あとがき  視覚障がい者教育では、全国的にその専門性の「維持」「向上」が叫ばれて久しい。「継承」という言葉も出てきている。本校においては、80余名の教職員(寄宿舎指導員含む)の内、毎年20人前後が異動等で入れ替わっている。新しく転入してくる教員の中で、視覚障がい教育は初めてというものも多いのが現状である。  また、学習指導要領の改定に伴い、各学校で育みたい資質・能力の明確化を求められている。  このような現状等を踏まえ、今年度は前述しているような研修体制で研修を積み重ねてきた。従前から行ってきた「専門性向上研修」は、今年度も「盲」「弱視」「重複」の3グループで実践事例等を持ち寄り、それぞれの特性に応じた指導方法などを高め合った。また、これまでお互いに見合い、意見交換をすることが少なかった日々の授業について、各学部で参観期間と代表授業を設定し、学部を越えて授業を基にした意見交換をする機会を設けた。このことで、個々に応じた幼・小・中・高の一貫した指導方法、指導内容等を、さらに確立していくことを期待している。毎年行っている「新転任者研修」では、視覚障がい教育の基礎・基本を中心に、最低限知っておくべき事項を集中的に行った。上述したように初めて視覚障がい教育に携わる教員が多い中、「新転任者研修」が果たすべき役割は大きい。今年度も歩行訓練士による「外部講師招へい研修」を実施することができた。予算の裏付けが必要な研修ではあるが、自立活動の充実と、何よりも社会的自立に向けその必要性の高い児童生徒の歩行や、周囲へ手助けを依頼する具体的な実践を行うことができた。そのほか、社会性や身辺処理等を大きく伸ばす寄宿舎生活においても、寄宿舎指導員同士の研修の場を設け、それぞれの意識や指導方法などの確認を行った。  このように、学校全体として教職員の専門性を向上させるべく取り組んできた。その一端を「熊盲教育第49号」にまとめた。その多くがまだ最低限必要な知識の「学び」の域を出ていないが、今後も教職員一人一人が自己研鑽に励み、それぞれの持つ専門性を向上させ、学校として、組織としての専門性(授業実践力)をさらに向上させたい。  視覚障がい教育に携わる多くの方々に御高覧、御指導いただけたら幸いである。 平成31年(2019年)3月           熊本県立盲学校 教頭 吉里 紀幸