徒然雑記帖

2018年1月の記事一覧

生徒、よくやってる!

厳しい冷え込みが続いています。

今朝の花壇、8cmほどの高さで立つ霜柱に「こんなに長いのは初めて見た」と感激しました。ところが、校舎の陰にあるからでしょうか、日が傾き夕方4時半を過ぎてもご覧の通りほとんど解けておらず、改めて人吉の寒さを実感しました。


そのような折り、建築科の実習棟からトントントンと聞こえましたので、何を作っているんだろうと寄ってみました。

2月10日に実施される技能検定(建築大工)に向けての練習なんだそうです。

 
  これまた初めて見る迫力ある光景でした。今までものづくりコンテストなどで10人位が一つの部屋で競っているのは何度も見てきましたが、これほど多くの生徒たちが一斉に練習をしているとは・・・。

ノミに向かって一心不乱に槌をふるう光景、校歌に「勤労の槌をふりつつ ふきあぐる汗を誇らん♪」を想起させ、ものづくりに対する真剣な眼差しも相まって圧倒されました。

担当の先生によると、建築科の生徒、専攻科の学生が3級に計27人、2級に計17人が受検するとか。

凍てつく寒さの中ですが、手元が狂ってげんのうで手を打たないように注意して頑張ってください。

【校長】

大〆の授業

   3年生は明日1月26日から学年末考査に入りますので、今日が高校最後の授業日になりました。先生・生徒共々、きっと感慨深いものがあるはずです。

 

私自身、花束贈呈などセレモニー的に行われていた大学教官の「最終講義」は別として、高校の最後の授業はほとんど記憶がありません。しかし、今でもその日の天気まで思い起こせるのが一つだけあります。それは国語の授業です。まだ若い先生でしたが、人生についてしんみりと考えさせられる内容を最後の授業の教材にしてくださいました。伊勢物語の最終段(125段:ついに行く道)です。この中に出てくる

 

つひに行く 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは 思わざりしを

 

を紹介して解説と鑑賞をされたのです。

これは「ちはやふる・・・」の百人一首で有名な在原業平(825880)が、病気で伏せたときに詠んだ歌とされています。

 

人は皆死ぬということは誰でも知っているわけですが、それがいよいよ自分の身になっての驚きと嘆きを詠んでいます。人が必ず行かねばならない道(死)なのだとは聞いて知っていたのだが、こんなにも突然その時がこようとは思いもよらなかったなぁ。人の明日はわからないものであり、そうしたことがあると分かっていたなら、また別の生き方もあっただろうに・・・といったところでしょうか。

 

特に技巧がないので、今を生きる私たちが普通に読んでも分かりやすく、源氏物語の主人公、光源氏のモデルともされる華やかな生涯を送った業平の生涯を考え合わせると、より強いインパクトを感じます。

 

古典の文法を覚えるのが苦手で、いつの間にかなるべく関わらないようなっていた古典の授業の受け方を「もっと真面目にやっておけばよかった、時既に遅し・・・」と暗澹たる気持ちになり、この時ほど悔いたことはありませんでした。

 

そんな私も教職に就き、「やはり教師としては、最後の授業や最後の課外というのは、生徒たちにとって後で思い出してもらえるくらい印象的であって欲しいものだ」と常々考えていました。どんな展開になるのだろうかと、いつもより緊張しながら職員室を出ていたことを思い出します。


 

 

左の写真は、機械科3年A組の最後の最後、6限目の大〆の授業の様子です。テスト前ということで、自習をしていました。高校最後の定期考査、頑張ってください。

 

 


 

そして、保護者の皆様方にとってはお弁当作り、本日が実質的に最後になりました。生徒たちはいつも以上に味わって食べたはずで、親子共々感慨深いものがあることでしょう。(右の写真は建築科3年のお昼ご飯の様子です)

生徒たちは帰ってから感謝の言葉を口にしたでしょうか?3年間大変お世話になりました。                        

 

【校長】

課題研究発表会を見学して 

3年生の課題研究の発表会、全科とも少しずつ見学させていただきました。1年間の取組を、わずか10分程度の中で後輩たちにも分かりやすくプレゼン(発表)することはとても難しかったことと思います。課題設定の理由、取組経過、苦労した点、感想を上手に盛り込み堂々と発表している班が思いのほか多いように見受けました。2年生の聴く態度も総じて立派でした。

御指導いただいた先生方には大変お世話になりました。

 

3年生の皆さん。機械科と電気科では挨拶でも触れたことですが、進学にしても就職にしても今後プレゼンをする機会は多いはずです。中には、会社の命運をかけたプレゼンをすることになる人もきっといることでしょう。今後目にする他人のプレゼンの良い点はどんどん取り入れ、磨きをかけていってほしいと思います。

 

ところで、どういう文脈だったか覚えていませんが、幸福論を扱ったある本に「日本人は課題を見つけそれを解決するための取組を行うことに、幸せを見いだす民族である・・・」との一文を読み、思わず「そうだよね!」って頷(うなず)いたことがあります。

その一文を念頭において、平成12年度から段階的に始まった学習指導要領で小・中・高校に入ってきた「総合的な学習の時間」(専門高校では「課題研究」で代替)の「ねらい」を改めて読み直してみます。

 

横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して,自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育成するとともに,学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的,協同的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにする。

 

何と小・中・高校同一文言です!そして、課題を解決する中で身に付けた能力を、自己の生き方を考える態度の育成に繋ぐことを求めています!!

なるほど、それがうまくいけば、人は(日本人は?)喜びや幸せを感じるんだろうな・・・、と漠然と納得してしまいます。

 

話は変わりますが、多くの皆さんが就職する製造業の生産現場では、「カイゼン」活動が活発に行われていることをテレビ等で見聞きしている人も多いはずです。いわゆる「改善」のことで、作業効率の向上や安全性の確保などに関して、現場の作業者が中心となって生産ライン等の問題点を見つけ、知恵を出し合いその解決をはかっていくものです。

この概念は海外にも「kaizen」という英単語で広く普及し、とくにトヨタ自動車のカイゼンは有名で高く評価されています。活動内容としては、3年生の皆さん方が1年間取り組んできた課題研究のイメージで捉えてもらっていいのですが、課題研究ではそれほど強く言われなかったかもしれないことが一つだけあります。それは、どれだけのコスト削減に繋がったか、即ち結果を数字で表現するなど定量的であることが求められることです。

 

私自身昔、ものづくり企業に勤めていたことがあります。当時の資料は退社時に返却していますが、研修時にとったノートにカイゼンの進め方をメモしたものが出てきましたので、改めて読み直してみました。入社を控えている3年生の皆さん方のために参考までに載せておきます。ある意味、普遍的なものであり、課題研究でも同様なプロセスを踏んでいると思いましたので。

 

問題提起(違和感即ち問題意識を感じる)

 ↓

問題確認(問題を具体化・定量化し解決すべき問題を明確化する)

 ↓

目標設定(問題が解決された状態を暫定的に決め、その測定手段を明確化する)

 ↓

原因分析(問題の原因を特定)

 ↓

改善策立案(原因を除去する解決策を複数立案)

 ↓

改善策評価(複数の解決策から1つの解決策を決定)

 ↓

実行計画作成(解決への段取りを考える)

 ↓

実行(解決策を段取りに沿って進める)

 ↓

評価(解決状況を評価し数値化する)

 

いかがでしょうか、イメージが湧きますか?

脅(おど)すつもりはありませんが、企業に入ったら勤務時間の内外を問わずこの「カイゼン」活動にかなりの時間を割かざるを得ないことが多いにありえます。特にプレゼン(発表会)の前は、遅くまで残って練習をすることもあるはずです。職場の班単位で競う時は、指導役の班長さんがハッスルして若い社員を鍛えます。社長賞とか部長賞とか懸っていることも多く、報奨金まで出るので熱が入るのです。ブ●ックなんて言っていたら務まらないかも?

 

企業在職中のカイゼン活動の経験があるからでしょうか、課題研究の発表会のシーズンになると、つい次のような思いが頭をよぎってしまいます。

それは・・・、加工貿易(原料や半製品を他国から輸入し、それを加工してできた製品等を輸出する貿易の形態)で立国することが宿命づけられた我が国の産業界(製造業の経営者たち)の要請で、カイゼン活動のための経験値獲得を期待されて、「総合的な学習の時間」などが学校に導入されたのではないかという思いです。深読みし過ぎでしょうか? 

        【校長】

校長室の新しい絵

   昨年11月の初めに校長室の絵を掛け替え、心なしか校長室が明るい雰囲気になりました。

それまでの絵は、寒村にポツンと立つ茅葺きの民家を描いたもので、晩秋の侘しい風情も相まって、寂しさが一層募るような風景画(油絵)でした。

今度の絵は、赤い薔薇など色とりどりの花が咲き乱れる中を2匹の蝶が舞うもので、真ん中に置かれた金色の懐中時計との取り合わせが奇抜なB1サイズの水彩画です。

画題は「縛りの中で」。美術部の河野堅君(機械科2年A組:湯前中出身)の作品です。河野君は美術部に所属し、県風景画コンクールで特選になるなどめきめきと力をつけており、将来が楽しみな生徒です。河野君によると、「限られた時間の中で懸命に咲く花の美しさを懐中時計と多くの植物で表現した」ということでした。

  花と蝶までは分かりますが、懐中時計がなぜ出てくるのか私には今ひとつ分かりませんでした。スペインの抽象画家サルバドール・ダリが懐中時計をモチーフにした絵を沢山残していることを思い出しながら、「どういう発想でそういうことになったか」と河野君に聞いてみました。しかし、本人も分からないということでした。まさに抽象的で変幻自在なシュルレアリスム(超現実世界)???


  「絵を描くことで、心の中が整理できる」と聞いたことがあります。「描く」ということは、心の中に澱(おり)のように溜まった感情を一つ一つかみ砕くように整理し、絵として外に出し、再び自分の中に取り込むという作業に他ならないということでしょうか?鏡に映った自分を見るように、客観的に絵の中の自分の内面を見つめることができるということかもしれません。きっと河野君の心象風景に懐中時計があったのかな・・・と勝手な想像をしました。

私自身は列車など乗り物や工作機械などをスケッチするのは苦になりませんが、絵心はなく、小中高を通して絵が上手な人が羨ましかったです。

だからでしょうか、生徒の入選作を鑑賞するために美術展に足を運ぶことはあっても、日展をはじめ有名な画家の展覧会に足を運ぶことは滅多にありませんでした。

また、天皇の前で二手に分かれて、交互に見事な絵を披露して勝敗を競う絵合(えあわせ)など、そういうバトルが古く平安時代から行われていたことを「知識」として知ったのも40代になって源氏物語を読んでからでした。

さらに、前任校の美術の先生から、「描いている画面に対して集中するので瞑想をしている時のような無我の境地に入ることがある」とか聞いて驚いたこともあります。絵心が欲しかったな・・・と今改めて思います。


  色々書き連ねましたが、校長室にしょっちゅう来られるお客さんの中の何人かが「ひょっとして絵が替わりましたか?明るくなりましたね」と気付いてくださいました。私たち人間は、本能的にこういう想像的な芸術の世界を必要とする生き物であるということを実感し、嬉しく思う瞬間です。

【校長】

今年度の就職試験を振り返る

  先日のセンター試験では、地理Bで出題された人気キャラクターのムーミンを取り上げた問題1について、菅官房長官が記者会見で言及するほど波紋を呼んでいます。

私も本校教育の総決算ともいえる就職試験で、どのような問題が出題され、面接で何が問われたのかを知っておくことは大事なことであると思い、3年生の皆さん方が提出してくれた全ての受検報告書に目を通してみました。

社会の出来事を反映した時事問題や面白いお題の作文、唸るような内容のグループワーク、思わず首をひねりたくなるような問題を見つけましたのでご紹介します。(【 】内に地区と業種を示しました。3社以上で出題があった問題は【多数】と表記しています)

1,2年生の皆さん方は、このような問題に近い将来相対しないといけません。特に時事問題は、日頃から新聞を読むなどアンテナを高く張って生活しておく必要があると痛感したところです。今の実力でどのくらい対応できますか?

作文

・あなたは日本昔話の登場人物で誰になりたいか。【中国・電機】

・次の4つの中からあなたが修理できるものを選び、今まで学んだことを活かして修理の手順や必要な道具を詳しく書きなさい。【関東・技術サービス】

①テレビがつかない ②PCでメールが送れない 

③自分の家だけ停電 ④充電用掃除機が使えない 

・入社3年後の目標を書きなさい。(「20年後の自分について」「どういう社会人になりたいか」等も)【多数】


    集団討論

・本校の野球部が全国大会に出場するにあたり、生徒会としてできることは何か。【関東・技術サービス】

・新しく祝日を2日追加するならどの日にどのような名前の祝日を追加するか。また、今ある祝日の中で1日廃止するならどの日を廃止するか。【中部・鉄鋼】

・現代におけるドラえもんの道具を答えよ。【中部・製造】

・無人島へ物を5つ持っていけるとしたら何を持っていくか。【関東・鉄鋼】

・社会人として大切なこと。【九州・電力】


    筆記試験(時事問題系の一般常識)

・桐生選手が陸上100mで記録を更新し日本人初の記録を出したが、そのタイムは。【中部・鉄鋼】

・選挙権は満何歳からか。【関東・電力】

・今の内閣総理大臣の名前をフルネームで漢字で書け。【多数】

・平成何年から次の年号に変わるか。【関東・電力】

・隈 研吾氏について何を知っているか。【九州・建設】

・政府や経済界が推奨しているキャンペーンで、毎月末金曜日の夕方に買い物や旅行などに充てることを何というか。【関東・電気】

・最年少プロ棋士の名前は。【関東・電気】

・2016年に国民全員に番号を与える制度が始まったが、その制度の名称は。またそれは何桁か。【多数】

・東京オリンピックがあるのは何年か。【多数】

・今年の甲子園の優勝校はどこか。【関東・建設】

・2017年のアメリカ大統領選で当選し、第45代アメリカ大統領になったのは誰か。【多数】

・今年、人間国宝になった方4人の中から1人の名前を答えよ。【関西・建設】


  面接

・ドラえもんとクレヨンしんちゃん、どっちと友達になりたいか。その理由は。

【関東・自動車】

・弊社のHPを見て思ったことは何か。【九州・サービス】

・ジュニア・マイスターとは何か。【多数】

・年代がバラバラの人と一緒に仕事をやっていく自信があるか。その根拠は。(その他「めんどくさいおじさんばかりだけど意見が違ったらどう対処するか」「人との価値観の違いをどう乗り越えるか」等も)【多数】

・運は良いほうか、それとも悪いほうか。【関西・技術サービス】

・英語は話せますか。【関西・建設】

・昨年弊社に入社したあなたの高校の先輩とあなたはどういう関係か。その先輩はあなたの入社をどう考えていると思うか。【中部・鉄鋼】

・原子力発電についてどう考えるか。【九州・電力】

・あなたの学校の教育理念は。【関西・建設】

・人吉はどんな所か。【中国・鉄鋼】


  集団工作等

・マシュマロタワーにチャレンジ!!2【関東・電力】

パスタの乾麺20本、テープ90cm、たこひも90cm、マシュマロ1個(頂上につける) これらを使ってより高いタワーを4人で作りあげる。(説明、個人ワーク、作戦タイム、実際の作業[17分]、反省等を合わせて70分)

・輪投げで高得点を出して勝とう。【中部・鉄鋼】

   班で協議後、競技者と応援する人に分かれて実際に対戦競技した後、手順や良かった点や悪かった点を再度話し合う。


  その他

・1+2+3+・・・・・・・・+98+99=【  】【多数】

・(5□4)×3□2=1 【多数】

(□に+,-,÷,×を入れて式を完成させる問題を短時間にできるだけ沢山解くもの)

 このような算数系の問題は、普段から私のサイトを見て数に関する感覚を磨いておくと得意になるかもしれません。

数学系では前任校の就職試験報告書で思ったことですが・・・、企業によっては次のような三角関数の加法定理を使った計算で導かれることも数学的常識として当然暗記しておくべき事項と捉えているんだと驚いたことがあります。

cos15°=(√□+√2)/

何とこの問題、本校の受験報告書でも出題の報告があっていました!【関東・電力】

驚いたといえば、国語で「三大和歌集」【中部・電気】を問う問題位なら常識かもしれません。しかし、これも前任校の就職試験報告書の話になりますが、大学の国文科の入試ではないのに、これは一体何?、よほど古典が好きな人事課の社員が作問したの?と思った問題がありました。源氏物語の順序を並べるもので、確か次のような選択問題で出題されていました。

桐壷→帚木→【  】→夕顔→若紫→【  】→紅葉賀→花宴→・・・

ア:葵 イ:末摘花 ウ:空蝉 エ:須磨

  全体としては、コミュニケーション能力があるかどうかをみる質問や問題が増えていることをすごく実感しますが、それについてはまたいつか触れます。

【校長】

*1 ノルウェーとフィンランドを舞台にしたアニメーションとして、「ムーミン」と「小さなバイキングビッケ」を挙げ、例示した両国の言語との正しい組み合わせを選ぶ問題です。

この問題について、大阪大学大学院のスウェーデン語研究室は、1月15日に、ムーミン谷がどこにあるかは原作に明示されていないとして「舞台がフィンランドだとは断定できない」という見解を明らかにして、説明を求める意見書を近く大学入試センター試験に提出するとしたと報じられました。



*2  アメリカ発のこのグループワーク、実際に行った様子を特集したあるサイトによると、全体の平均が50cm位の中、最高は92cmだったとか。

別のサイトでは一番高い塔を建てられたのは、建築家のチームだったそうです。本校の建築科が崇城大学主催の爪楊枝タワーコンテストに参加しており、その実績に照らし合わせても、また専門性から考えても当たり前かもしれません。しかし、数多くの大人が参加したこのゲームで、多くの大人より好成績を収めたのが、何と幼稚園の新卒者たちで、一番ひどかったのがビジネススクールの新卒者たちだったとあり、とても意外でした。実際の競技の場面を見てみたいと思いました。盛り上がるんでしょうね?