専門性向上研修 @盲グループ 1 概要  4月の職員研修でアンケートをもとに幼小中高の職員を縦割りの3つのグループに分けて、研修を行った。5月に各グループで顔合わせをし、月1回の研修を計10回実施した。6月以降は、グループ毎に研修日を設けるが、他グループの研修への参加も自由とした。5月の1回目は参加者のニーズを把握するため、KJ法により先生方の発想や意見や情報の集約化・統合化を行い、2回目以降は職員のニーズに応じたワークショップ(参加型)の研修を中心とし、各々の視覚障害教育の専門性を高めることを目的とした。盲・弱視・重複で共通する内容については、グループ合同で研修を行った。 2 年間計画 4月 全体研修(年間計画について・専門性向上研修アンケート) 5月  KJ法によるニーズ把握 6月 「自立活動チェックリストについて」(盲・弱) 自立活動のチェックリストの説明・効果的な使い方の検討 7月 (1)「歩行指導」 *第1回外部講師招聘研修(歩行訓練士 東先生)  白杖歩行の指導法 校内外の歩行指導  交差点の渡り方 公共交通機関の利用 (2)「実技指導」(体育「クロールの指導」)  九盲研大分大会発表原稿校内検討 8月  (1)「 日常生活技能」(盲・寄宿舎)  身の回りの整理・整頓、掃除、清潔   買い物の仕方、服の選び方(理療科教員の生活紹介)  ブラインドメイク、礼儀マナー、コミュニケーション  生活に役立つICT機器 (2)「ICT機器の活用」(盲・寄宿舎)  パソコンのショートカットキーの使い方  電子黒板、テキストデイジー、スマホアプリの活用 10月  「歩行指導」 *第2回外部講師招聘研修(歩行訓練士 東先生)  白杖歩行の指導法、校内外の歩行指導  交差点の渡り方、公共交通機関の利用 11月  「点字指導」  初期指導、中途失明者の指導  表の書き方、御礼状の書き方、テスト点訳、日記や手紙の書き方 12月  「福祉の知識@」「福祉の知識A」  福祉的就労関係の制度、障がい者福祉サービス、障がい者手帳の種類、  障がい基礎年金、日常生活用具の申請、同行援護事業、障がい者総合支援法の概要 1月 「歩行指導」 *第3回外部講師招聘研修(歩行訓練士 東先生)  白杖歩行の指導法、校内外の歩行指導  交差点の渡り方、公共交通機関の利用 2月   (1)「合理的配慮」  全盲の人へのかかわり方、配慮すべきこと  言葉で状況説明する際の配慮、障がい受容について (2) 職員向けアンケート実施 3 取組の内容 (1)第1回 自立活動チェックリストについて ア テーマ     「自立活動チェックリストの活用」 イ 内容  広島中央特別支援学校で作成された自立活動チェックリストの概要説明を行い、チェックリストの効果的な活用の検討についてグループ協議を行った。昨年度の課題として、チェックリストの項目数を本校の教育目標に沿う形で絞り込むこと、記入の負担を減らすために表計算ソフト等を用いてパソコン上で入力する形にすること等が挙げられた。昨年度中に、表計算ソフトで内容を整理し、【中学部用】【高等部用】と項目を分け、入力しやすい形にした。また、今年度はチェックリストの中から幼稚部、小学部段階から系統的に取り組んでおくべき内容を抽出し、【幼稚部用】【小学部用】の試作リストを作成した。グループ協議において、学校で一貫して指導するための指針となることが明らかとなったが、今後、学校全体でどのように共通理解を図り、運用していくかが課題となった。 ※第2回・第6回・第9回の歩行指導はP.61にて記述。 (2)第3回 実技指導:体育「クロールの指導」 ア テーマ  「九盲研発表概要検討『実技指導:体育』」 イ 内容  平成30年度九州地区盲学校研究会大分大会の実践発表に向けて、校内検討を行った。盲の生徒が水泳の楽しさや喜びを味わうために、学習内容や教材教具の工夫を行うとともに、個に応じた指導を通して、生徒が最大限に力を発揮して、基本的な技能の定着や体力の向上を目指した保健体育の指導についての発表であった。生徒たちの水への恐怖心を分析すると、立位から浮き身、浮き身から立位など、水中での姿勢変換が大きくかかわっていることが分かった。つまずきのポイントに重点を置き、段階的に学習内容を設定し、安心して学習を進める工夫がされていた。また、キック・クロールの記録の比較やカルボーネン法(心拍数で相対的な運動強度を推定する簡便法)等を実施し、意欲的に体力づくりに取り組む態度が育成できるようにしていた。  参加した全盲の職員からは、「泳いだ状態から立つときは、『トランポリンの着地をするように』という言葉がイメージにつながった。浅いところで水に慣れる経験を重ねることで、水への恐怖心はなくなった。」と経験に基づく意見が挙がった。 (3)第4回 日常生活技能 ア テーマ  「日常生活技能の指導・支援について」 イ 内容  夏季休業を利用して、盲グループと寄宿舎職員との合同研修を実施した。日常生活における様々な工夫について、買い物・郵便・清潔・礼儀マナー等を中心に理療科の職員から話を聞いた。日頃、どのような工夫をしているか、スマートフォンのアプリの活用法も交えて紹介された。  その後、グループに分かれ、『日常生活技能と礼儀マナーの指導・支援上大切にしたいこと』というテーマでKJ法を用いてグループ協議を行った。理療科職員からは、自分は見えていなくても、周りの人に見られているという意識を持つことや、自分が困った時に「すみません。」と言えるようになる等のスキルを身につけてほしい、という意見が出された。 (写真1:買い物時の工夫について実現しているところ。写真2:爪切りの代用としてつかっている爪やすりと、靴下をセットにして洗濯や収納ができる靴下クリップ『ソックスター』) (4)第5回 ICT機器の活用 ア テーマ  「パソコン操作におけるキーボードショートカット」 イ 内容  Windowsにおけるキーボードショートカットを取り上げ、WordやExcelについて実践した。キーボードショートカットは、Windowsのバージョンによって異なることがあるため、今回は、校内で主に使われているWindows8.1を中心に紹介された。実践では、キーボードショートカットを使って、文書の書式変更を行った。  [使用したショートカットの機能]   範囲指定:Shiftキーを押したまま矢印キーを押す   フォントサイズを1ポイント上げる:Ctrl+]   フォントサイズを1ポイント下げる:Ctrl+[   右寄せ:Ctrl+r   ホームタブに移動:Alt+h その後、Tabキーで項目を移動   太字:Ctrl+b 行間を1.5行に変更:Ctrl+5   行間を1行にする:Ctrl+1 行間を2行にする:Ctrl+2 (5)第7回 点字指導 ア テーマ  「点字での試験で大切にしていること」  「中途視覚障がい者の点字指導について」 イ 内容  前半は、問題を点訳する上での配慮事項について、小学部の実践報告があった。児童が試験の形式に慣れるように、問題番号のつけ方や文頭のマス空けを統一しており、また、返却した答案用紙で正解か不正解がすぐ分かるように、番号の後の句点を消したり、シールを貼ったりしている等の配慮について説明があった。また、問題を作成する際には、@原文に忠実に点字化する。A読みやすく、探しやすく、解答しやすいように工夫する。B問題と問題の間を行あけし、両面印刷する。C問題の指示文、問題文、設問、選択肢の順で提示する。D表や図が必要な場合は、単純化して必要な情報だけにする、見やすい配慮をするなどの配慮事項が紹介された。  後半は、中途視覚障がい者の点字指導について、理療科職員から点字触読指導マニュアルに基づく指導方法の説明があった。幼少期に行われる点字の初期指導との大きな違いは、指をできるだけ立てて1段ずつおりて、点か棒かを確かめて形を捉えるようにすることである。下(3段目)までいったら、そのまま上に戻り、右に移動し、また1段ずつ下に降りて次の文字の形をとらえるように指導する。中途視覚障がい者は今までの生活の中で言葉を知っているため、日本語の文章の経験の豊富さを活かし、推測を働かせて半分は点字を頭で読むつもりで取り組むことが大切である。この研修では、点字習得についての理療科職員の体験談がとても参考になった。 (6)第8回 福祉の知識 ア テーマ  「補装具と日常生活用具・同行援護事業について」 イ 内容  補装具と日常生活用具は障害者総合支援法によって定義づけられている。補装具は「自立支援給付」として位置づけられており、全国一律の制度である。日常生活用具は、「地域生活支援事業」という位置づけであるため、支給品目や支給対象者の範囲や支給要件などが自治体ごとに異なる。本研修では、視覚障害者日常生活用具一覧の資料をもとに説明があったが、自治体によってサービスの格差があることが明らかとなった。  同行援護事業の支給対象者は『視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等』であり、同行援護アセスメント票に該当すれば利用することが可能である。日常生活や買い物や散歩、余暇活動などに利用でき、通学通勤や営業活動、選挙運動などの政治活動、布教などの宗教活動などには利用できないとされている。支給対象者は、対象者の要望に基づき支給決定がされるが、実際のところは、制度としては存在するが、同行援護事業所の減少とともに利用できる事業所が限られるという現状がある。このような福祉サービスは、実際に利用してみないと分からないことが多いが、利用する人に説明できるように知っておく必要があるため、研修の機会を確保していきたい。