平成28年度 学校長より

第64回卒業証書授与式 学校長式辞

                                   学 校 長 式 辞

 早春の柔らかな日射しを浴びて、ここ南郷谷の桜のつぼみも色づき始めた今日の佳き日に、高森町長 草村大成 様をはじめ、多くの御来賓並びに保護者の皆様の御臨席のもと、第64回熊本県立高森高等学校卒業証書授与式を挙行できますことは、このうえない喜びであり、光栄の至りであります。

 ただ今、卒業証書を授与した22名の皆さん、卒業おめでとうございます。これまで、励ましながら支えてこられた、保護者の皆様には、本日の凛々しい我が子を前にして、お喜びも一入かと存じます。

  私たち教職員も、この三年間、卒業生の皆さんと共に多くの時間を過ごしてきました。授業や掃除時間で見せた笑顔や、体育祭、文化祭、チャレンジ大会での生き生きとした姿が思い出されて、感慨深いものがあります。

  また、昨年4月の熊本地震は皆さんの生活にも大きな影を落としました。普通のことが如何に大切であるのかを教えられた出来事でもありました。しかし、そこにも皆さんの家族を労る姿やボランティアに励む姿、復興への魁となる姿がありました。これらはとても頼もしく、また本校生のあるべき姿を示してくれたものでありました。

 もちろん、皆さんだけではできなかったことも多々あったと思います。皆さんがいろいろな方々に元気と勇気を与えたことと同じように、本校に来校された多くの方々からたくさんの励ましを頂きました。このことを決して忘れてはなりません。

 さて、このようにいろいろなことを体験し、学舎を旅立つ皆さんを待っている社会は、人工知能の開発が大きく進み、生活の至る所で様々なことに変化が起こり、利便性の高度化が期待される社会です。その代わり、2030年頃には国内労働人口の49パーセントの職業について、人工知能やロボットで代替される可能性が高いといわれている社会でもあります。ではそのような社会で我々はどのように生きていくべきでしょうか。

  求められる理想像について、いろいろと論じられていますが、そのうちの一つに「人間性を磨く」ということがあげらています。他者との学びの共感や、コミュニケーション能力の育成、文化に接し、芸術性を磨くことで、人工知能にはどうしても再現が難しい人間らしさを高めることを心掛けるべきであるといわれているわけです。そのためには我々の周囲のあらゆるものが学びの対象となることを知っておかねばなりません。

 明治の教育者として有名な福沢諭吉は、その著書「学問のすゝめ」の中で「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と述べています。これは「万人は生まれながらに平等で、身分上下の差別などない」ことを意味しています。またこうも著しています。「人、学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」。これは賢人と愚人の違いは学ぶか学ばないかによって決まる、ということです。

  もちろん、明治初期という時代背景もあり、福沢は実生活に役立つ学問を優先しろ、ということも述べていますが、ここは現在の状況とは多少違うと私は考えています。しかし、学びの大事さについては、いつの時代も同様ではないかと感じています。
 

   皆さんは、進学であろうと就職であろうと、学び続けることが今まで以上に大事である社会を生きていかなければなりません。その学びには楽しさを感じると同時に、他者と共感し合う優しさと、貫き通す強さを備えるべきであろうと考えます。「一人一人が輝く学校」を巣立ち、「一人一人が輝く人生」を歩み続けることを切に望む次第です。

 

 本校は、まもなく創立70年目を迎えます。脈々続く本校の歴史に、皆さんは個性ある一ページを鮮やかなに書き残しました。後輩の1、2年生は、卒業する先輩たちを引き継ぎ、発展させてくれた良き伝統の上に、更に新たな伝統を築き上げてくれるものと信じています。

前後しましたが、御来賓並びに保護者の皆様方には、ご多用の中に、巣立ちゆく卒業生に心温まる祝福と激励を頂き、誠にありがとうございました。また、高森町からは物心両面でのご支援を頂き、卒業生もこの日を迎えることができました。卒業生と共に、心から厚くお礼申し上げます。

 なごりは尽きませんが、卒業生の皆さんの前途に幸多からんことを祈念して、式辞といたします。

 

 平成29年3月1日

                       熊本県立高森高等学校長  光 永 幸 生