学校からのおしらせ

2021年9月の記事一覧

今、熊聾では・・・(その298)

 「大阪経済大学第21回高校生フォーラム」から『17歳からのメッセージ』募集があり、本校から高等部4人の生徒が応募していました。4人の生徒たちの作文はどれも自分の内面を見つめ、将来に向けて自信と誇りをもって生きていこうとする気持ちが表れているものでした。

 つい先日、審査の結果が学校に届き、高等部2年の山口果恋さんの作品が全国3万1千通余りの応募の中から、見事『銀賞』を獲得しました。

 以下は、山口さんの作品です。


 秘せられた思い

熊本聾学校高等部2年 山口果恋 

 肩にかからない程度の耳がかくれるボブ。中学までの私のヘアスタイルだ。補聴器を見せて関心をひきたくなかった。別につらいとか不幸だと思ったわけではない。でも、「耳が聞こえないから」と三年間前の席だったり、リスニングがある教科や、苦手な教科は別教室で学んだりの手厚い「特別」は、先生には悪いけど時々うざいと感じた。別教室の授業支援は孤独感や疎外感であまり楽しい思い出はない。そんな日々で中学校生活を終えた。

 高校は親元を離れ、耳の聞こえない子どもたちが集う学校へ入学した。ろう学校は普段手話で会話をしているらしくて、見学してみて興味がわき、入学を決心した。生徒たちは皆とても優しくて、気にもかけてくれた。それから積極的に行動し、いつの間にか手話もだんだんできるようになってきた。今は同級生の皆と一緒に勉強する機会が増えている。皆と学べるのが楽しくてうれしくて気づけば授業が終わる時間が早く感じる。

 私は皆のように自分を変えたくて思い切って髪を伸ばしポニーテールにした。補聴器もしっかり見えるように結んでいる。少しの変化だが、他人の視線を恐れずありのままの自分をさらけ出すことができたと思うと、なんだかモヤモヤが少しスッキリして、いい気分になった。いつか、こんな自分にもっと自信がついてもっといろんなことに挑戦できるといいなあと考えている。ああ、上手く自分を変え、私らしく生きるってこんなにも楽しいのだ!


     令和3年9月22日        
       熊本聾学校 校長 五瀬 浩