校長室からの風(メッセージ)

高校野球監督35年

高校野球監督35年

 校長室で執務中の私は、歴代の校長先生方の肖像写真に見守られています。26人の先輩校長先生のまなざしを感じることで、襟を正し、緊張感を持って業務に取り組むことができます。その歴代校長先生の中の第25代校長である齋藤健二郎先生は、校長退職後に再び多良木高校野球部監督となられ、今年で6年目です。ほぼ毎日、野球場にお姿を見せられ、孫の世代の高校生の指導に当たられています。

 齋藤健二郎先生の高校野球監督通算35年を祝う会(「熊本県高野連35年永年表彰受賞記念祝賀会」)が11月29日(日)、人吉市で開催されました。出席者はおよそ270人という盛大なもので、齋藤監督の指導を受けてきた多くの元高校球児の方をはじめ多良木町関係者、親交のある方等が詰めかけ、会場は熱気あふれる雰囲気となりました。

 齋藤監督は、昭和49年に河浦高校に初任で赴かれ、軟式野球部監督を務め、翌年には県大会優勝に導かれました。そして多良木高校に転任されたのです。球磨郡上村(現あさぎり町)の御出身でもあり、郷土の学校の野球部監督として心血を注がれました。昭和60年の夏の大会では、後にプロ野球で活躍された野田浩司投手を擁しベスト4に進出し、大いに注目されました。多良木高校で10年指揮を執られた後、惜しまれながら新設の東稜高校に転勤され、早速野球部を創り、チームを土台から築いていかれました。そうして、平成2年から平成5年まで名門熊本工業高校野球部監督を務められ、3度の甲子園出場を果たされました。その後、もう一度東稜高校の監督を務められた後、管理職に専念され野球から離れておられたのですが、地域の熱い期待に応え、定年退職を機に多良木高校野球部監督を再度引き受けられたのです。

 齋藤監督の指導方針は「日常生活の中に高校野球の勝利はある」というものです。このことを若い頃から一貫して追求してこられました。その教育理念が素晴らしいチームをつくり、多くの選手を育て、今日に至るまで先生を熱烈に慕う元高校球児、元保護者の方々の存在につながっていると言えます。

 御年66歳、県内の高校野球監督では最年長ですが、「闘将」と呼ばれた若い頃の情熱はいささかも衰えはなく、時に自らノックバットをふるい、叱咤激励される姿はまさに百戦錬磨の将帥の姿です。「グラウンドから教室へ 教室から社会へ」と野球部のベンチには大きく記されています。齋藤監督の御指導のもと、野球をとおして生徒たちは大きく成長しています。学校にとってかけがえのない監督、教育者であり、畏敬の念を禁じ得ません。