平成29年度 学校長より

2017年4月の記事一覧

平成29年度 熊本県立高森高等学校 入学式校長式辞

    平成29年度 熊本県立高森高等学校 入学式校長式辞

 満開の桜がうららかな春の日差しに映え、時折り吹きゆく風の勢いが、ここ南郷谷への春の訪れを感じさせます。この佳き日に、熊本県議会議員 河津修司様、高森町長 草村大成様、南阿蘇村村長 吉良清一様をはじめ、多くの御来賓並びに保護者の皆様の御臨席のもと、平成29年度熊本県立高森高等学校入学式を挙行できますことは、このうえない喜びであり、光栄の至りであります。

 本日、本校に入学された45名の新入生の皆さん、本当におめでとうございます。また、これまで皆さんのことを一番気にかけ、すこやかな成長を楽しみにしてこられた保護者の皆様のお喜びも一入と存じます。

 さて本校は、昭和23年の学制改革に伴う阿蘇高等学校開校と同時に開設された白水分校と高森分校に始まります。翌24年高森分校に統合され、昭和28年高森高等学校として独立昇格し、今年度創立70年目を迎えます。この間、阿蘇南部地域の教育及び文化の中心的な役割を担って発展を遂げてきました。学舎を巣立った卒業生は7000有余名に上り、県内はもとより全国各地で広く活躍されておられます。

 本校の三つの校訓は、昭和30年9月に制定され、その内容は中国の古典である「中庸」に由来します。

  一番目は「叡智を磨いて真理を探究する」、これは単なる知識だけでなく道徳上の真理、つまり善悪を深く考えて何が正しいかを知り、それを実践していれば心安らかに生きることができるということです。

 二番目は「友愛の心を養い社会の福祉に貢献する」、これは進んで人の役に立ち、社会に奉仕することで自分の価値に気づかされ、生きる喜びを感じることができるということです。

 三番目は「心身を鍛えて困難を克服する」、これは平坦な道ではなく険しい道、高い山を選び、苦しい時に我慢して困難に耐えた後にこそ、人間の生命が輝くということです。

 これらは才能や環境に関係なく、やる気さえあれば実現可能なものばかりです。本校では、その校訓実現の基礎となる実践力育成を目指し、様々な教育活動に取り組んでいます。

  ところで、昨年は熊本地震により多くの方々が大きな被害に遭われました。ここに改めて皆様にはお見舞いを申し上げますとともに、当時迅速な復旧に力を注ぎ、現在も復興に向けて努力をされ続けている関係者の皆様に敬意を表します。現在、Build Back Betterの合い言葉の基、関係諸機関や本日お出での自治体関係者の皆様も全力で復興に向け力を注がれていることと存じます。

高森高校も地域の皆様に教育という分野でどう貢献することができるかと考え、学力保証、進路保証の観点から、普通科高校の存在意義に鑑み、特に高等教育、即ち大学等への進学に向けての、学習のあり方、部活動のあり方、学校行事のあり方等を検討して参りました。そういう意味では今回の入学生は、新しい高森高校の教育システムで、大いに勉強に部活動等に励んでくれるものと期待するところです。

  さて、皆さんはロシアの作曲家ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」を知っているでしょうか。約百年前、パリのシャンゼリゼ劇場でその初演が行われました。当時としては複雑なリズムと聴いたこともないような不協和音に満ちた音楽で、それを不満に感じた観衆の野次や罵倒、更には客席で激しいもみ合いまで起こり、大きなスキャンダルとなりました。しかし、後にこの「春の祭典」は、その芸術的価値が認められていき、現在では20世紀最高の音楽として演奏され続けられています。ものごとの本質を理解することの難しさを物語る一つの例でしょう。

あらゆる学問やものごとの本質には必ず美しさが存在します。それらは生活を豊かにする力を持っています。ところがそれを実践、表現するどころか、理解すること自体が難解なものも数多く存在します。しかし要、不要に関わらず、その壁に立ち向かうことが豊かな「学び」につながると思います。

 学校の授業時間だけが「学び」の時間というわけではありません。「学び」とは生き方を学ぶことです。そのことが本校の校訓にも謳われています。

昨年の本校の体育祭のテーマは「革命~新たな時代の幕明け~」でした。高森高校は変化の時代に入りました。丁度そのときに皆さんはこの高森高校に足を踏み入れたわけです。難解なものであろうと、学び続けることで、一人一人がそれぞれの夢に出会い、それに向かって努力をし、輝く人生のきっかけをこの高森高校で見つけ、実り多き充実した時間を過ごして欲しいと願っています。

新入生の保護者の皆様におかれましては、改めてお子様の御入学、誠におめでとうございます。本校職員も在校生も新入生の入学を心待ちにしておりました。高校生の成長には家庭と学校の連携はなくてはならないものであります。本校職員もお子様の教育に心血を注ぎ、指導、支援をして参ることをお誓い申し上げます。これからの高校生活において、本校の教育方針や指導に御理解いただきますとともに、御支援、御協力の程お願い申し上げます。

 また、本校は来年の平成30年10月26日に創立70周年式典を行う予定です。今日この席にお越しの同窓生の皆様には、この伝統ある高森高校の更なる発展に努めることをお誓い致しますとともに、新入生、在校生への応援をお願いする次第です。

 最後になりましたが、御来賓の皆様には御多用な中に御臨席賜り誠にありがとうございました。本校の存在意義は地域に根ざした学校、地域とともに歩む学校であると考えております。これまでも物心両面にわたる御支援をいただいておりますことに大変感謝しております。これからも阿蘇南郷谷の拠点校として、高森町、南阿蘇村、山都町蘇陽地区を中心に、更に連携を強め、地域教育の発展に力を注ぐ所存でございますので、どうか本校の更なる充実と振興のため、一層の御厚情を賜りますようお願い申し上げ、式辞といたします。

 

 平成29年4月10日

                  熊本県立高森高等学校長  光 永 幸 生

 

 

 

                

 

 

 

 

 

1学期始業式 校長式辞

4月10日1学期始業式式辞

                                                    H29.4.10 光 永 幸 生

今年度のはじまりの始業式にあたり、話をさせていただきます。

今年の春は例年より寒く、高森でも、まだ桜の開花が遅れたようです。4月2日に、私の高校の同窓会の南阿蘇地区の花見の宴があったのですが、小雨、また雹も降ってきたので、急遽屋内で行うことになりました。そのときも、高森高校のことが話題となり、母校でなくても、地域の方々の本校への期待の大きさを強く感じた次第でした。

さて、本校のスローガン

 「一人一人が輝く学校」

   ~響き渡る学び、優しさ、強さの個性あるハーモニー

は、今年も継続します。

高森高校の良さの第一は、先生方と生徒の皆さんが近い関係にあることだと思います。皆さんの強みを見つけ、そこを伸ばすことができる学校です。つまり一人一人が輝く学校であり、高森高校はそうあることを目指さなければなりません。

しかし、「輝かせてくれる」と思ってはいけません。自分で「輝こう」という意志をも

たなければいけません。それを謳っているのが本校の校訓です。本校の校訓は中国の古典である「中庸」に記された三徳「知」「仁」「勇」から考えて制定されたものです。そして、この「知」「仁」「勇」を優しく言い換えたのが、サブタイトルにある「学び」「優しさ」「強さ」です。これらはどれも大事な道徳的内容を含んでいますし、人として大事なことであると思います。

本来の意味、当時の先生方の先輩のみなさんの思いは、入学式の式辞の中で触れたいと思いますが、現在の皆さんへのメッセージを具体的にいうと

「知:学び」とは、「広い教養と深い論理的思考力を身につける」こと

「仁:優しさ」とは、「コミュニケーション能力を高め、社会性を育む」こと、

「勇:強さ」とは「強い忍耐力と自己解決能力の養成」を目標として、日々精進して欲しいと思っています。

さて、「中庸」とはどんな意味があるのでしょうか。「真ん中」とか「平均」という意味ではありません。どちらにも偏らない、いわゆる「丁度良いところ」という意味があります。「知」「仁」「勇」と言っても、一人一人に合ったバランスがあり、それが個性だと考えます。そしてこれらは「個性に合ったバランスよい人」になって美しいハーモニーを響かせて欲しいという願いになっています。

 改めて、本校の校訓とスローガンをよく理解し、今年度も何事にも大いに挑戦し、失敗してもくじけずに、いろいろな壁に立ち向かっていって欲しいと思います。

 さて、午後からは45名の新入生が入学してきます。多くの新入生を迎えることができ、とても嬉しい限りです。先生方の人数も増えました。高森高校はいろいろな意味で新しい時代の幕明けの時期に来ました。教育課程の変更、県立学校では先駆けて行うことになるICTを利用した教育の推進、総学の時間の新プラン等、教育環境は整いつつあります。しかし、これこそみなさんがあらゆることに対して「自分で考えよう!」「いろいろなものに興味を持ってアクティブに取り組もう!」そして「自ら輝こう!」という気持ちで取り組まないと無駄なものになっていきます。

 皆さんには、この高森高校の生徒であることにプライドを持ち、将来、グローバル的にもローカル的にも有為な人材として社会で活躍できることを望んで、今年度、最初の話とさせていただきます。