自分の強みは何か ~ 進路実現への挑戦
「〇〇社から内定頂きました!」、「〇〇大学に推薦合格しました!」等の吉報を携え、喜色満面の3年生が校長室に報告に来てくれています。喜びを分かち合うと共に残りの高校生活への助言を贈ります。一方、不調に泣く生徒たちもいます。特に今年はコロナ禍の影響で就職状況が厳しく、求人数及び採用者数が減り、最初の採用選考で涙を呑むケースが目立つようです。
希望の企業から採用内定を得られなかった生徒の落胆と失意は大きいものがあります。確かに、希望の企業から選ばれなかった現実は受け止めなければなりません。その企業が求める資質、適性の面で不十分だったのか、他校の受検者の方が成績優秀だったのか、原因は幾つか考えられます。しかし、あなたの全てが否定されたわけではありません。今回はその企業とのマッチング(相性)が合わなかっただけとも言えます。あなたにはまだ進路実現の時間と機会が十分に残されているのです。
18世紀の作家デフォー(英国)の冒険小説『ロビンソン漂流記』は、ひとり無人島に流れ着いた船乗りロビンソンン・クルーソーが、絶望に陥らず、新しい生活を始める物語です。ロビンソンは、不安と失意を克服しようと努め、絶望的な境遇について、帳簿の貸方と借方のような形式で考えてみます。
「悪いこと 私は救出される望みもなく、この絶島に漂着した。
しかし私は生きていて、船の他の乗組員は全部溺死した。
悪いこと 私は人類から引きはなされ、この島で全く孤独に生活しなければならない。しかし、私は食糧がない、不毛な地で餓死することになったのではない。
悪いこと 私は体を蔽(おお)う着物さえもない。
しかし私がいる所は熱帯で、着物などはほとんどいらない。
悪いこと 私は人間や野獣に対して自分を守る術がない。
しかし私が漂着したのは、アフリカの海岸で見たような猛獣は住んでいないらしい島で、もしこれがあのアフリカの海岸だったならば私はどうなっていただろうか。」
(『ロビンソン漂流記』(デフォー、吉田健一訳、新潮文庫)から引用)
このように考えを整理したロビンソンは、最悪と思える境遇の中にも希望を見出し、島での生活を始めていきます。
一回目の試験に不合格となった生徒の皆さん。皆さんにはそれぞれの強みがきっとあります。逆境の今こそ、自分の強みを押し出して、次の目標へ進みましょう。終わった「昨日」を捨てることなくして、「明日」を創ることはできません。皆さんは絶海の孤島にいるのではありません。悲観する必要は全くないのです。進路実現への挑戦は始まったばかりです。