校長室より

「健康で安全で何気ない日常の毎日が一日一日と続いていくことの大切さ」2024/4/24

 木々の新緑が春の光に映える季節になりました。4月9日の入学式で小学部、中学部、高等部の合わせて51名の新入生を迎え、令和6年度の大津支援学校がスタートしました。これから、本校に通うすべての子供たちが、自分の将来の夢に向かっていろいろなことにチャレンジでき、多くの経験ができるよう支援をしていきたいと思っています。

 私が以前勤めていた学校に車で通勤していたころの話なのですが、自分の仕事場に向かって歩いておられるAさんのそばを毎日通り過ぎていました。車窓からAさんをお見掛けした様子では、Aさんは知的障がいや身体的な障がいがあり、それも比較的障がいの重い方でした。しかし毎朝、自分の職場に向かって歩いて通勤されていました。毎朝一瞬だけですが、私はAさんとすれ違うのを楽しみにしていました。「毎日、寒いけど自分で歩いて通勤されている。頑張ってほしいな。」「今日はこの橋ですれ違った。少しいつもより遅いな。家を出るのに時間がかかったのかな。」「大きなリュックを背負っておられるけど、何が入っているのかな。重たそうだな。」などと、いろいろなことを想像しながらAさんを陰ながら応援していました。

 Aさんの様子を見ていると、毎日少しずつですが変化があることに気づきました。寒い日にはちゃんとダウンジャケットなどの暖かい上着を着るなど衣服の調節をされていること、暑い日には首にタオルを巻いておられること、リュックの中身も日によって入っている量が違うこと、などなどです。Aさんを大切に思っておられるご家族の方、或いはグループホームのスタッフの方々からの、Aさんへの丁寧な支援がなされていることを感じました。(後に分かったのですが、Aさんはグループホームで生活し、日常の支援を受けながら近くの作業所で働いておられました。)

 「Aさんが毎日歩いて出勤し働くこと」、それは普通のことのようですが、そうではありません。Aさん自身が病気をせず毎日健康でいること、Aさんを迎える仕事場の支援体制が継続して保たれること、Aさんを支援するご家族や福祉の関係者の絶え間ない努力や愛情があること、そしてAさん自身が人生を楽しんでいることなど、普通に見えて普通ではない一つ一つの日常の奇跡が続いているからこそ、Aさんは毎日仕事に行くことができているのです。

 「子供たちの健康で安全で何気ない日常の毎日が一日一日と続いていくこと」、それは学校にとって当たり前のことでもあり、続けていかなければならない大切な使命です。学校の職員全員が一丸となって「守っていこう」とする意識を持ちながら取り組まなければならないと思っています。同時に、学校が日常の毎日を続けていくことができるのも、保護者の皆様や関係者の皆様の絶え間ない努力と御協力があってこそであるという感謝の気持ちを忘れず、子供たちが安全に、安心して学べる環境つくりに努めていきたいと思っています。今年度も大津支援学校をどうぞよろしくお願いいたします。

                     校長  田﨑 弘明

 

「寄り添い、自信をもてる支援を大切に」2023/4/27

 春を迎え、色とりどりの花が咲く季節となりました。本校小学部、中学部、高等部のそれぞれに新入生を迎え、にぎやかな雰囲気の中、令和5年度の大津支援学校がスタートしました。

 子どもたちの中には、学校が大好きで「学校、楽しみだなあ」と思っている人もいると思います。でも中には、「初めてのことだから心配だなあ」「仲良くできるかなあ」と思っている人もいるかもしれません。本校では、職員が子どもたちのそばに寄り添い、助け導く存在として日々取り組んでいきます。子どもたちと一緒に、子どもたちのペースで、少しずつ、楽しいこと、わくわくすることをたくさん勉強していきたいと思っております。

 小学部では、子どもたちが成長していくために必要なことを一つ一つ体験しながら学んでいきます。着替えやトイレなどの身の回りのこと、ルールを守ることの大切さ、自分の気持ちを周りの人に伝える方法や自信などを少しずつ身に付けていきます。

 中学部では、体験的な活動を通して社会のルールを学んだり、友達と協力したりしながら自分の役割を果たす学習に取り組みます。「自分で頑張ってできた!」という経験を通して少しずつ自分に自信がついてくるようになります。

 高等部では、植物を育てたり、木工製品を作ったりする作業学習や、校外に出て実際に会社で働いてみる現場実習といった様々な学習に取り組んでいきます。また、卒業後の自分の将来の夢に向かっていろいろなことにチャレンジできる環境があります。ゆっくり、たっぷり、時間をかけて、心の余裕を持つことを大切にしながら、子どもたちと一緒に取り組んでいきます。

 本校は、子どもたち一人一人のかけがえのない命を大切にし、自分に自信を持てる子どもたちに育てていきたいと思っております。そのために教職員一同、子どもたちが安全に、安心して学べる環境つくりに努めていく所存です。保護者の皆様、どうぞこれから私どもと一緒に、お子様たちの夢や希望の実現に向けて、御協力いただきますようお願い申し上げます。

校長  田﨑 弘明

 

「偉大な先輩方と私たち、そして若い世代への大切なリレー」2022/9/12

 私が特別支援学校(当時は養護学校)の教師になって間もないころ、私自身は専門的な知識や経験もなく、「これから先、こんな自分で養護学校の仕事は務まるのだろうか」と不安な日々を過ごしていました。

 ミーティングでは、周りの先輩方の専門的な言葉が飛び交う会話が理解できないばかりか、質問もできずに、その場でなるべく目立たないようにふるまっていたことを覚えています。

 ただ、その時に私自分が強烈に感じたことは、先輩の先生方が「とにかく頼もしい」こと、「授業や子供たちのことをよく知っていた」こと、「早く自分もこの先輩方のようになりたいと思わせてくれた」ことです。仕事人としてキラキラと輝いて見えました。

 何もわかっていない私に先輩方は、よく考えられた授業を行うことでたくさんのことを教えてくれました。子供たちの見え方を考慮した教材の提示方法やタイミング、子供たちの動線や安全面を考えた場の設定、子供たちの人権や思いを大切にする教師としての姿勢等々たくさんあります。そして何よりも先輩方が「何故この授業をするのかという明確な目的を持って授業を行っていた」ことです。このことは、その後の私自身の教員生活に大きな影響を与えたものでした。

  月日は流れ、こういった先輩方の多くが退職を迎え、学校現場から離れていっている現実があります。障がいのある子供たちのことを一生懸命に考えながら実践してきたことや知識、細やかな配慮といった特別支援教育に関する貴重なノウハウが後輩の世代に受け継がれないまま消えていっていることも少なくありません。

 今度は、我々世代(40代~50代のベテランの域に入った職員)の番です。

 先輩方から受け継いだ特別支援教育に関するノウハウや不易の部分を、我々が若い世代の先生方へ、押し付けなく納得してもらいながら伝えていくことは大きな仕事です。

 結果的に我々世代がキラキラと輝いて見えるよう、それぞれの先生方が置かれた場所で一生懸命にもがいてみることは大切だと思っています。

 校長 田﨑 弘明

 

「幼きころのゴジラと母親にまつわる思い出」2022/6/10

 私は、幼いころ「うちの母親は、本当にゴジラに勝てるのではないか」という気持ちになったことがありました。

 それは、私が保育園に通う4~5歳の頃の話です。テレビを見ていると、怪獣ゴジラが町中を破壊している様子が流れていました。幼い私はそれを見て、「こわい、、」「こんなかいじゅうがいたら、ふみつぶされたり、たべられたり、、、」と怖がっていました。私の母親はその様子を見て、こう言いました。「なんの怖がらんでよか。(なあに怖がらないでいい)ゴジラが来たらお母さんがやっつけてやるけん!」

 それを聞いて私は「あのゴジラだよ!あんなにふとか!(あんなにでっかい!)おかあさんもかなわんよ!(かないっこないよ!)」と言い返しました。すると母親は「なーん(なあに)、お母さんは強いけん、あんたを守るためにゴジラも余裕でやっつけてやるけん」とサラッと言ったのです。

 今思えば、この会話は、日常の親子のたわいのない、冗談交じりの会話だったのですが、当時の幼い私は、「おかあさんはすごいかも。つよいんだな。」「おかあさんは、ほんとうにゴジラをやっつけるかもしれん」と信じるとともに、じわじわと母親からの深い愛情や守られているという温かな安心感を感じました。

 それから数十年たち、私も、3人の子供の親となりました。私も(頼りなく弱いですが)母親と同じように、我が子がピンチの時は命に代えてでも助けたいという気持ちを持っています。

 この親としての気持ちは本校に通う子供たちの保護者や御家族の方々もきっと同じだと思います。特別支援学校の教職員として、そういった御家族のお子様への愛情や思いを理解することは大切なことです。愛情を受けて育ってきた大切な子供たちを学校で預かり、試行錯誤しながら教育していくこの仕事に誇りを持ち、本校職員全員でしっかりと取り組んでいきたいと思っています。

 校長 田﨑 弘明 

 

「楽しく、安心な学校として」2022/4/10

 4月に本校の校長として赴任いたしました田﨑と申します。平成18年4月から平成23年3月までの6年間、本校に勤務しておりましたが、今回10年ぶりに勤務することになりました。これからどうぞよろしくお願いいたします。

 勤務していた学校とはいえ、「しっかりとやれるかどうか」不安な気持ちで赴任したのですが、始業式や入学式で子どもたちの笑顔と期待にあふれた姿をみて、私自身、元気をもらうことができました。同時に、これからこの子供たちのために頑張っていこうという気持ちを強くすることができました。

 

「楽しい場所としての学校」

 学校は、子供たちが「大好きな場所、楽しい場所」であることが大切です。学校で友達や先生たちと一緒に楽しく学習できることは、子供たちの生活をより良いものにするだけでなく、その後の充実した人生につながっていきます。我々職員も、子どもたちの人生にかかわることができるこの素晴らしい職業に誇りを持ちながら、努力していきたいと思っております。

 

「安全に、安心して通える学校」

 いくら大好きな学校でも、ケガや事故が多く起こってしまう場所であれば、子供たちは安心して学校に通うことができません。このことは、保護者の皆様にとっても、お子様を登校させることへの不安につながるかもしれません。我々は、環境を整え、ケガや事故が起こらない工夫を各所、各場面において丁寧に講じていきたいと思っております。子供たちの大切な命や健康を守るということは、当たり前のことではありますが、学校の存在意義ともいえる最も大切で、守り抜かねばならないものです。全職員で高い危機意識を持って危険防止に取り組み、常に改善していく組織でありたいと思っております。

 春になり、日差しも温かくなってきました。本校の「花いっぱい」のテーマにもあるように、学校は様々な花が咲き誇り、明るい雰囲気と気持ちの良い空気に包まれています。その中で笑顔いっぱいに遊び、希望を持って学習している子供たちの姿は、何物にも代え難い大切な存在です。我々は、この子供たちが「楽しく」「安心して」生活を送れる大津支援学校であり続けるよう努力してまいります。どうぞ保護者の皆様、子供たちを支援する関係者の皆様、これまで同様、温かい御支援、御協力を賜りますようお願い申し上げます。

校長  田﨑 弘明