専門性向上研修 A弱視グループ 1 概要  弱視グループでは、グループの職員に学びたいことについてアンケートを行いその結果を基に年間計画を立てた。多く要望の挙がった、実態把握の方法や視覚補助具の選定・指導法、弱視幼児児童生徒への授業・教材の工夫、福祉の知識についての研修を設定し、専門性の維持・継承・向上を目指すとともに、個々の実践に取り入れることができるようにした。 2 年間計画 4月  全体研修(年間計画について・専門性向上研修アンケート) 5月  KJ法によるニーズの把握 6月  「自立活動チェックリストについて」  自立活動のチェックリストの説明・効果的な使い方の検討 7月  「視機能評価」  視機能評価の種類、検査法 8月 (1)「見え方と指導上の留意点」    さまざまな見え方、授業・教材・教具の工夫 (2)「ICTの活用」   PC、iPadの機能について   10月 「視覚補助具について@」    視覚補助具の種類、活用方法 11月  「視覚補助具についてA」    視覚補助具の選定方法、指導法 12月 「福祉の知識」    障害基礎年金、障害者福祉サービス 1月 「自立活動の実際@」    生活技能 2月 (1) 「自立活動の実際A」    高等部の取組 (2)職員向けアンケート実施 3 取組の内容 (1)第1回 自立活動チェックリストについて  盲グループに記述(p.6) (2)第2回 視機能評価  ア テーマ  視機能評価の種類、検査法 イ 内容  教育的視機能評価を行うための検査の種類や方法について実際に体験しながら研修を行った。教育的視機能評価とは点字か普通文字かの決定、板書文字の大きさの決定、教材の拡大率の決定、弱視レンズの処方などが目的である。教育的視力検査の種類は、遠距離視力、近距離視力、最大視認力の3つの種類があり、それぞれについて検査の方法が紹介された。ランドルト環単独指標(遠見用・近見用)、森実ドットカード、TAC(テラーアキュイティカード)、MNREAD(エムエヌリード)の検査器具を説明を受けながら、実際に評価を体験した。普段触れる機会が少ない検査の道具に触れ、検査方法を知ることができ、子どもたちの見え方をより理解することにつながった。 (3)第3回 見え方と指導上の留意点  ア テーマ  さまざまな見え方、授業・教材・教具の工夫 イ 内容  弱視幼児児童生徒に対する実態把握、教材作成の工夫、授業での工夫についての実践発表を行った。  幼稚部の実践では、見る力を高めるために迷路や点つなぎに取り組んでいること、的確な概念の育成のために実物を触る体験も大事にしていることが報告された。小学部の実践では、教材の大きさ、提示の方法を変えながら見え方を把握し、児童の見やすい環境を探しながら授業を行っていることが報告された。専攻科の生徒へは、以下の3つの視点で自作された教材の紹介があった。@あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師国家試験に対応したもの。A見やすく使いやすく、問題集の役目をし、各教科のまとめになるもの。B自宅や通学時(公共交通機関)での学習に活用できるコンパクトな内容で携行しやすいもの。  見え方に対する様々な工夫を共有できたとともに、幼稚部、小学部、中学部、高等部の学習のつながりや将来を見据えた一貫した視覚障がい教育の大切さを再確認できた。 (4)第4回 ICTの活用  ア テーマ  PC、iPadの機能について イ 内容  パソコンやiPadの環境設定について、講義、演習を行った。パソコンの画面を自分の見やすい環境に設定する方法として、マウスポインタの拡大表示、拡大鏡の使い方、文字サイズとカーソルの拡大表示、配色の変更について、また、音声で視覚を補う方法としてナレーター機能の紹介もあった。iPadでの画面を見やすくする方法としては、画面表示と明るさの設定、アクセシビリティ、拡大鏡、電子データの書籍化について、音声で視覚を補う方法としては、アクセシビリティのボイスオーバー、スピーチの機能の説明があった。実演を交えた研修となり、初めて知る機能も多く、参加者からは驚く声が多く聞かれた。 ○質疑応答 ・アンドロイドでも同じような機能があれば教えてほしい。 →設定の「ユーザー補助」などから画面を見やすくする方法がある。文字サイズや太さ、画面配色の変更、音声読み上げができる。 (5)第5回 視覚補助具について@ ア テーマ  視覚補助具の種類、活用方法 イ 内容  視覚補助具を活用している理療科の職員から視覚補助具の活用の工夫や活用場面について話があった。単眼鏡で見るときの工夫として、眼振がある場合は眼振の止まるポイントで見るようにしていること、拡大読書器での工夫として、教科書や配付されたプリントを見るだけでなく、化粧やネイル等の際に使用したり、カメラの向きを変えて板書を見たり、実体験を交えた活用場面や工夫点を知ることができた。ルーペは、様々な倍率があるため、それぞれの視力に合った倍率のルーペを選定する必要があること、周りの目が気になって、視覚補助具を使用することにためらいがある場合があるため、気持ちに寄り添うことも必要であること、学校で配付されるプリントや教科書は見やすいような配慮がしてあるが、卒業後に困難さを感じることがないよう、将来のことを考え、小さい文字を読む機会を仕掛けていくことも必要なことなど、指導上大切なことを学ぶことができた。  視覚補助具を活用している当事者の気持ちや具体的な活用場面、工夫について学ぶことができた研修となった。 ○質疑応答 ・美術館、博物館での使用で単眼鏡の周知は進んでいるのだろうか、不審な目で見られないか。カメラと間違われることはないのか。 →県立美術館に問い合わせたところ、事前に連絡を入れておくと監視員と情報共有をするので、「どうぞお使いください」とのことだ。 ・バス停に接近してくるバスで複数台やってくるときの単眼鏡を使って行き先等の識別のコツについて知りたい。 →バスの構造やレイアウトを知っておくと、狙いを定めやすい。単眼鏡の操作として、バスは向かって右から左へ移動してくるので、その動きに慣れていくことも必要である。白杖があると周囲の人や運転士に気付いてもらいやすいと思う。 (6)第6回 視覚補助具についてA ア テーマ  視覚補助具の選定方法、指導法 イ 内容  単眼鏡やルーペの使い方の指導について、一人一つずつ単眼鏡とルーペを実際に使いながら研修を行った。持ち方やピントの合わせ方、板書や信号、バスの行き先表示を見るときなど、場面ごとの使い方の練習を体験した。指導する上での心構えとして、本人も指導する人も我慢が必要で、使う人の身になって計画を進めていくことが大事であり、1回や2回であきらめるのではなく、一定期間取り組み、時間をかける根気強さが大切であるという話があった。視覚補助具の段階的な指導法と心構えを学ぶことができた研修となった。     (7)第7回 福祉の知識 ア テーマ  障害基礎年金、福祉サービスについて イ 内容  障害基礎年金、福祉サービスについて研修を行った。障害年金は「病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、受け取ることができる年金」であること、障害認定基準に基づいて受給額が決定されること、また、受給要件を満たすための条件として、初診日が大事だという話があった。年金の支給額の計算や受給要件を満たしているかどうかなどのクイズがあり、難しく感じていた年金についてイメージしやすい 研修となった。  障害福祉サービスについては、自立支援給付(介護等給付、訓練等給付、自立支援医療、補装具)、地域生活支援事業(相談支援、日常生活用具、コミュニケーション支援、移動支援)について話があった。就労移行支援や就労継続支援A型、就労継続支援B型、生活介護のぞれぞれの事業所について賃金や生活の流れなど、具体的な話があり、福祉についての知識を得ることができた。 (8)第8回 自立活動の実際 ア テーマ  自立活動 イ 内容  自立活動の計画についての話では、6区分27項目に基づき実態を整理した後に中心課題を見つけ、それを根拠に自立活動の内容を設定していく大切さについて触れられた。その上で、自立活動の時間だけでなく、日常生活全体を通して取り組んでいくべきだという話があった。  自立活動での箸の指導の事例発表では、子どもが嫌にならないように、楽しい雰囲気で、短い時間で、同じ言葉かけで繰り返し取り組んでいくことを大切にしているという話があった。また、学校だけではなく、家庭と連携して取り組んでいくことで身に付いていくため、子どもが生活する場面全体で同じかかわりをしていくことが必要だという話があった。  理療科の職員からは、「自立活動の内容は本来であれば家庭で指導できる内容である。自分は母親に日常生活動作や歩行の指導をしてもらった。歩行指導では触地図を作ってくれたり、実際に様々な場所を歩いたりしていた。学校だけではなく、保護者にも協力していただく必要がある」という話があった。  参加者からは、学習指導要領を読み込む必要性や家庭との連携の大切さについて多く声が挙がった。