進路便り 第2号     令和5年(2023年)12月22日発行        熊本県立盲学校            進路指導部                      令和5年11月24日(金)に高等部理療科進路学習会(先輩を囲む会)が行われました。今回は、講師として本校専攻科を平成26年度に卒業され、県内唯一のヘルスキーパーとして株式会社TMJに勤めておられる樋口智子先生をお招きしました。 本号は、そのときの講話内容の一部を進路指導部でまとめましたので、ご紹介いたします。 1 自己紹介  専攻科入学時は文字を読むことにはあまり不自由を感じていませんでしたが、網膜色素変性症が進行し、現在は文字を読むことは難しく、アイホンのボイスオーバーを使って情報を得ています。  学生の頃を振り返ると、学校は楽しかったのですが、視力低下が進み今後どうなっていくのか分からないという不安感と学習が辛く苦しく大変だったことを思い出します。国家試験合格を目標にしていたときは将来が見えず勉強が楽しく思えず苦しく感じていました。3年生になったときにヘルスキーパー(※1)という仕事があることを知り、5年後・10年後の将来の自分を考え、どんな治療をするマッサージ師になるのかを思い描くようになると、学習へのモチベーションが高まり、勉強に積極的に取り組めるようになりました。  解剖学の筋肉や経穴等の暗記が苦手で、覚えては忘れ、再度覚えるを繰り返して必要な知識を確実に定着させることが大変でした。  ※1:ヘルスキーパー(企業内理療師)とは、あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師の国家資格を取得したものが、企業・団体等に雇用され、その従業員等を対象にして施術を行うものです。マッサージの施術やセルフケア指導、健康への助言を通じて業務中に生じた疲労やその他の症状を取り除き、業務の能率向上と従業員の健康増進に役立てることを目的としています。大都市圏にある従業員300人以上の企業でマッサージ師が多く雇用されています。 2 ヘルスキーパーの仕事内容について  現在は、無期契約社員として雇用されており、社会保険の加入や人間ドック料の全負担等、福利厚生が充実している安心して働ける職場です。  社内の休憩室の一角にある治療ルームで施術を行い、施術時間は1回20分でクイックマッサージチェアーを使って行います。勤務時間は10時から19時で、その中で予約が13枠設けてあり、1日に平均10人を施術します。ウェブシステムにより2週間先まで予約できるようになっています。社員はシフト制で勤務時間がずらしてあり、利用者は仕事前後か休憩時にマッサージを受けることができます。  利用者は20歳代から60歳代の女性が大半を占めており、長時間同じ姿勢をとるパソコンを使うデスクワークが多いことから、肩こり・腰痛・眼精疲労・頭痛等の疾患が多くみられ、上半身中心の施術を行っています。また、手足のむくみや疲労感等の症状がある場合にはオイルマッサージも行っています。4・50歳代の常連利用者が多くなる傾向があり、同じ利用者に偏らないようにするため、週に2回までの施術制限を設ける工夫をしています。  入社した当初は利用者が少なく、マッサージに興味を持ってもらうために、「足がつるのはなぜ?」、「お風呂にはどんな効果があるの?」等の施術中によく尋ねられることをまとめて掲示し健康に役立つ情報を発信し地道に利用者を増やす努力をしていました。 3 仕事をするうえで心がけていることについて  施術を行う前には、利用者さんの診察を行い、限られた時間で治療をする必要があるため、一番つらいところから施術を始めるように心がけています。また、炎症症状が強く施術できない場合は病院を紹介する等の対応を行っています。  体に不調があったときに「とりあえず樋口さんに相談してみよう」と思ってもらえるように信頼されるマッサージ師でありたいと心がけています。マッサージの目的は、身体的な症状を緩和することが一番ですが、仕事上のストレス・家庭や人間関係の悩みを抱える利用者も多く、話をよく聞き、精神的なケアができるように心がけています。  利用者は話を聞いてほしいと思っている人から話をしたくない人まで様々であり、こちらから無理に話題を振ることはせず、共感的に話を聞く姿勢で対応し、患者様本位のコミュニケーションを取るように心がけています。何回も同じ話を聞いてしまうことがあっても「この話は前にも聞いたことがありましたね」といえることが大事であり、プライドが勝って覚えているふりをしてしまっては信頼を失うことに繋がるので注意しています。利用者の個人情報を知ることになりますが、守秘義務の観点から他人に話すことはないようにしています。 4 生徒からの質問     Q.:理療科在学中はいつも何時間ぐらい勉強していましたか。  A.:平日は1・2時間、テスト前は3・4時間程度していました。長期休みには覚えるのに時間のかかる経穴等を勉強していました。  理療科に入学する前は事務の仕事をしていましたが自分には向いておらず、視力が下がり仕方なく入学し勉強をすることになったのですが、現在は人の役に立つやりがいのあるマッサージの仕事を天職だと思っています。 【終わりに】  進路指導部では今後も、多くの諸先輩方からの講話の機会を確保し、皆様への情報保障に努めてまいります。進路に関してお聞きになりたいことがございましたら、各担任を通じて、遠慮無くご連絡ください。