進路便り 第4号     令和5年(2023年)2月24日発行        熊本県立盲学校            進路指導部                      本号では、令和4年10月28日(金)に行われました、高等部進路学習会(先輩を囲む会)の講話内容についてご紹介します。講師は、本校専攻科を平成26年度に卒業され、現在株式会社キュアに勤めておられる黒川和彦先生でした。 1 専攻科での学習について     黒川先生は、これまで視覚障がいに対する支援を受けたことがなく、専攻科で初めて拡大文字などの配慮により、自分の目で文字をはっきり読むことができ、学習できる喜びを感じ、今までで一番勉強ができたことに感謝されていました。また、スタントマンをしているときの体調管理のしかた、食肉を捌く仕事などの過去の様々な経験が、専攻科でのあん摩の技術習得や解剖学の学習に役立ったと話されました。  361個ある経穴(つぼ)を覚えることは難しく、通学中に暗唱したり、経穴早読み大会を計画し競い合ったりして覚えたことなど工夫して学習することの大切さも話していただきました。 2 マッサージの仕事について   1.阿蘇マッサージ療院(阿蘇市赤水)  熊本地震以前に勤務されていた阿蘇マッサージ療院では、治療院に来られる患者さんの施術の他、ホテルへの出張マッサージ、病気による外出が難しい高齢者を対象にした訪問マッサージなどの業務をされていました。  務め始めた頃は、マッサージ施術を行って4千円〜6千円の治療費をいただくときに、金額に見合った施術が行えたのか不安だったそうです。しかし、徐々に患者さんから指名が増えたことで、自信を持てるようになったそうです。また、患者さんは、農家の人や元気な高齢者で、体重を乗せてしっかり押してほしいという方が多く、力が弱いと患者さんに満足してもらえないので、強く押せる必要性を感じたと話されました。 2.株式会社キュア(熊本市中央区新屋敷)  現在勤められている訪問マッサージのキュアサポートでは、視覚障がいのあるマッサージ師に支援員がつき、車による送迎、施術報告書作成の支援、移動の介助などの視覚的なサポートが行われ、安心して働けています。1人30分の施術を1日に9・10人程度行うことになっており、入社後は、しばらくの間、先輩施術者に同行し、施術方法を学んだり高齢者の対応の仕方などを学ぶ研修があることなど話されました。  利用者の施術を行う前には、ペースメーカーの部位、人工透析のシャントの部位、重篤な浮腫の部位など、施術を行う上で注意すべき点を確認すること。また、胃ろう患者はあおむけで施術すること。脳卒中片麻痺患者は麻痺側を下にしないことなど、学校で学んではいたが漠然としていた内容を実体験する中で、確実な知識や技術になり、このことが、効果的な施術方法や良い利用者対応につながることを話されました。 3 生徒からの質問    Q.:訪問マッサージをされていて困ったことがあるか。  A.気分の落ち込みからネガティブな発言をしてしまう方への適切な対応、認知症の方に安心していただくための対応、自身が知らない病気への対応など、今でも困ることばかりだけれど、さまざまな経験を積むことで、徐々に自信を持って施術ができるようになってきました。  ※訪問マッサージとは、  寝たきりや歩行困難な方を対象に、国家資格を持ったマッサージ師が在宅や施設に訪問し、身体機能等の向上・維持を目的として施術を行うものです。利用するには医師の同意書が必要となり、医療保険が適応となるので多くの利用者は1割負担で施術が受けられます。   【終わりに】  障がいを物ともせずに、得意なことを伸ばしつつ、どんな環境でも楽しく前向きに生きてこられた黒川先生から今回学んだことは、国家試験を最終目標にするのではなく、在学中から将来を見据えて努力を続け、卒業後もなお前進し続けようとする前向きな姿勢です。   進路指導部では今後も、多くの諸先輩方からの講話の機会を確保し、皆様への情報保障に努めてまいります。進路に関してお聞きになりたいことがございましたら、各担任を通じて、遠慮無くご連絡ください。