職員ブログ

梅花(ばいか)寒苦(かんく)を経(へ)て清香(せいこう)を放(はな)つ

 

本校の東側に天神門があります。その脇にある梅の花が咲き始めました。紅白が一本ずつありまして、白梅の方がちょっと花が多い様子です。紅白1対の梅の木は平成15年に植えられたと石碑にあり、タイトルの句はこの石碑に刻まれていました。

 

さて、季節を感じたときには短歌をおすすめします!日本に文字ができる前から存在していた短歌。そのDNAは皆さんの中にもあるはずです!

ここでは梅を読んだ短歌をご紹介。

 

『古今和歌集』より 

(きみ)ならで 誰にか見せん 梅の花 色をも香(か)をも 知る人ぞ知る(紀友則)

   現代語訳 (梅の花を折って、あの人に贈ったときの歌)この梅の花はあなたでなければ誰に見せましょうか、いえ、誰にも見せる気はございません。この色の美しさも、この香りのすばらしさも、あなたにしかわからないのですから。

 作者の紀友則(きのとものり)は今から1,100年ほど昔の人です。当時は旬の植物を添えて和歌を送っていました。送られた側は花がついた梅の枝と和歌が送られてきたのですから、何なのかしらとドキドキしたでしょうね。今回のは梅の花ですが、「すばらしさはあなたしかわかないのですから」というところは、ロマンチックなセリフです。

 

『万葉集』より

(はる)されば まづ咲く やどの梅の花 ひとり見つつや 春日(はるひ)暮らさむ(山上憶良)

   現代語訳 春になると最初に咲く庭の梅の花を、1人で眺めながら春の1日を過ごすのだろうか、いやそのようなことはできない。

 

 作者の山上憶良(やまのうえのおくら)は奈良時代初期の人です。この和歌は現在の太宰府で大伴旅人( おおとものたびと)が主催する梅花の宴にて詠まれたものであることがわかっています。現代語訳で「1人で眺めながら春の1日を過ごすのだろうか、いやそのようなことはできない」とあるのは、梅の花は1人で楽しむのではなく、みんなで楽しみたいものですという解釈となるそうです。

 

 2月4日は立春、2月19日は雨水でした。まだまだ寒い日が続きますが、日中は穏やかな陽光と暖かい風を感じるときがあるでしょう。ふとしたときに五音七音の調子で言葉を紡いでみてはいかがでしょうか。