公開授業の概要 B高等部 1 はじめに  高等部は本科と専攻科で構成されており、本科の普通科は一般学級と重複障がい学級に、さらにそれぞれが、実態に応じてT課程とU課程に分かれている。また、専攻科は保健理療科と理療科に分かれるなど高等部の教育課程は複雑であり、そこに学ぶ生徒たちの実態や生徒の年齢も幅広く、指導内容も多岐にわたる。 2 公開授業の内容と進め方について <高等部公開授業一覧>   10月 15(月) 1 小川(専理2)リハビリテーション医学 2 藤川(専理1)自然科学 4天川(専理1)(構造)解剖学 5 平井(専保1)(構造)解剖学 緒方(専理3)医療と社会 6 山田(普2)音楽U 井上(専理2)公衆衛生学 16(火) 2 上原(専理1)経路経穴概論 5 代表授業、立島・川口、自立活動 表現 17(水) 1 田畑(専保1)東洋医学一般 稲葉(専理2)臨床医学各論 2 橘 (専理1)東洋医学概論 3 小林(普2T)数学A 4 牧野(普2)地学基礎 5 山城(普2T)日本史B 6 松枝(専保1)(構造)生理学 18(木) 6 廣野(普AT)体育 茂村(専保3)課題研究 19(金) 1 山岡(専理1)はり実習 4 坂口(普AT)作業学習 田川(普2)体育  活発な授業研究会にするためにも、すべての教師が共通の話題で臨めることが重要だと考え、教育活動全体を通して行われている「自立活動」の「コミュニケーション」に焦点を絞ることにした。そこで、普通科2年の一般学級U課程と重複障がい学級T課程の生徒たちを対象に行っている「自立活動〜表現〜」の授業を代表授業とした。なお、今年度に入り、新しい指導案の形式が研修・情報部より出されたのを受けて、代表授業者は細案、その他の教師は略案を書いて授業を公開した。   3 代表授業の指導案 (1) 単元名 「場面に応じた挨拶や話し方〜インターンシップに向けて〜」 (2) 単元について  ア 生徒観     高等部本科普通科では、今年度から新しい取組として、個別に学習する自立活動のほかに、集団で学習する自立活動の時間を1単位時間設定している。学習する4人については、「状況に応じたコミュニケーション」についてそれぞれ課題があり、集団で学習することの利点を生かした授業内容に努めている。本時の授業で学習する3人の様子は、次のとおりである。  【個別の実態は省略】  イ 単元観  この自立活動は、高等部普通科の一般学級U課程と重複障がい学級T課程における合同の学習である。対象生徒のコミュニケーション面における課題は様々だが、困難さが見られる状況には共通点があるため、テーマを絞り段階的に学習を進められるような内容を組み立てている。  1学期は主に、挨拶や自己紹介、友人との会話、話し合い等のスキルについて、基本事項を丁寧に確認しながら学習を進めた。学校生活において、生徒自身が意識して改善に努めている様子も見られるが、まだまだ多くの課題が残っている。  2学期は、11月にインターンシップ(実習)を予定しており、学校内だけでなく外部の方々とのコミュニケーションが必要となる。本校は各クラスの生徒数が少ないため、様々な人とコミュニケーションを取る機会が少ない。そこで、実習先で学校生活では経験することのない状況に直面しても、適切なコミュニケーションを取ることができることを目指し、本単元を設定した。  ウ 指導観  本単元は、インターンシップを見据え、テーマをもとに演習中心の学習を進めていく。日頃の生活場面でのやりとりを重視しながら、「身近な友人とのやりとり」、「教師や目上の方とのやりとり」、「実習先の方とのやりとり」と、段階を踏んで進めていく。特に、会話において相手への心配りが必要だということに気付くよう、状況に応じて言葉を使い分ける点などを、演習を通して身に付けていくことを目指す。  演習後の振り返りでは、教師から一方的に指導するのではなく、生徒自身や生徒相互の気付きを伝え合う場面を設定し、生徒が主体的に考えることを大切にする。また、演習を中心に進めるが、学習内容を生徒が確認し、振り返りを行うことができるよう、ワークシートを活用する。  エ 展望  1学期から学習を積み重ねてきたことで、挨拶や職員室への入室の仕方に変化が見られた。しかし、自立活動の時間内にはできていても、生活場面では実践できないこともまだまだ多い。教師が「自立活動の時に、○○と言う方が良いと学んだね」と伝えると、生徒が思い出して改めることができるので、その場での指導機会を逃さないことが大切である。学習内容や生徒の課題については、学部間で十分な共通理解を図り、学校生活において学習内容が般化されるよう努めていきたい。 (3) 単元の目標と評価の観点  ア 目標 ・場面にふさわしい言葉や話し方について、理解することができる。 ・状況を適切に捉え、タイミングよくコミュニケーションを取ることができる。 ・自分の話し方について客観的に振り返り、改善しようと意識することができる。  イ 評価の観点 ア 知識及び技能 イ 思考力・判断力・表現力 ウ 学びに向かう力、人間性 @ 場面にふさわしい言葉を選ぶことができる。 A 適切な話し方について理解している。 @ 状況に応じてタイミングよく言葉を発する。 A 状況を適切に捉えて話すことができる。 @ 自分の話し方について客観的に振り返り、改善しようと意識することができる。 (4) 指導計画と評価規準 時 学習活動 評価規準 ア イ ウ 1 場面に応じた挨拶や言葉づかいについて考えよう @ @ 2 (本時) 場面に応じた質問の仕方・頼み方について考えよう A A 3 場面に応じた謝り方・断り方について考えよう A A 4 電話をかけるときのマナーを知ろう @ @ 5 実習中の挨拶や話し方について確認しよう A @ @ (5) 本時の学習  ア 全体の目標 ・場面に応じた質問や依頼の仕方について、理解することができる。(知・技) ・状況を適切に捉え、質問や依頼をすることができる。(思・判・表)  イ 本時の展開 時間 学習活動 指導上の留意事項 備考 5分 導入 1 前回の学習内容を確認する。 2 本時の学習内容を確認する。○前回の内容を思い出せるよう、学習のポイントを生徒に質問しながら進める。 ○ワークシートを配付し、本日の学習内容と目的を説明する。ワークシート 35分 展開 3 ワークシートに記された、5つの場面について確認する。 4 それぞれの場面について、どのように話したらよいか、ワークシートの空欄にメモをとる。 5 最初の場面から順に、実際の場面を想定して演習を行う。場面毎に、気付きを発表し合う。 6 質問と依頼の仕方のポイントを確認する。○5つの場面について読み上げ、状況がイメージできるよう補足説明をする。 ○書くことが苦手な生徒には、キーワードとなる単語を書くよう促す。 ○自分の話し方に対する振り返り、他の生徒の話し方に対する気付きを尋ねる。 ○質問や依頼をされた相手役の人にも、どのような印象を受けたかを尋ねる。 ○改善すべき点だけでなく、良かった点の評価も行う。 ○相手の状況を判断すること、適切な言葉づかいを意識することを押さえる。ワークシート 10分 まとめ 6 ワークシートに自己評価と感想を記入する。 7 一人ずつ、気付きや感想を発表する。○演習に時間をとり、まとめの時間が短くなった場合は、次回までの宿題とする。ワークシート  ウ 場の設定 【省略】  エ 個人の様子・目標・手だて 生徒 様子 目標 手だて 金山  話したい内容がまとまらず、発言に時間がかかる場合がある。依頼する場面では、相手の状況をうまく判断できずに、自分の要望をストレートに伝えることがある。 ○場面に応じた質問や依頼の仕方について、理解することができる。 ○状況を適切に捉え、質問や依頼をすることができる。 ・発言に時間がかかる場合は、質問や依頼の基本となるパターンを示す。 ・状況判断が難しい場合は、相手の立場や状況を補足説明する。 中川  自分の意思を伝える際に、小声で単語だけを述べて伝えようする傾向がある。過去に学習した内容を忘れがちだが、確認すると思い出すことができる。 ○場面に応じた質問や依頼の仕方について、理解することができる。 ○状況を適切に捉え、質問や依頼をすることができる。 ・使う言葉が短すぎる場合は、どのような表現を補うのかを明確に伝える。 ・必要に応じて、状況に関する補足説明を行う。 松本  丁寧で穏やかな口調で話すことができるが、最後まではっきりと言わず、語尾が不明瞭になることがある。人に尋ねる時や説明する時に、何と言うかまとまらず、言い淀む時がある。 ○場面に応じた質問や依頼の仕方について、理解することができる。 ○状況を適切に捉え、質問や依頼をすることができる。 ・考えがまとまらずにいる時は、具体的な場面を話し、イメージできるようにする。 ・キーワードとなる単語は何かを確認し、自信を持って発言できるようにする。   オ 教材・教具【省略】   カ 本時の評価【省略】    4 成果と課題  (1)成果   ・日頃かかわりの少ない普通科と専攻科だが、お互いの授業を参観しあったり意見や感想等を出しあったりすることで、理解が深まったり視点を変えて考えたりすることができ、今後の授業展開の参考になった。   ・全員が指導案を書いて授業に臨んだことにより、授業の進め方や振り返り、改善点などが明確になった。   ・生徒の学習中の様子や授業研究会を通して、高等部の生徒だけでなく、本校幼児児童生徒の育ちをどう捉え育成していくか等、考えていく良い機会となった。   ・高等部の中では、誰がどの授業を参観するのかあらかじめ一覧表にして配っていたため、指導案や感想用紙の準備がスムーズだった。 (2)課題   ・授業者が公開する時間が決まっていたため、参観する職員は自分の空き時間に公開してある授業しか参観できなかった。そこで、いつでも公開することはできないかとの意見があった。生徒の実態や指導案の準備等を含め、今後検討したい。   ・授業研究会をどのように進めたらより多くの意見が出るのか、今後検討したい。