校長室からの風(メッセージ)

黄金の時 ~ 正門前の銀杏並木

黄金の時 ~ 正門前の銀杏並木

 「正門前の銀杏並木がきれいですね。」と先日、年配の同窓生の方から言われました。多良木高校の正門前には銀杏の並木があります。町道から分かれて百メートルほどの奥行の道に片側十本の銀杏樹が立ち並んでおり、今、鮮やかな黄金色に染まっています。先週から落葉をはじめていますが、毎朝、有志の生徒と職員で掃き掃除に努めているところです。晩秋の今、明るく装った銀杏並木を歩くと、豊かな実りに包まれたような気分になります。

 本校の養護教諭の毎床教諭が、熊本県教育委員会の永年勤続30年の表彰を今月受けられました。永年勤続賞は10年、20年、30年とあり、30年が最長のもので、これ以上はありません。毎床教諭は昭和62年4月に県教育委員会に養護教諭として採用されて以来、県内の7校で勤務してこられました。その内、多良木高校は二回目の勤務となり、今年で通算11年目を数えられ、教員人生の三分の一に当たります。

 養護教諭は、保健室に在って、全校生徒の健康管理を一手に担う責任の重い仕事です。受賞を全職員でお祝いするため、先日の職員会議において、三十年の教職人生を振り返ってお話をしていただきました。生徒の健康状態もこの三十年で変化してきたそうです。二十代、三十代の頃は、生徒のことで感情的になり、大変なこともあったと笑ってお話になりました。しかし、「養護教諭という仕事をやめようと思ったことは一度もありません。」ときっぱり締めくくられました。この言葉は私たち職員一同の心に響きました。

 私たち教職員の仕事には定年というゴールがあります。それを考えると寂しいような、限界を感じるような切ない気持ちになります。しかし、ゴール目指して日々全力で仕事をされる毎床教諭の姿は、十代の高校生にもきっと大きな影響を与えていると思います。

 熟成の黄金色を輝かせ、登下校の生徒を見守る正門前の銀杏並木は、経験豊かな教師像にも見えなくはありません。