探究する力 ~ 熊本県工業高校生徒研究発表会

 第32回熊本県工業高校生徒研究発表会が11月11日(水)に熊本大学「工学部百周年記念館」(熊本市中央区黒髪)で開催されました。県内の県立工業高校及び工業系学科を有する高校の10校が参加しました。

 工業の専門科目に「課題研究」があります。御船高校の電子機械科でも3年次に2単位設定しており、生徒たちがグループごとに分かれ、モノづくりに関する広い題材の中から、指導する教師と共にテーマを立て、その改善、改良に取り組む学習です。今年度の本校の課題研究の代表に選ばれたのは、「Pepper(ペッパー)の有効活用」(指導:緒方教諭、3年A組の男子5人)です。

 ペッパーは(株)ソフトバンク社が開発した人型ロボットです。このペッパーが昨年度から御船町教育委員会に貸与され、小学校の英語の授業に活用できるようプログラミンを本校の電子機械科で担当してきました。昨年度は御船小と小坂小で実際にペッパーを活用しての英語の授業が行われ、電子機械科の生徒たちが課題研究で取り組んだプログラミングの成果が発揮されました。

 今年度の3年生はさらに分かりやすい英語学習の助けになるようプログラミングの改良を図ったのですが、コロナ禍でこれまでのところ小学校でのお披露目はできていません。しかし、そのプロセスを発表しました。重量が約30㎏もあるペッパーを会場に運び、ステージ上で実演させ聴衆の関心を引き付けての研究発表ができたと思います。

 今回も10校それぞれの特色が遺憾なく発揮され、聴きごたえがあり、そのレベルの高さに幾度もうなされました。最優秀賞は球磨工業高校(建設工学科)の「逃げろ! 防災の在り方についての探究」でした。球磨川本流へ流れ込む支流の影響を現地測量や水流実験から検証し、バックウォーター現象の危険性を指摘するなど球磨川の治水の在り方について警鐘を鳴らす内容でした。しかも、この研究活動の最中、人吉・球磨地域は「令和2年7月豪雨災害」に襲われたのです。生徒たちの危機感は的中したことになります。予断や偏見のない、高校生の純粋な探究心が成せる高い研究成果に私は脱帽の思いでした。

 この熊本県工業高校生徒研究発表会は平成と共に始まり、回を重ねてきました。年々、内容のレベルが上がり、プレゼンテーションのスキルも向上しています。今年度は、新型コロナウイルス感染防止のため、「ものづくりコンテスト」はじめ工業系の各種行事は軒並み中止となりましたが、会場の熊本大学のご協力により、感染防止対策を徹底することで実施することができました。

 素晴らしい会場で、生徒たちが学習成果を発表できたことに心から感謝します。そして、今後一層、社会に目を向けた旺盛な探究心を生徒に養っていく必要性を痛感した一日でした。