徒然雑記帖
二次関数の頂点の座標
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体育大会が成功裏に終わり、その余韻を味わう間もなく月が変わり、今年度後半の授業は雨の中始まりました。廊下越しでしたが、生徒の皆さんは真剣に授業に集中しているように見受けました。
1年生の数学の授業では、二次関数の平行移動の問題をやっていました。
放物線を平行移動したとき、移動前と後とで「どの点とどの点が対応しているか」を見るのは難しいです。しかし、1点だけわかりやすい点があるんですよね。頂点です。頂点は、谷の底か山の頂上なので、平行移動してもどのように移動したかがわかるわけです。ということで、頂点に着目して計算するわけですが、そのためには、平方完成して頂点の座標を出さなければなりません。
平方完成ってややこしいですよね。
① xを含む項だけ、x2の係数でくくる
② xの係数の半分の2乗を足して引く
③ (最初の3つの項を)因数分解する
④ 分配法則を用いる
⑤ 定数項を計算する
自分が高校生のときも、①~⑤の一連の計算に辟易(へきえき)していたことを思い出します。生徒の皆さん方はそんなことはありませんか?
こういう計算の訓練は、今思えば理科の実験は勿論、掃除や料理など決まった順序で作業をしなければならないときの基礎基本の力を養っているのかもしれませんが、当時、私は平方完成が面倒くさかったので、頂点の座標を公式を使って一発で求めていました。
y=ax2+bx+cの頂点の座標は(-b/2a,-(b2-4ac)/4a)なんですよね。
なぜそうなるか・・・、大丈夫だとは思いますが、上記①~⑤に沿って導いておきます。
y=ax2+bx+c
=a(x2+b/a・x)+c ①
=a(x2+b/a・x+b2/4a2 -b2/4a2)+c ②
=a{(x+b/2a)2-b2/4a2}+c ③
=a(x+b/2a)2-b2/4a+c ④
=a(x+b/2a)2+(-(b2-4ac)/4a) ⑤
この頂点の座標、ごちゃごちゃしていてかえって覚えにくいと感じるかもしれませんが、「二次方程式の解の公式」と似ているので、慣れれば何ということはありません。何と言っても平方完成するときよりも時間を短縮できるので、覚える価値は高いと思っています。
例えば、今午前10時47分現在の本校の総アクセス数は 774791 です。偶然にも6桁目と3桁目が7という同じ数字ですから閃きました。
上3桁の774と下3桁の791を、それぞれ二次関数のa,b,cに当てはめてると次のように2つの関数ができます。(ここでは、変化をつけるために偶数は-(マイナス)、奇数は+(プラス)とします)
y=7x2+7x-4 ・・・① y=7x2+9x+1 ・・・②
二次関数②のグラフ(放物線)は、関数①のグラフをどれだけ平行移動したかを求めてみましょう。
①の頂点は(-b/2a,-(b2-4ac)/4a)の公式により、(-1/2, -23/4)
②の頂点も同様に(-9/14, -53/28)となりますので、
((-9/14)-( -1/2), ( -53/28-(-23/4))=(-1/7, 27/7)
ということで、②は①をx軸方向に-1/7,y軸方向に27/7だけ平行移動したということになります。(位置的には若干左上に移動しています)
ところで、「二次方程式の解の公式」で思い出しました。「2a分のマイナスb プラスマイナス ルートb2乗マイナス4ac」というあれです。
私は中学3年生の頃習いましたし、今も中学校で習っているようですが、一時期、中学校では習わずに高校で学習していた時がありました。この事実、信じられますか?
このことについては、次のような有名な経緯(いきさつ)があります。
作家の曽野綾子*1さんが「私は二次方程式もろくにできなかったけど、65歳になる今日まで全く不自由しなかった。二次方程式は社会に出て何の役にも立たないので、こんなものは追放すべきだ」といった趣旨のことを公言されていました。たまたまその頃、ご主人で同じく作家の三浦朱門氏(文化庁長官等も歴任し今年2月ご逝去)が文部科学省の教育課程審議会の会長を務めておられ、奥様の発言に沿った主張をされたのか?、この発言から1年ほどたった平成10年の6月に出された審議のまとめに反映され、平成10年12月に告示され平成14年度から施行された学習指導要領から「二次方程式の解の公式」は中学数学から姿を消し、高校の数学に移行されたのです。
その学習指導要領では、小学校の算数での円周率等の小数点以下の削除も行われ(円周率を3*2で計算しても構わない)、「ゆとり教育」(文部科学省はこの言葉を正式には認めていませんが・・・)という言葉が話題になりました。
学力低下の反省にたち、平成24年度から年次進行で始まった現行の新学習指導要領で、中学校で指導するように復活したわけです。夫婦の睦言が国の教育の屋台骨である学習指導要領まで影響したとすれば驚くべきことかもしれません?会議のトップである会長に誰を据えるかという人選は難しいということをつくづく考えさせられます。
そういう昔のことを思い出しながら廊下越しに見た数学の授業でした。
【校長】
*1曽野 綾子(その あやこ:1931年(昭和6年)~)は、東京出身の作家。「曾野」と表記されることもあります。本校の図書館には、石狩峠、積木の箱、氷点(上・下)など8冊ほど揃っているようです。
*2東京大学の平成15年度の理系の入試問題の中に、「円周率が3.05より大きいことを証明せよ」という入試問題が出題され、稀代(きたい)の名問と話題になりました。これは、その前年度(平成14年度)から実施された小学校学習指導要領の中で「円周率は3で計算させてよい」ということになった「事件」に対する東大らしいアンチテーゼと言われています。
この問題は円周率とは何か、即ち「円周率とは円周と直径の長さの比」であるということを分かっていなければ解けません。証明に挑戦してみますか?
ただし、余弦定理(本校では1年生の終わりに数学Ⅰで学習します)を習っていないと難しいので、中学生には無理かもしれません?
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