてあるのが普通でした。昨今、放課後の教室を回ってもそんな光景は見ません。教壇を離れて15年が経ってしまい、今の生徒たちが車を選ぶ基準もよく分からなくなりました。若い人は今でもやはりデザインなどを重視しているんでしょうか?

 いざ運転するというときには、排気量の違いで運転の快適さなどが違ってきます。今は排気量660ccの軽自動車でも結構快適ですが、やはり高速道路ではストレスが募るような気がします。

 そう言えば・・・、私が中学生の頃はスバル360のように、排気量がそのまま車名となる例などがありました。その車に乗っていた先生(故人)のお顔を思い出したところです。

 これから自動車を購入する3年生の皆さん、ここで述べたようなことも参考にして車選びをしてはいかがでしょうか。

【校長】