「それいけ、矢部高校・御船高校合同チーム!」 ~ 秋の熊本県高等学校野球大会

   「暑い中、選手も頑張ります。私たちも暑いところで応援しましょう!」と矢部高校野球部の保護者の方が大きい声を掛けられました。あまりの強い日差しのため、試合開始までネット裏の屋根の下に陣取っていた矢部・御船高校野球部の保護者の皆さんや私たちは意を決し、炎天下の1塁側スタンドに移動しました。

   9月16日(月)の祝日、12時半から山鹿市民球場で「第145回九州地区高等学校野球熊本大会」初戦プレーボール。35度近い暑さの中での観戦となりましたが、気温以上にグランド、スタンド共に熱気あふれる試合の始まりでした。矢部高校と御船高校の1、2年生野球部員はそれぞれ3人と8人で、単独ではチームがつくれません。従って、夏の大会が終わって3年生引退後は、両校で合同チームを結成しました。今回の県大会には55チームが出場していますが、そのうち3チームが合同チームです。

   合同チームと言っても、普段は一緒に練習はできません。矢部高校と御船高校は同じ上益城郡内にありますが、両校は27㎞も離れているのです。日頃の練習は別々で、土日の練習試合が合同練習に当たります。そのため、守備の連携プレーや攻撃のサインプレーの練習不足は否めません。試合前の練習においても、守備はぎこちなく、観ていて不安をいだくものでした。初戦の相手の人吉高校は部員が30人を超え、夏の県大会予選でも3回戦まで進出しており、試合前のきびきびとした練習の様子を見ても苦戦必至と思われました。

   しかし、いざ試合が始まると、矢部・御船高校合同チームはよく打ちました。ヒットの数は人吉高校を上回りました。けれども、守備面の不安的中でミスが続き、失点も重なりました。先制するも逆転され、同点に追いつくも、突き放され、最後は7対11で敗れました。選手わずか11人での精一杯の試合だったと思います。ピンチにおいて、矢部高校と御船高校の選手同士お互いを励まし合い、エラーをしてもかばい合い、よく意思の疎通を図っている光景が見られました。暑さで体力を消耗しながら、少ない人数で最後まで全力プレーする選手の姿に、スタンドで応援していた私たちは胸が熱くなりました。スタンドの保護者の声援も人吉高校にひけをとらないものでした。試合終了後、私は矢部高校の保護者の皆様に応援の御礼を申し上げました。ある保護者の方が「ようやったばい」と目に涙を浮かべながら言われました。この一戦で両校の保護者同士の絆がとても強まったようでした。

   最後に11人の選手達の健闘をねぎらいましたが、選手達は負けたことを心底から悔しがっていました。この敗戦から選手達が学んだものは大きいと思います。

   合同チームが結成されてまだ2ヶ月です。これからの躍進に期待したいと思います。「それいけ、矢部高校・御船高校野球部合同チーム!」