平成29年度 学校長より

平成29年度 熊本県立高森高等学校 入学式校長式辞

    平成29年度 熊本県立高森高等学校 入学式校長式辞

 満開の桜がうららかな春の日差しに映え、時折り吹きゆく風の勢いが、ここ南郷谷への春の訪れを感じさせます。この佳き日に、熊本県議会議員 河津修司様、高森町長 草村大成様、南阿蘇村村長 吉良清一様をはじめ、多くの御来賓並びに保護者の皆様の御臨席のもと、平成29年度熊本県立高森高等学校入学式を挙行できますことは、このうえない喜びであり、光栄の至りであります。

 本日、本校に入学された45名の新入生の皆さん、本当におめでとうございます。また、これまで皆さんのことを一番気にかけ、すこやかな成長を楽しみにしてこられた保護者の皆様のお喜びも一入と存じます。

 さて本校は、昭和23年の学制改革に伴う阿蘇高等学校開校と同時に開設された白水分校と高森分校に始まります。翌24年高森分校に統合され、昭和28年高森高等学校として独立昇格し、今年度創立70年目を迎えます。この間、阿蘇南部地域の教育及び文化の中心的な役割を担って発展を遂げてきました。学舎を巣立った卒業生は7000有余名に上り、県内はもとより全国各地で広く活躍されておられます。

 本校の三つの校訓は、昭和30年9月に制定され、その内容は中国の古典である「中庸」に由来します。

  一番目は「叡智を磨いて真理を探究する」、これは単なる知識だけでなく道徳上の真理、つまり善悪を深く考えて何が正しいかを知り、それを実践していれば心安らかに生きることができるということです。

 二番目は「友愛の心を養い社会の福祉に貢献する」、これは進んで人の役に立ち、社会に奉仕することで自分の価値に気づかされ、生きる喜びを感じることができるということです。

 三番目は「心身を鍛えて困難を克服する」、これは平坦な道ではなく険しい道、高い山を選び、苦しい時に我慢して困難に耐えた後にこそ、人間の生命が輝くということです。

 これらは才能や環境に関係なく、やる気さえあれば実現可能なものばかりです。本校では、その校訓実現の基礎となる実践力育成を目指し、様々な教育活動に取り組んでいます。

  ところで、昨年は熊本地震により多くの方々が大きな被害に遭われました。ここに改めて皆様にはお見舞いを申し上げますとともに、当時迅速な復旧に力を注ぎ、現在も復興に向けて努力をされ続けている関係者の皆様に敬意を表します。現在、Build Back Betterの合い言葉の基、関係諸機関や本日お出での自治体関係者の皆様も全力で復興に向け力を注がれていることと存じます。

高森高校も地域の皆様に教育という分野でどう貢献することができるかと考え、学力保証、進路保証の観点から、普通科高校の存在意義に鑑み、特に高等教育、即ち大学等への進学に向けての、学習のあり方、部活動のあり方、学校行事のあり方等を検討して参りました。そういう意味では今回の入学生は、新しい高森高校の教育システムで、大いに勉強に部活動等に励んでくれるものと期待するところです。

  さて、皆さんはロシアの作曲家ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」を知っているでしょうか。約百年前、パリのシャンゼリゼ劇場でその初演が行われました。当時としては複雑なリズムと聴いたこともないような不協和音に満ちた音楽で、それを不満に感じた観衆の野次や罵倒、更には客席で激しいもみ合いまで起こり、大きなスキャンダルとなりました。しかし、後にこの「春の祭典」は、その芸術的価値が認められていき、現在では20世紀最高の音楽として演奏され続けられています。ものごとの本質を理解することの難しさを物語る一つの例でしょう。

あらゆる学問やものごとの本質には必ず美しさが存在します。それらは生活を豊かにする力を持っています。ところがそれを実践、表現するどころか、理解すること自体が難解なものも数多く存在します。しかし要、不要に関わらず、その壁に立ち向かうことが豊かな「学び」につながると思います。

 学校の授業時間だけが「学び」の時間というわけではありません。「学び」とは生き方を学ぶことです。そのことが本校の校訓にも謳われています。

昨年の本校の体育祭のテーマは「革命~新たな時代の幕明け~」でした。高森高校は変化の時代に入りました。丁度そのときに皆さんはこの高森高校に足を踏み入れたわけです。難解なものであろうと、学び続けることで、一人一人がそれぞれの夢に出会い、それに向かって努力をし、輝く人生のきっかけをこの高森高校で見つけ、実り多き充実した時間を過ごして欲しいと願っています。

新入生の保護者の皆様におかれましては、改めてお子様の御入学、誠におめでとうございます。本校職員も在校生も新入生の入学を心待ちにしておりました。高校生の成長には家庭と学校の連携はなくてはならないものであります。本校職員もお子様の教育に心血を注ぎ、指導、支援をして参ることをお誓い申し上げます。これからの高校生活において、本校の教育方針や指導に御理解いただきますとともに、御支援、御協力の程お願い申し上げます。

 また、本校は来年の平成30年10月26日に創立70周年式典を行う予定です。今日この席にお越しの同窓生の皆様には、この伝統ある高森高校の更なる発展に努めることをお誓い致しますとともに、新入生、在校生への応援をお願いする次第です。

 最後になりましたが、御来賓の皆様には御多用な中に御臨席賜り誠にありがとうございました。本校の存在意義は地域に根ざした学校、地域とともに歩む学校であると考えております。これまでも物心両面にわたる御支援をいただいておりますことに大変感謝しております。これからも阿蘇南郷谷の拠点校として、高森町、南阿蘇村、山都町蘇陽地区を中心に、更に連携を強め、地域教育の発展に力を注ぐ所存でございますので、どうか本校の更なる充実と振興のため、一層の御厚情を賜りますようお願い申し上げ、式辞といたします。

 

 平成29年4月10日

                  熊本県立高森高等学校長  光 永 幸 生