「一瞬を切り取れ」 ~ 御船高校写真部
本校の第2棟から第3棟(特別教室棟)への2階渡り廊下の東側は、写真部の作品展示スペースとなっています。ここを通る時は写真を観るのがいつも楽しみです。今週、2学期の始まりを機に展示作品が一新されました。令和2年度熊本県高等学校文化連盟写真専門部「前期写真コンテスト」の入賞作品が並んでいます。今回、参加校30校、応募作品1007点の中、写真部員12人全員が入賞を果たし、そのうち3人が優秀賞という特筆すべき結果を収めました。
写真部は、顧問の橘先生の指導のもと、近年めきめきと実力を付け、県高校写真展では上位を占めるようになっています。この度の入賞作品群も誠に見ごたえがあり、展示スペースの前でしばし見入ってしまいます。4月から5月にかけて新型コロナウイルス感染拡大に伴う臨時休校が続き、写真部も思うような活動ができませんでした。従って、2、3年生は前年度後半の未発表の作品を持っていますが、1年生は学校再開の6月から部活動を始めたため、短い期間での撮影、作品提出となりました。
優秀賞3人の一人、3年生の大場さんの作品は、「巣立ち」というタイトルが付けられ、前年度の卒業式の日の教室風景でした。きっと一年後の自分の姿を重ねて、先輩たちの巣立つ表情を撮ったのでしょう。同じく優秀賞の2年生の原君の作品は「気配」というタイトルで、学校の廊下、音楽室のピアノ、美術の石膏(せっこう)像の3枚の写真が組み合わされ、人物は写っていないのですが、濃厚な人の気配が漂う学校空間を表現しています。恐らく、臨時休校で無人の学校をモチーフにしているのではないかと思います。そして1年生で優秀賞を受賞した岩山さんの作品タイトルは「雨の匂い」。やはり三枚組の写真で、幻想的な蓮池が舞台で、朦朧とした蓮の花、そして蓮の葉の上の大きな雨滴が印象的です。観る者に雨の匂いが伝わってくるようです。岩山さんの作品は、来年度の全国高校総合文化祭(和歌山大会)の熊本県代表にも選ばれました。
御船高校写真部のモットーは「一瞬を切り取れ」です。今回の展示作品には、水道の蛇口から水滴がこぼれ落ちる瞬間(タイトル「0.1秒の世界」)、鳥が川面から飛翔する瞬間など、まさにその一瞬を切り取った秀作がいくつも見られます。その決定的瞬間を捉えるためには、粘り強さ、集中力、そしてその瞬間を想像する力などが必要なのでしょう。
写真部の作品群と対面すると、私たち一般の大人には見えない世界を見る感受性、そして決定的瞬間をアート作品に昇華させる確かな技術が兼ね備わっていることがわかります。
全校生徒の皆さん、必見です。