平成29年度 学校長より

第65回卒業証書授与式校長式辞

       平成29年度 第65回熊本県立高森高等学校卒業式校長式辞

 厳しい冬の寒さも過ぎ、ここ南郷谷にも、柔らかな日差しとともに、春の訪れを感じる季節となりました。この佳き日に、熊本県議会議員 河津修司 様、高森町長 草村大成 様をはじめ、多くの御来賓並びに保護者の皆様の御臨席のもと、第65回熊本県立高森高等学校卒業証書授与式を挙行できますことは、このうえない喜びであり、光栄の至りであります。

 ただ今、卒業証書を授与した21名の皆さん、卒業おめでとうございます。保護者の皆様におかれましては、これまで励ましながら支えてこられ、本日の凛々しい我が子を前にして、お喜びも一入かと存じます。

 私たち教職員も、この三年間、卒業生の皆さんと共に多くの時間を過ごしてきました。授業や掃除時間、部活動の大会、体育祭、文化祭、チャレンジ大会での生き生きとした姿が、笑顔が、そして涙が、走馬燈のように思い出され、感慨深いものがあります。

 一昨年4月の熊本地震では、多くの方々が被害に見舞われました。改めて哀悼の意を表したいと思います。しかし、皆さんはここでいろいろなことを学びました。普通のことが如何に尊いものであるのか、人と人との絆の重要性等。またそのことを理解するだけではなく、行動で表すことの大変さも身にしみて感じたと思います。そのような中においても、皆さんには周囲を労る姿やボランティアに励む姿、復興への魁となる姿がありました。これらはとても頼もしく、また本校生のあるべき姿を示してくれました。皆さんには、それと同時に、周囲への感謝の気持ちと、このことを風化させない気持ちとを持ち続けて欲しいと切に望むところです。


 さて私は、皆さんに、常に思考をする機会を求め、学び続けることを求めてきました。これからの進路先では、社会に貢献するために、新たに学び、それらを継続し、追求していくことが今まで以上に要求されます。その学びには楽しさを感じると同時に、他者と共感し合う優しさと、貫き通す強さを備えるべきであろうと考えます。また、学べば、学ぶほど、次に目指す内容は高度で難解なものとなっていくことでしょう。

 17世紀から18世紀に掛けて活躍した大科学者、アイザック・ニュートンの墓碑には次のようなことが刻まれています。「自然界と自然を司る法則は、夜の闇に包まれていた。神は言った『Let Newton be! ニュートンいでよ!』そして世界は明るくなった。」これは古代ギリシアから続いてきた科学の間違いを正し、近代物理学の基礎を築いたニュートンの功績を讃えた文章で、詩人アレクサンダー・ポープのものです。彼が打ち立てたニュートン力学は、物理学の大きな柱となりました。

 しかし、時代は流れ、このニュートン力学に矛盾が生じ、欠陥が見つけられていきます。そして登場したのが20世紀最大の物理学者であるアルベルト・アインシュタインです。彼は量子力学とともに「20世紀における物理学史上の二大革命」といわれる、特殊相対性理論、一般相対性理論を発表しました。その内容は「ものが縮む」「空間が曲がる」など、一般には非常に難解なものでありました。

 イギリスの批評家ジョン・コーリング・スクワイヤーは、先程のニュートンの墓碑銘に続けて次のように表現しています。「しかしニュートンの業績は長くは続かなかった。『Let Einstein be! アインシュタインいでよ!』すると全ては再び闇に包まれた。」

 皆さんが、学べば学ぶほど、目的達成の前に立ちはだかる壁はどんどん高くなっていくことでしょう。それを乗り越えるには、得た知識を駆使し、如何にそれらを活用するかを考え、どんな複雑なことでも諦めずに解明し、追求し続ける努力必要です。皆さんにはそれができる人物になって欲しいと強く希望し、期待をします。そして、「一人一人が輝く学校」を巣立ち、「一人一人が輝く人生」を歩み続けることを切に望む次第です。

 

 本校は、今年10月に創立70周年の記念式典を挙行します。脈々と続く本校の歴史に、皆さんは個性ある一ページを鮮やかに書き残しました。後輩の1・2年生は、卒業する皆さんの気持ちを引き継ぎ、次の80周年へのスタートを成し遂げてくれるものと信じます。そして高森高校は90年、100年と進化をし続けることでしょう。

 さて、本日御出席の御来賓並びに保護者の皆様方には、御多用の中に、未来ある卒業生に心温まる祝福と激励を頂き、誠にありがとうございます。また、高森町、南阿蘇村からは、物心両面でのご支援を頂きました。彼等はそれらを励みに学習に、部活動に、学校行事にと、精一杯の努力をして参りました。そして本日、この日を迎えることができました。彼等と共に、心から厚く御礼申し上げます。

 なごりは尽きませんが、卒業生の皆さんの前途に幸多からんことを祈念して、式辞といたします。

   平成30年3月1日         

                                                          熊本県立高森高等学校長  光 永 幸 生