公開授業の概要 A中学部 1 実施の目的 ・お互いの授業を参観し、多くの視点からの意見をもらうことで、授業の質の向上・視覚障がい教育の専門性の維持・向上につなげる。 ・生徒の学習中の様子を知り、指導・支援の在り方について改めて考える機会とする。 2 計画 期間 内容 10月10日(水) 研究授業の学習指導案を学部で検討 10月26日(金) 細案及び学習単元計画シートの配布 10月29日(月)  〜11月2日(金) 授業参観週間。なお、保護者にも参観週間として案内を行う。  研究授業:10月31日(水)@国語 ビデオ視聴:10月31日(水)15:45〜 授業研究会:11月1日(木)15:45〜 11月5日(月)  〜11月9日(金) 評価(学習単元計画シート)及びアンケートの記入 後日 ・アンケートの整理・共有 ・学習単元計画シート(評価を記入したもの)共有3 実施方法 (1)授業の「細案」又は「学習単元計画シート」を作成する。 (2)他学部の先生の授業の参観についても実施する。 (3)評価の視点について(感想シートの様式について)  教科の視点、生徒の実態に合わせた視点、視覚障がい教育の視点、新学習指導要領の視点をもって評価を行う。 4 代表授業の指導案 (1) 単元名 「漢字の音訓」 (2) 単元について   ア 単元観  本単元は、漢字の三要素「形・音・義」のうち「音」と「義」に焦点を当てた学習である。生徒たちは小学部のときに「漢字に音読みと訓読みの二つの読み方があること」、「複数の音読みや訓読みをする漢字があること」などを学習してきている。  本単元では、漢字が日本に伝えられた由来を踏まえながら、小学部でも扱った漢字の音読み・訓読みについて改めて学習する。生徒たちが常用している点字には漢字の表記がないため、生徒たちにとって、出会う「言葉」とそれを表す「漢字」の結びつきは決して強くはないかもしれないが、将来パソコンでの文書作成や固有名詞の名前の伝聞するときに必ず必要になってくる知識である。音読みと訓読みの違いを改めて学習することで、普段耳にする言葉や同音異義語の理解には、「音読み(音)」だけではなく、「訓読み(意味)」が大きな役割を果たすことが分かり、言葉の理解を深めるための基礎になる単元である。   イ 生徒観    【個別の実態は省略】  漢字については、「視覚障害者の漢字学習」を使って学習しており、小学部低学年では学ぶ字数はそれほど多くなく、「木」や「口」など画数も少ないため、点線文字による形の把握、文字のたどり方といった漢字の基礎を取り入れながら学習してきている。学年が上がるにつれて画数も増え、漢字も複雑になるため、基礎となる「形」の把握した上で、「意味」や「使い方」に重きを置いた学びを積み重ねてきている。  1学期に学習した「漢字の組み立てと部首」では、漢字は「偏旁冠脚に分類されること」、「その部分はおおまかな意味があること」を学習した。漢字の形ではなく、文脈での漢字の使い方から、「心」を表す意味、「刀・切る」を表す意味など、自分たちなりに想像力を働かせながらその意味を考える姿が見られた。日常生活では、意図的に異なる同音異義語の意味で解釈してやりとりを楽しんだり、拗音などが入った響きの特徴的な言葉を繰り返し言ったりする場面が多く、身の回りにある「言葉」への興味が高い様子が伺える。  また、自立活動の時間を中心に、将来の自立した生活に不可欠であるパソコンの学習を行っている。パソコンで検索や文書作成の際に入力した文字を変換した際、音声読み上げソフト(PC-Talker)が漢字の訓読みや熟語の使用例を読み上げる場面がよくある。男子生徒は特にパソコンの操作や読み上げる音声を楽しみながら自分から意欲的に操作する姿が見られる。女子生徒も、読み上げる音声を注意深く聞こうとする姿が見られる。   ウ 指導観  本単元では、まず漢字が日本に伝わってきた由来と音読みと訓読みの違いについて学習する。中国から入ってきた「音読み」の特徴を意識できるよう、中国語の音声を用意する。音声をそのまま当てはめた読み方である音読みでは意味が伝わらないことに気付くことで、もう一方の「訓読み」の働きの重要性に気付き、言葉の理解には「漢字の意味」が大きな役割を果たすことにつなげていけるようにする。  また、本単元では、かな文字表記の点字教科書を使用している生徒たちにとって少しでも漢字を身近に、そして意欲的に取り組めるよう、パソコンの音声読み上げソフトを用いて授業を進めていく。また、日頃から生徒たちの関心の高い同音異義語をクイズ形式で出題し、一つずつ操作しながら読み解いていくことで、主体的に音読み・訓読みの違いを学べるようにする。2択の選択肢のうちどちらの漢字が正解なのか、自分一人で考えをまとめる時間やお互いに意見を交わしたりする活動をバランスよく設定していきながら、文脈に合う漢字を判断できるようにする。また、パソコンが読み上げる音声(訓読み、熟語の使用例)だけでは判断が難しいことも考えられるので、他の熟語の使用例などを集めたリストを準備しておき、一文字単位にしたときの訓読みや熟語そのもの意味から想像しながら問題を解いていけるようにしたい。そして、最後には、練習問題で選択しなかった漢字を使った短文を自分たちで考える活動を設定することで、漢字の意味を意識した学びの深まりや表現力へとつなげていけるようにしたい。  (3) 単元の目標と評価の観点   ア 目標  ・漢字が日本に伝えられた背景を踏まえながら、漢字の読みの多様性(音読み・訓読み)を知ることができる。 ・パソコンから読み上げられる音声(訓読み)を手掛かりにしながら、漢字の意味について考えることができる。 ・自分の名前の漢字の音・訓が分かり、他者に分かりやすく説明することができる。   イ 評価の観点 ア 知識及び技能 イ 思考・判断・表現 ウ 学びに向かう力・人間性 @音読み・訓読みの違いを理解している。 @画面読み上げソフトの音声を手掛かりに、文脈に合った正しい漢字を選択している。 A自分の名前の漢字の読み方を知り、分かりやすく伝えようとしている。 @漢字の音・訓に興味をもち、漢字の理解を深めようとしている。 A画面読み上げソフトを活用して、漢字の意味を知ろうとしている。  (4) 指導計画と評価規準 時 学習活動 評価規準 1/2(本時) 〇本単元の学習内容と本時の学習のねらいを確認する。 〇漢字が日本文化に伝えられた背景を知り、「音読みと訓読み」の違いを整理する。 〇パソコンに入力した文字を読み上げる音声から、同音異義語の漢字の意味の違いを確認する。 ○同音異義語の漢字について、文脈と読み上げられる音声を参考にしながら適切な漢字を選択する(例:点字と展示)。 〇熟語を使って短い文を作って発表する。 〇本時の学習のまとめをする。 ア@ イ@ 2/2 〇本時の学習のねらいを確認する。 〇同じ漢字で複数の読み方をする熟語があることを知り、意味の違いを確認する。(例:セイブツ・なまものなど) 〇自分の名前の漢字の音読み・訓読みを確認する。 〇自分の名前の漢字を、他者に伝えるにはどのように説明すればいいか考える。 ○本時の学習のまとめをする。 ア@ イA ウ@ (5) 本時の目標   ア 全体の目標 ・漢字の音読み・訓読みの違いを理解することができる。 ・パソコンが読み上げる音声(訓読み)を手掛かりにしながら、文脈に合った漢字を選択することができる。   イ 本時の展開 時間 学習活動 指導上の留意事項 備考 5分 導入 1 本時の学習内容を知り、ねらいを確認する。 2 1学期に行った「漢字の組み立てと部首」を振り返る。〇漢字を楽しく学ぶ雰囲気を高められるよう、前回の学習で使用した教材や話題を取り上げる。 ・前回使用した教材 35分 展開 3 教科書を読み、漢字の歴史や音訓の違いを確認する。 4 パソコンを使って漢字の練習問題を解く。 (1)2種類の異なる漢字を用意し、文脈から正しい漢字を選択する。  @テンジ(点字・展示)  Aジシン(自信・地震)  Bキキ(機器・危機)    (2)(1)で選択しなかった漢字を使って短い文を考え、発表する。〇中国という国や、意味とは関係ない音読み(発音)の特徴を意識できるよう、「中国語」の音声を用意する。 〇漢字の意味の違いに注目できるよう、同音異義語の練習問題を用意する。 ○意味の違いに自分から気付けるよう、パソコンの音声読み上げ機能を利用する。 〇漢字の「意味」を手がかりにできるよう、訓読みに注目を促す声かけを行う。また、パソコン以外の読み方や意味のヒント(熟語の使用例など)を準備しておく。 ○練習問題@はやり方の確認を含めて一緒に行う。ABについてはパソコンを自由に操作しながら各自で解いていく。 ○(1)で出てきた漢字の訓読みを参考に取り組むよう声をかける。主述の整った文になるよう意識付けを行う。・中国語音声 ・電子黒板 ・生徒用パソコン(1台) ・PC以外の読み方や熟語の使用例リスト 10分 まとめ 5 学習内容を振り返り、次時の内容を確認する。 〇学んだことを自分の言葉で表現できるよう、考えをまとめる時間を設ける。 ○次時は自分の名前の音読み・訓読みについて学習することを予告する。  ウ 本時の評価 本時の目標 評価基準 〇漢字の音読み・訓読みの違いを理解することができる。 A 音読みと訓読みの違いを自分で説明することができる。 B 教科書を確認しながら説明することができる。 C 教師の支援を受けながら説明することができる。 〇パソコンが読み上げる音声(訓読み)を手掛かりにしながら、文脈に合った漢字を選択することができる。 A 双方の訓読みの違いに自分で気付き、文脈に合った漢字を選択している。 B パソコンが読み上げる音声以外のヒントを聞いて適切な漢字を選択している。 C 教師と一緒に、訓読みを確認しながら漢字を選択している。   ※A:十分満足できる(80%以上)状況    B:おおむね満足できる(50〜80%)状況    C:努力を要する(50%以下)状況 エ 場の設定【省略】  5 考察と次年度への志向 (1) 自身の参加度について 積極的にできた0 できた2 あまりできなかった5 まったくできなかった0 「どの授業を参観してもよい」としたことで、空き時間に合わせた参観が可能になった反面、積極的な授業参観の意識が持ちにくかったようです。事前に参観する授業を確認しましたが、結局参観していないものもありました。  次年度に向けて、授業をお互いに参観する習慣づけが必要と考えます。そのためには、年度当初からお互いの授業を参観する週間を設定することで、早い段階での生徒理解にもつながると考えます。また、授業参観週間には、事前に参観する授業を確認するとともに、アンケートの配布を行うことで、見学のし忘れや授業アンケートの提出数の増加につながると考えます。 (2) 目的の達成度について (授業の質の向上・視覚障がい教育の専門性の維持・向上を図る) とてもよい3 よい2 あまりよくない2 まったくよくない0 「日頃から授業を見合う習慣づくり」と、「生徒のこと(指導、実態把握等々)を話し合う機会をもっと持つべき」という意見が多かったです。日々の授業準備・業務処理に追われ、職員同士で気軽に話をする機会がなくなっていると考えられます。   次年度に向けて、「定期的に他の先生方の授業を見学し、その授業へのコメントを書く」といった取組や生徒や授業についての情報共有を行っていければと考えます。 (3) 生徒の学習中の様子を知り、指導・支援の在り方について考える機会とする とてもよい4 よい3 あまりよくない0 まったくよくない0 自分の授業場面以外での生徒の学習の様子を知ることで、先生方自身の授業への振り返りにつながったことが伺えます。生徒との関係はこれまでの授業の中で築きあげられているものなので、うまくいっている先生に直接どのようなことを心がけているかを尋ねてみるといいと思います。また、指導方法や工夫については職員間でもっと話をする必要があることも感じます。 (4) 疑問点・改善点について(自由記述) ・略案を用意していた方が参観者にはわかりやすかったかもしれません。 →今回は、週のどの授業を観て頂いてもいいように、あえて略案を作成しない方向で実施しました。結果的には見てほしい授業の中身が伝わりにくくなったと考えられます。 ・公開授業、代表授業からの研究会があると、他の学部ともつながって生徒の様子の共有や系統性を考える機会となってよかった。 →年間を通じて計画的に行っていく必要性があります。 ・研究授業の感想を時間があったら是非全班から聞いてみたかった。 →中学部の職員が1名ずつ入ったのは、グループで挙がった意見を整理して共有するためでしたが、時間の都合上2班だけになってしまいました。他の班の意見については共有できていないので、その場の議論の中で挙がった意見を整理して報告してもらう必要がありました。 ・細かな生徒の実態把握を行う必要がある。 →実態をどこまで把握していくかは永遠のテーマですね。行った実態把握から指導に活かすことも大切にしたいです。 ・授業研究会なので、学校全体で研究の視点が設けられているとよい。また、学校全体でどのようなことに配慮して授業を行うのか、それが盛り込まれた学習指導案の書式になるとよい。そうすることで、全職員がその意識を持つことができる。 →来年度に向けて、これから検討していきます。学校としての研究の柱があり、その次に学部で取り組むべきことができるようにしたいです。 学習単元計画シート(各教科・合わせた指導) 作成者〇〇○○ 1 単元の概要について  小学部での学習(既習事項)との関連や本単元を学習する意義やねらいについて簡潔に記述する。 2 単元名と目標について 単元名、 単元目標(知識・技能)(思考・判断・表現)(学びに向かう人間性)、 評価の順に記載する。 ※単元目標については、学習指導要領の各教科の内容(観点)に示されている事柄を参考に設定する。 ※評価欄については、目標の達成度の指標となるよう、◎〇△の三段階で設定し、それぞれの姿について具体的に記述する。 3 個人の単元目標について 氏名、 目標(知)(思)(人)、 手立て、 様子の順に記載し、◎○△ の3段階評価とする。 手立てについてはそれぞれの目標達成のために必要な事柄を具体的に記述する。また、様子についてはできたことについてはできばえを、できなかったことについてはその原因が分かるように具体的に記述する。 4 学習計画について 期日 学習内容 評価の観点 知 思 人  学習内容では、単元期間中の主な学習内容とそのねらいを記述し、評価の観点ではそれぞれの学習内容でどの項目を評価するかを〇印で示す。 学習単元計画シート(自立活動) 作成者〇〇○○ 1 課題設定の概要について ※生徒の実態及び指導目標(中心課題)について記述する。 2 指導目標と関連する内容について 指導目標 目標との関連(健康の保持) ・(心理的な安定) ・(人間関係の形成) ・(環境の把握) ・(身体の動き) ・(コミュニケーション) ※目標との関連については、学習指導要領の内容に示されている事柄を参考に設定する。 3 個人の目標について 具体的な 指導内容 目標 手立て 関連する項目 健・心・人・環・身・コ 4 評価について 教師の指導に対する評価 目標設定及び指導内容について評価を行う(目標設定は妥当であったか。主体的に取り組むことができる指導内容だったか、発達の進んでいる側面をさらに伸ばすことができる指導内容だったか、自ら環境と関わり合うことができる指導内容だったか、自ら環境を整える指導内容だったか、自己選択・自己決定を促す指導内容だったか、自立活動を学ぶことの意義について考えさせるような指導内容だったか等)。 生徒の学習に対する評価 生徒の学習状況(目標に近づいているか、教材・教具などに興味を持って取り組んでいるか等)について評価を行う。また、必要であれば、生徒の自己評価を行う。 5 他領域との関連について  各教科、道徳、総合的な学習の時間及び特別活動の指導とどのような関連をもつかを記述する。