羅針盤 夢を持って、世界とつながれ

カテゴリ:式典

全国高等学校野球選手権熊本大会選手推戴式あいさつ

全国高等学校野球選手権熊本大会選手推戴式あいさつ

平成29年7月5日

いよいよ皆さんが最大の目標としている全国高等学校野球選手権熊本大会がはじまります。皆さんは、暑い中、先生方の指導のもと、汗にまみれ、土にまみれ、ひたむきに白球を追い一生懸命に練習をしてきました。それを見ながら、いつも頑張っているなと感心しています。学校の中でも、『明るいあいさつ、意欲的な活動、けじめのある生活』とまさに牛高スピリッツを実践してくれており、学校を引っ張り、元気にしてくれていることに感謝しています。いつも頑張っている皆さんだからこそ、是非、全力を出し切って欲しいと思います。
 さて、本年6月3日、本県出身で熊本工業高校卒業、プロ野球中日ドラゴンズの荒木雅博内野手が48人目となる
2000本安打を達成しました。2000本安打は打者としての快挙で、ニュースでも大きく取り上げられました。
 
ところで、荒木選手は他の2000本安打達成者とは違うところがあります。通算ホームラン数が33本と最小なのです。また、打撃タイトルにも縁がない選手です。入団当初、打撃で結果を出せず、解雇されることを覚悟していたそうです。2000本安打を打てる選手になるとは誰も予想していなかったそうです。荒木選手は、打てなくても守備や犠打、走塁でチームに貢献しようと、こつこつ努力したそうです。そんな努力が監督の目にとまり一軍で試合に出だしたのは入団から6年目。派手さはないが、チームに貢献する姿勢が認められ、22年間の永きにわたりプレーしてきたことで2000
本安打を達成しました。

皆さんには、荒木選手のように、怖れず気負わず、侮らず、ただひたむきにチームのために全力でプレーしてほしいと思います。うまくやることよりも全力でプレーすること、そして、応援し、陰で支えてくださる人に感謝の気持ちを忘れてはなりません。勝ったとしても、仮に負けたとしても惜しみない拍手を送ってもらえるような試合をして欲しいと思います。緊張もするだろうし、プレッシャーもかかるでしょうが、自分を信じ仲間を信じ、青春の記憶に残るような大会にしてもらいたいと思います。

今年の生徒会のテーマは「Step to the Future(未来への前進)です。何事にも挑戦し、自分で自分の限界をつくらず、ステップアップしていこうというものです。高校野球熊本大会でも、このテーマのもと南風ならぬ牛高旋風を巻き起こし、頑張ってください。

牛深高校はいつも団体戦です。後方に座っている生徒の皆さんも先生方も全力で応援しています。本大会をとおして、皆さんの絆がより深まり、誇りがより高くなることを願っています。
 野球部 浦本侑弥主将以下17名の選手を牛深高校代表選手として認めます。皆さんの健闘を祈ります。

平成29年度 第1学期 始業式 校長講話

平成29年度 第1学期始業式 校長講話

平成29年4月10日

 桜の花が咲き、新緑が鮮やかな季節を迎えました。いよいよ新年度がスタートしますが、今、皆さんはどんな気持ちでこの始業式に臨んでいるでしょうか。”春風や闘志いだきて丘に立つ”という句がありますが、新年度を迎え新たな決意をもって、今日の日を迎えたと思います。
 3年生は、進路を決める大切な1年となります。最上級生として学校を引っ張るとともに、新生牛深高校の第1期生として後に続く2期生3期生に方向性を示せるようにそれぞれの進路目標の実現に向け取り組んで欲しいと思います。2年生は中堅として新入生が入り先輩という立場になります。リーダーシップを発揮し本校を支えてくれる柱として期待しています。各自、年度当初に当たり、まずは目標をしっかり持って欲しいと思います。
 
さて、牛高のスローガンは”挑戦”です。新生牛深高校として何事にも挑戦していきたいと思いますし、皆さん一人一人が志を高く持ち、自分の夢に向かっていきいきと生きる生徒であって欲しいと思います。そのためには、私は、皆さんに牛高スピリッツの中の一つ”意欲的な活動”について話をします。
 私は、昨年、熊本市内に住んでいて、私自身が熊本地震を経験し、被災しました。避難所生活を送り、大変な思いをしましたが、その中にあって、全国から世界から”がんばろう熊本”の合い言葉の中、多くの支援が寄せられ元気と勇気を与えていただきました。人の温かさやすばらしさをあらためて感じたところです。
 ある避難所では、小学校低学年が夜トイレの前で水が一杯入ったやかんを両手で抱えて立っていました。トイレに行かれた高齢者の手を洗うためだったそうです。また、進んで高齢者の話し相手になったり、自分より小さい子の遊び相手になったりしていたそうです。また、中学生がすすんで避難された方におにぎりを配ったり、高校生が学校の駐車場に避難してきた車の誘導を行ったりと頑張ってくれました。皆、自分自身が被災して大変だったにもかかわらず、何か自分にできることはないかと考えて主体的に行動してくれたのです。誰かがしてくれるだろう、頼まれたらやろうではなく、今、自分にできることは何か、自分としてどう動けばよいのかを常に考えて行動したのです。この考えや行動は、人を助け人に勇気や感動を与えるとともに、将来に渡り、自分を成長させる考え方や行動です。牛高生として何ができるのか、受け身ではなく意欲的に行動することが大切です。
 先生方も含め全員で力を合わせ、牛高の元気づくりに取り組んでいきましょう。皆さんにとって、目標が達成される1年となることを祈念します。

平成29年度 入学式 校長式辞

平成29年度 入学式 校長式辞

 桜の花が咲き誇り、新緑の息吹あふれる今日の佳き日に、県議会議員 西岡 勝成様、城下 広作様をはじめ多くのご来賓の皆様並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、平成二十九年度熊本県立牛深高等学校の入学式を挙行できますことは誠に喜ばしく、心から感謝申し上げます。
 ただ今、入学を許可しました五十一名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。晴れて本校への入学を果たされた皆さんを、教職員、在校生一同、心から祝福し歓迎いたします。
  今、皆さんは本校に入学した感激と同時に、新しく始まる学校生活への大きな期待に胸ふくらませていることと思います。
 どうか今の気持ちを忘れず、それぞれの夢実現に向けて、果敢に挑戦してください。


 君たちの入学した牛深高校普通総合学科は牛深高校普通科と河浦高校普通科を母体として、一昨年開校いたしました。本日、三期生として入学した皆さんをお迎えし、新生牛深高校として三学年がそろいました。本年は新生牛深高校がその基礎を固め躍進する年であり、皆さんには大きな期待を寄せています。今日から君たちの母校となった牛深高校の発展のために、ともに最善を尽くしていきましょう。
 さて、入学に当たり、本校建学の精神ともいうべき校訓を紹介し、その心構えについてお話しいたします。
 まず「敬愛」です。互いに本校で学ぶ者として思いやりや、いたわりの心を持って助け合い、信頼し、一生涯の友を得るよう、温かい人間関係を作ってください。
 次に「勤勉」です。一心に勉学に励み、志を高く掲げ、自分の目標を明確にして、充実した毎日を送って下さい。君たち一人一人には優れた才能があり、大いに伸びる可能性があります。先輩や先生方は君たちを温かく迎え、熱心に指導してくださいます。素直に耳を傾け精一杯努力してください。
 そして「創造」です。作り出すものは、自分自身の将来であり、未来です。強く逞しく、心身共に健康な生徒であってほしいと願います。闘志を内に秘め、共に切磋琢磨し、何事にも積極的に挑戦してください。創造とは挑戦する意志のないところに生まれることはありません。
 「敬愛」・「勤勉」・「創造」、この三つの言葉を大事にすることが「心構え」となります。この「心構え」から、「高い志」は生まれます。三年間の学校生活の中で、自分の良さを見つけ、自分を磨き、目標を高く掲げ、果敢に挑戦して、自分の未来を切り拓いてください。この牛深高校で、人生の種を蒔き、根を張り、葉を広げて欲しいと思います。

 さて、保護者の皆様、お子様のご入学を心からお祝い申し上げます。
 私どもはこれから、長い人生の中で最も理想を追い求め、心を燃やすであろうお子様をお預かりすることになりますが、教育は学ぶ者の意欲と教える側の熱意、そしてご家庭の協力が一体となった時、最大の効果があるものです。 私ども教職員一同、皆様の御期待にそうべく、お子様の教育に愛情と情熱を持って全力を尽くす所存です。 どうぞ本校の教育活動充実のために、ご支援、ご協力をお願い申し上げます。

  最後になりましたが、ご来賓の皆様にはご多用の所ご臨席を賜りましたことに改めてお礼申し上げますとともに、本校の更なる発展のために、御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

 新入生諸君が、今の胸の高まりを大切に、大きく飛躍されんことを願い、式辞といたします。

  平成二十九年四月十日


熊本県立牛深高等学校 校長 平田 浩一

平成28年度 修了式 校長講話

平成28年度 修了式 校長講話

「天才」

平成29年3月24日(金)


 ある大企業で新入社員の中から4人が選ばれた。会社は彼らに不可解な命令を下す。給料やボーナスは特別に多く払う。経費も好きなだけ使ってよい。その代わり何もしてはならない。生産的なことは一切してはならない、というのである。
 海辺の寮に隔離された彼らは、釣りをしたりトランプや麻雀に興じたりして過ごすが、じきに飽きて世界中の遊び道具を集めはじめる。しかしついにそれらにも飽きてしまう。

 そしてどうなったか。彼らは新しい遊びを考え出したのだ。
 地面に複雑な図面を描き、ボールを使い、人間がチェスの駒のようになって遊ぶというそのゲームは、スポーツと知的ゲームとギャンブルの長所がうまくミックスされたような画期的なものだった。すると、本社から重役が飛んできた。
 「よくやった。管理人からの報告で、急いでかけつけてきたのだ」
 「やったとおっしゃいましたが、わたしたちはなにもやっていませんよ。遊んでいるだけです」
 「いや、いまやっているじゃないか。新しいゲームを開発してくれたではないか。それが目的だったのだ」
 重役の言葉を聞いた4人は不満げに訴えた。「それならそうと、はじめにおっしゃってくれればよかったのに」
 すると重役はこう答えた。「いや、それではだめなのだ。現在あるスポーツやゲームは、どれも19世紀以前に生まれたものだ。そして現在、いまほど新しい遊びが強く求められている時代はないのだが、人々はせかせかし、開発する精神的余裕を失っている。面白い遊びというものは、理屈からはうまれない。そこで優秀なきみたちを、昔の”暇人”の環境に置き、アイデアがにじみ出て形をとるのを待ったのだ。よくやってくれた」

 星新一の『盗賊会社』(新潮文庫)所収の「あるエリートたち」という作品の概要である。


◎「最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常」(新潮社)二宮敦人・著
 東京藝術大学の学生とはいかなるものたちか。
 ある男子学生は、楽器を荒川に沈めようとしているという。沈めて錆付いた楽器を引き上げて展示したり演奏したりしたいのだが、企画書を持っていても国土交通省から許可が下りないと悩んでいる。
 ある女子学生は、アスファルトの駐車場の上にアスファルトでつくった車を置いてみたという。タイヤもアスファルト製で、押せばちゃんと走ると嬉しそうに胸を張る。
 表現には彼らなりの理由や背景があるのだ。彼らにアート、芸術をどう考えているか聞いてみると、そのことがよくわかる。

 アートとは――。
 「知覚できる幅を広げること・・・かなあ」
 「ちゃんと役に立つものを作るのは、アートと違う。この世にまだないもの、それはだいたい無駄なものなんですけど、それを作るのがアートなんで」

 彼らは前に紹介した星新一のショートショートのエリートたちを髣髴とさせる。このようにひたすら役に立たないことをやり続けることの中から、やがて天才的なアイデアが生まれるのかもしれない。実際、藝大では「天才」という言葉がふつうに使われているらしい。たとえば学長からして新入生たちに対してこんなことを言っている。

 「何年かに一人、天才が出ればいい。他の人は天才の礎。ここはそういう大学なんです」
 とは言うけれど、何年に一人どころか、この本には天才と呼びたくなるような人物が何人も出てくる。たとえば藝大生をして「あいつは天才」と言わしめるある学生は、口笛の世界チャンピオンだ。彼は口笛をクラシック音楽に取り入れるという前人未到の道を切り拓こうとしている。

 この本を読んでいると、いかにこちらの頭がコチコチに固まっているかに気づかされる。常識や世間体、役に立つか立たないか。そんな固定観念でがんじがらめになっていることを思い知らされるのだ。
 ・「面白い!」という心の声に忠実になること。
 ・なにかの役に立とうなどゆめゆめ思わないこと。
 ・ひたすら手を動かし試行錯誤を繰り返すのを厭わないこと――。
 ・誰もやっていないことに果敢に挑戦すること。

 こういったことの先にいつか、この行き詰った社会を打ち破るような新しい芸術や思想が誕生するのかもしれない。

平成28年度 第2学期 終業式 校長講話

平成28年度 第2学期 終業式 校長講話

「夢と知りせば」

平成28年12月22日(木)


 思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを
 
 あの人のことを思いながら眠りについたからあの人が夢に現れたのだろうか。もし、夢と知っていたなら目を覚まさなかっただろうものを。
 小野小町の詠んだ歌です。好きな人を思い続けていたらなんとその人が夢に現れた。でも目を覚ましてしまい、それが夢だと分かった。その時の「がっかり感」というものを歌ったものです。

●なぜ、『君の名は。』はヒットしたのか?新海監督の創作意図(狙い)とは?

①「一度見終わった直後にもう一度見たくなる」
 ・複数回鑑賞してもらえるような作品を目指しました。

②「映画の鑑賞時間を1分でも短くしよう」
 ・最初の脚本の段階では116分あったのを、107分にまで削って縮めました。

③「手をかけて、リッチな画面にしていく」
 ・星のまたたきや水のきらめき、特に自然表現における光の変化を意識しました。
新海監督「インタビュー」から

①「リアルさ」(背景など作画)の追求
②「安藤雅司さん」(作画監督)の起用
③「スピード感」(1カット平均3.9秒)の採用
④「日本伝統のモチーフ」(男女の入れ替わり)の活用
⑤「結び」という言葉(「日本的コンセプト」)の使用
NHK「クローズアップ現代+(平成28年11月28日放映)」

●作品『君の名は。』のインスピレーションとなったものは?
 ・アイデアの源は、「自分が興味あること、謎として残っていること」です。端的に言うと、「コミュニケーション」です。「どうして人と人というのは、気持ちを通わすことができるのか」、あるいは「気持ちを通わすことができないのか」と。また、発想のヒントを得るために古典を読みます。

・今回の作品は、出会えないはずの二人の出会いを描いています。男女が入れ替わることで物語は始まるのですが、入れ替わりは出会うための仕掛けです。

・『君の名は。』は、「夢と知りせば」という和歌がインスピレーションを与えてくれました。夢から覚めてなぜかさみしいという感情は、小野小町のいた平安時代から、いやそれ以前から今にいたるまで人の持つ共通の感覚だろうと思ったのです。そこで、「朝、目が覚めると、なぜか泣いている」と物語を始めることで、観客にも「それは分かる」という気持ちになってもらえるのではないかと考えました。

●新海監督の創作意欲の源は?
 こういう物語を作り続けるのは、「大きなものとの一体感」がほしいんだと思います。何か大きなものについて知りたいし、自分が何か大事な「意味のあるものの一部」なんだと思いたいっていう欲求がすごくあるんです。僕の10代の頃の真剣な望みは「他の惑星にいきたい」と「誰も観たことがない景色を初めて見る人間になりたい」でした。それが年齢を重ねて、イノセンスを失って、自分は社会の中で生きていくしかないんだってわからざるをえない年齢になっても、自分が社会的な存在になる前に強烈に憧れていたものにつながりたいっていう気持ちがどうしても消えなくて、それが物語になり、アニメーションになっているんだと思います。

◎新海監督の創作動機である「ゆかし」や古典作品からの着想「故きを温めて新しきを知る」も普遍かつ不変といえるものです。皆さんも、「知りたい」という感情を大切に、読書を通して常に研鑽に励んで欲しいと思います。これも普遍かつ不変であります。