星の王子の影とかたちと
いづこかにかすむ宵なりほのぼのと 星の王子の影とかたちと
初めまして。4月から校長を務めています松田です。教育行政から久しぶりに学校に戻ったこともあって、子どもたちとの出会いは特に新鮮でした。毎日、県こども総合療育センターから学校に登校する子どもたちは、笑顔をいっぱい輝かせ、希望を抱いて生き生きと教室で学んでいます。転任者9人を含め、職員一同、本校の教育目標を具現化する取組を、「チーム松東」として進めて参りますので、どうぞよろしくお願いします。
さて、6月6日現在、在籍する21人の子どもたちは全員センターに入所入院しています。私たちが学校にて、存分に子どもたちの教育指導に打ち込めますのも、ひとえにセンターの皆様の御支援のお陰様と思っています。昨年度は、熊本地震で被災した際、施設を提供いただきました。このことは、私どもにとってこの上ない喜びであり、大きなエールをおくっていただいたと感謝しております。
5月27日(土)に開催した松東レクリエーションにおきましても、スタッフの皆様に御協力いただき、子どもたちを中心として、保護者の皆様方、地域の方々、センターと学校が一体となった楽しく素敵な催しにすることができました。重ねてお礼申し上げます。
本校は、今年度から2年間、防災型コミュニティ・スクールの指定を受けました。これを機に、災害時の防災体制の構築と子どもたちの防災意識の高揚に取り組んで参ります。計画では、松橋高校、松橋西支援学校と合同の協議会を通した広域での防災体制の構築と、本校単独の協議会による「希望の里」における防災体制の構築を進めることとしています。一層、センターをはじめ、地域の皆様との絆を強めて参りたいと思います。
ところで、冒頭の歌は、郷土のフランス文学者、翻訳家で、熊本県近代文化功労者である内藤濯(ないとうあろう)氏の歌です。サン=テグジュペリ著「星の王子さま」については、皆さんも一度は読まれたことがあるのではないでしょうか。主人公のパイロットが飛行機の故障でサハラ砂漠に不時着し、そこで不思議な少年に出会います。家ほどの大きさしかない小さな星からやってきた少年(王子)は、自分が世話をしているバラの花と心を通わせることができず、傷ついた心で星巡りの旅に出ていたのです。物語は、王子の傷心とその後の心の成長、パイロットの孤独と王子との交流による救済が軸となっています。濯の名訳は、原文のリズムを日本語に移すことを大切にされた、とても美しい文章です。本書との出会いは中学生の頃でした。しかし当時は、主人公が描いた一見帽子に見える絵が、実は象を飲み込んだウワバミの絵だったなど、単にユニークな発想の童話であるという理解にとどまっていたようです。時を経て、再び丁寧に読み返しますと、その内容はすごく深く、まるで哲学書。「心の手入れ」「絆のつくり方」「大事なことは目には見えない」「関係性から生まれる価値」など、随所に物事の本質を示唆する深遠なメッセージが綴られています。
機会があれば、子どもたちにも是非、読んでもらいたいと思います。まずは、「かつて子どもだった」おとなの我々が、とらわれのない心を持って物事を見、自らの感性が萎びないよう努力していかねばと思います。そのような願いを込めて今回のタイトルとしました。
平成29年6月19日 熊本県立松橋東支援学校長 松田 満