校長室からの風

先進校を訪ねて ~ 育友会の視察研修

 御船高校では、毎年育友会の視察研修を実施しており、県外の高校や企業を訪問しています。保護者会と教職員にとって貴重な研修の機会です。今年度は、福岡県の二つの高校を1月24日(金)に訪ねました。参加者は保護者役員さんが9人、学校の教職員が私を含め4人の計13人で、育友会所有のマイクロバスを活用しました。

 今回訪問先として選んだ学校は、福岡県立八女工業高校(筑後市羽犬塚)と同県立八幡中央高校(北九州市八幡西区)です。御船高校が2年後に創立百周年を迎えることから、創立百周年事業の準備やその成果を知りたいということと、本校がより魅力ある学び舎に発展するために同じ工業系、そして芸術コースの先進校から学びたいという大きく二つの理由から選びました。

 福岡県立八女工業高校は、電子機械科・自動車科・電気科・情報技術科・土木科・工業化学科の6学科を有し、各種の資格取得も良好で就職状況も好調、同県で最も勢いのある工業高校と聞いています。そして、何といっても、今年度、全国高等学校ロボット競技大会で優勝を飾っている学校なのです。決勝トーナメント1回戦で敗退した本校にとっては仰ぎ見る存在です。2020年度に創立100周年を迎える同校は、同窓会と学校が連帯し正門の改築、教育機器の充実等に取り組まれており、本校の計画、準備が遅れていることを痛感しました。工業高校ですが女子生徒が増加傾向にあり、在籍数が百人を超え、女子支援課という部門を設け組織的に女子生徒をサポートされています。また、今年度から女子生徒は制服のスラックス着用が可能になり、防寒性と活動性に優れたスラックスを選ぶ女子が増えているとのことでした。

 福岡県立八幡中央高校は、普通科4クラスに芸術コース1クラスを有し、今年度で創立103年を数える伝統があります。遠く洞海湾を眺望できる高台に建つ学校です。平成28年に創立百周年を迎えられ、その時の数多くの資料(計画書、要項等)や「記念誌」、記念品等を今回頂くことができました。玄関を入ると2階吹き抜けのギャラリースペースがあり、同校が誇る芸術コースの美術・書道の作品群が出迎えてくれました。同校の書道部はこれまで全国高校書道パフォーマンス大会で2度の優勝を飾っており、御船高校書道部にとって目標の学校です。芸術コースが牽引役となり文化的な行事が盛んで、学校の活性化につながっているようです。また、同校でも女子生徒の制服はスラックス着用が可能でした。

 両校とも生徒たちが生き生きと学校生活を送っており、活気が校内に満ちていました。丁寧にご対応頂いた両校の先生方に深く感謝申し上げます。

 本校より一歩先を進んでいる学校でした。両校を目標に、御船高校の一層の魅力化に努めます。

 

  

  八女工業高校           八幡中央高校

 

初任者研修

 県立学校「初任者研修」(第11回)の教科指導等研修が、1月14日(火)に御船高校で開催されました。参加したのは、本校の二人の初任教諭(美術の本田崇教諭、生物の橋本雄司教諭)ほか、各学校から数学2人、理科2人の計6人です。他の教科・科目は他校で行われ、本校には数学・理科・芸術(美術)の初任教諭と指導に当たる県立教育センターの指導主事の先生方(3人)が集まられたことになります。

 会場校校長として最初に挨拶を行ったのですが、初任者の皆さんの積極的に吸収しようという意欲的な姿勢が伝わってきました。初任者を代表し、本校の橋本教諭が生物の研究授業(2年1組)を2時間目に行いました。自律神経系と内分泌系の共同作業によって体温が調節されることを理解する授業でした。橋本教諭は情報機器を活用して説明のわかりやすさを心がけ、生徒たちに話し合わせたり、協働でワークシート作成に取り組ませたりと生徒の主体的な学習活動を意識した授業となっていました。

 授業参観していて、「授業はコミュニケーションの場」であることを改めて実感しました。教師からの一方通行ではだめで、教師と生徒、そして生徒同士の「対話」があってこそ発展するものなのです。この「校長室からの風」で以前にも触れましたが、今、高等学校の普通教科の授業は大きく変わりつつあります。社会の急速な変化に伴い、生徒が必要とする学力の質も変わってきているのです。従って、「教える」という教師側の視点だけでなく、「わかるようになる」、「できるようになる」という生徒を主体とした視点からの授業改革が求められています。

 授業者の橋本教諭以外の初任者五人は、「良かった点」、「改善が必要だった点」、「自分の授業で活用したい点」等をメモし、その後の授業研究会で活発な意見交換を行いました。そして、午後は各学校における自分の業務上の課題についての「課題研究報告会」が行われ、県立教育センターの指導主事からの助言、指導を受けました。

 初任者研修は1年間を通し体系的、計画的に進められます。保護者の皆さん、生徒の皆さん、初任の先生たちは一人前の教師になろうと懸命に努力していることを知ってください。経験は足りません。しかし、初任者は学校に新風を吹き込み、学校を変える可能性を持ち、これからの令和の時代を担う存在なのです。

 初任者をはじめ若手の教師を支援して、バトンを渡していくことが私の最後の務めだと思っています。熊本県の教育の未来は明るいと信じています。

御船高校への期待を感じて ~ 令和2年の始動

 1月8日(水)に始動してまだ二日目の御船高校ですが、幾人ものお客様が校長室を来訪され、新春の賑わいが続いています。

 来る4月から御船高校は総合型コミュニティスクールとなります。これまでの「地域に開かれた学校」から一歩踏み出し、「地域と共にある学校」として地域住民の方、保護者、学校が協働で学校運営に取り組んでいくことを目指します。その重要なパートナーが町役場の皆さんです。昨年も、1学年の「総合的な探究の時間」や芸術コースの学習活動に対して、積極的なご支援とご協力をいただきました。その中核的存在である商工観光課の作田課長(御船高校同窓生)が来校され、「今年はもっと一緒にやっていきましょう」と力強いお言葉をいただきました。

 また、同窓会の徳永明彦会長が北九州市からお見えになりました。ご多用な公務(企業の代表取締役)の合間を縫って、昨年も何度ご来校くださったことでしょう。11月の「ようこそ先輩、教えて未来」行事ではご講演もしていただきました。2年後に迫る創立100周年行事に向け、今年はより一層、同窓会との連帯が求められますが、徳永会長の存在は誠に心強いものがあります。

 そして、地元の池田活版印刷所さん(御船町)から、芸術コースの生徒達(3学年計66人)に素敵な贈り物がありました。鉛活字を使った昔ながらの手法(活版印刷)で創られた今年の暦です。池田活版印刷所についてはこの「校長室からの風」で以前紹介しましたが、創業明治33年(今年で120年)の老舗で、全国的にも珍しい活版印刷をいまだに貫いておられる印刷所です。

 池田活版印刷所の5代目店主吉田典子さんが来校され、芸術コース3年の代表生徒たちに、手のひらサイズの12枚の月暦を贈られました。生徒たちはさっそく手に取り、活版印刷による味わい深い凹凸感を確かめていました。吉田さんは、本校に対する地域の応援団のような方で、昨年秋の文化祭にも来校され、美術・デザイン、書道の作品や音楽の舞台(ステージ)をご覧になりました。そして、芸術コースの生徒たちにアナログの手仕事の良さを知ってほしいと今回の寄贈を思いつかれたそうです。

 新しい年の暦は、生徒たちの未来図のようなものです。これからの1年、様々なことが起こるでしょう。しかし、頑張る高校生を地域の人々は温かく見守り、応援してくださると思います。

 

 「初暦(はつごよみ) 知らぬ月日の 美しく」 (吉屋信子)

 

 

「冬はつとめて」 ~ 3学期始業式校長訓話

 

 新年明けましておめでとうございます。こうして皆さんと一堂に会し、私たちの学校、御船高校の新しい年が始まります。

 今朝、正門から登校してきた生徒の皆さんは、門松に気付いたでしょうか?昨年暮れの12月27日(金)に渡部先生、小牧先生などの職員有志とハンドボール部の生徒たちによって正門前に立てられました。門松は、新しい年の神様が天から降りてこられる目標(「依代(よりしろ)」)となるものです。門松を飾る松、竹、葉牡丹、南天などにはそれぞれおめでたい意味が込められています。正月の伝統的慣習であり、門松が立っていると正月気分が出ますね。その門松も今日で片づけられます。松の内も終わりです。

 今年は令和2年西暦2020年です。東京2020オリンピック・パラリンピックイアーを迎えました。年の瀬にサプライズニュースが学校に届きました。車いすマラソンに取り組み活躍している2年3組の見﨑真未さんが、東京2020オリンピックの熊本県聖火ランナーに選ばれたのです。今年の5月6日に県内を走る聖火ランナーの一人となります。見﨑さんを通して、東京オリンピックと御船高校はつながりました。学校を挙げて応援したいと思います。

 さて、平安時代に書かれた随筆「枕草子」の冒頭、作者の清少納言はそれぞれの季節で最も趣のある時間帯について述べています。「春はあけぼの」、すなわち夜明けごろが良い、「夏は夜」、「秋は夕暮れ」と言っています。それでは、冬はいつ頃が良いと言っていますか?「冬はつとめて」、すなわち冬は早朝、朝早くが良いものだと述べています。雪が降っていたり、霜が降りていたりと寒い朝ほど良いと清少納言は言っています。清少納言が暮らした都、今の京都は山々に囲まれた盆地で、冬の寒さの厳しい所で知られます。熊本もこれから2ヶ月は寒さが続くことでしょう。しかし、千年前の都人も愛した冬の朝の寒くとも清々しい情景を感じる心の余裕を持ちたいと思います。今日から始まる3学期、「冬はつとめて」と口にして自分を励まし、登校してきてください。

 結びに、残り50日ほどで卒業していく3年生に伝えます。まだこれから進路実現に向けて試験に臨む人がいます。全国でおよそ56万人が受験する大学入試センター試験にも本校から12人が挑みます。3年生全員の進路が決まるまで私達も全力で支援します。そして、既に進路が決まっている皆さん、残された高校生活一日一日を惜しみながら、最後まで勉強してください。しっかりと助走をして、勢いをつけ、新しい世界に飛躍して欲しいと願い、3学期始業式の挨拶とします。

 

門松が立ちました

 

 今年は今日12月27日(金)が学校の仕事納めとなります。学校では、進学課外授業を受ける生徒たちや部活動に励む生徒たちの姿が見られます。朝から、有志職員とハンドボール部の男子生徒4人で、門松づくりが行われました。例年関わってこられた渡部先生(数学)の段取りがよく、およそ1時間でできあがり、正門前に立ちました。門松は、新しい年の神様が天から降りてこられる目標(「依代(よりしろ)」と言います)となるものです。これで、私達の学校も新年を迎える準備が整ったわけです。

 門松を飾る松、竹、葉牡丹、南天などそれぞれ意味があるのです。正月の伝統的慣習であり、門松が立つと気持ちが落ち着きます。ALTのマシュー先生(アメリカ合衆国)も興味深く作業を見守り、質問をしていました。午後、課外授業や部活動が終わり帰る生徒たちを門松が見送ることになります。

 さて、年の瀬になって、学校に大きなサプライズニュースが届きました。車いすマラソンに取り組み、今年一年、各大会に出場してきた2年の見﨑さんが、「東京2020オリンピック聖火ランナー」(熊本県)に選ばれたのです。2020年(令和2年)の5月6日に県内を走行する聖火ランナーの一人となる予定です。走行する具体的な場所や時間は未定ですが、学校挙げて応援したいと思います。来年の東京パラリンピックには間に合いませんでしたが、見﨑さんはその次のパリパラリンピック大会出場を視野に入れ、挑戦することを決めています。見﨑さんの活躍は他の生徒たちに大きな励ましを与えることでしょう。

 見﨑さんをはじめ御船高校生一人ひとりは限りない豊かな可能性を持っています。その可能性をもっともっと引き出していきたいと思います。来る新年、御船高校の更なる飛躍の年となることを願わずにはいられません。

 今回をもって今年の「校長室からの風」を納めたいと思います。

   皆さん、良いお年をお迎えください。

 

「 一年の 心の煤(すす)を 払はばや 」(正岡子規)