進路便り 第1号   令和4年(2022年)11月11日発行                 熊本県立盲学校 進路指導部  進路指導部では、夏期休業中に「保護者施設見学会」を実施し、3つの事業所を見学しました。そこで得ることができた情報について、進路便りで詳しくご紹介していきたいと思います。まず、本号では、東区長嶺南にある「社会福祉法人 くまもと障害者労働センター」(通称「おれんじ村」)についてご紹介します。 1 おれんじ村創設経緯     「働きたい」という重度の障がい当事者の強い思いをきっかけに創設されたこの事業所は、水俣の無農薬甘夏ミカンの仕入れ・販売を手がけていたことから「おれんじ村」と命名されました。その後、事業の拡大とともに、1985年には、無認可共同作業所「くまもと『障害者』労働センター」となり、2011年、現在の多機能型事業所へ移行、その後、事業内容が徐々に拡大されています。 2  理念と自立に向けて    通称「おれんじ村」の理念は、パンフレットに次のように明記されています。活動のテーマは「労働」です。私たちの考える労働とは、仕事を通して「自分らしさ」を発揮し、地域社会に貢献し、生活の糧を得るということです。それは障がいのあるなしにかかわらず、誰もが人間らしく生きていくための権利なのです。(以上、パンフレットより一部抜粋)  見学の説明の中では、「自立すること」「共に働くこと」「共に生きていくこと」を大切にしていると伺いました。こちらで得られる工賃と障害年金で、自立して暮らしていけるようにと考えられています。なお、通所の際の送迎サービスはなく、利用者は、徒歩・電動車椅子、バス、家庭の送迎などを使って通所しておられます。 3 人間関係、物事の決め方     利用者と支援者という考えはなく、共に教え合って、高め合っていく、一緒に働く仲間と考えられています。「手助けすることはあっても、それは当たり前のこと」と考えておられるようです。ただ、制度上は職員・利用者に分類する必要がありますので、職員をスタッフ、利用者をメンバーと呼んでいるとのことでした。  月に一度、職員や利用者が全員参加するミーティングを行い、一人一人の意見を聞いて、商品のアイディア、給料、ボーナス、スタッフ・メンバーの採用など、どんなことでも決めるようにしておられます。「自分たちのことは自分たちで決める」ことを主軸とし、個々人の主体的な関わりを重視しておられるとのことでした。 4 事業内容    @ 訪問・イベント販売 いろいろなところに出かけ、自社製品や仕入れた商品を販売しておられます。車3台で熊本すべての地域に行くことができるそうです。現在は、コロナ禍のため、1ルートに絞られていて、訪問を断られることも多くなっているとのことでした。ちなみに、学校で使用している再生紙を利用したトイレットペーパーは、「おれんじ村」から購入しています。 A 食品製造 油菓子・焼き菓子 サーターアンダギー、シフォンケーキ、焼きかりんとうなどを手作りしておられます。材料には、九州産の小麦や喜界島の黒砂糖、産直たまごなど、こだわりの材料を使用しておられます。最近プリントクッキーができる機械を導入されました。「記念行事などの際には、是非、ご利用ください!」とのことでした。(1個からでも OK。1枚150円〜) B  おれんじカフェ 現在は、お弁当販売を中心に運営し ておられます。熊本県産減農薬有機 栽培米使用、野菜を117g以上使 用した日替わり弁当(450円)や 1日10食限定の「フジイのから揚 げ」コラボ弁当、その他1日5食限定のキーマカレーやナポリタン、ネギ塩豚丼、オムライスなどがあります。「お気軽に一個からご注文ください!」とのことでした。本校でも夏休みを利用して、日替わり弁当を注文しましたが、とてもおいしくいただきました。 C  交流・啓発  施設長の倉田さんが「障がいとは何だろう」「合理的配慮」などのテーマで地域の小中学校を訪問し、講話を行っておられます。また、ミーティングで「障がいがあって嫌だったことはなんだろう」という話をしたときに出た、「車椅子だから映画を一番前の席でしか見られない。」「球場では、おんぶしてもらわないと入れない。」「ジェットコースターに乗れない。」などの体験談を劇にするために劇団を立ち上げ、人権フェスタや様々な小中学校で上演してとても評判がよかったそうです。(現在、劇団活動は休止中。) D 事務部・IT部 事務部では売り上げの管理、電話応対、納品書などの書類作成、日々の記録などを行われています。 IT部では、名刺やチラシなどの印刷物の受注・作成や機関誌「WITH(ウィズ)」の発行、ネット配信などを行われています。 E 公益事業 地域で生きる、一人暮らしをするという目標を手伝うために「共生ホーム元気」を設立されています。設立当初は、女性棟のみでしたが、今年4月に男性棟が完成したそうです。 通常のグループホームには、世話人がいますが、毎日の日課が固定されたり、個人の自由な時間が制限されてしまう側面があります。そうした状況を少しでも緩和し、個々の利用者が自立した自由な生活を送れるように、共生ホームでは、各人がヘルパーなどの福祉サービスを利用しながら自身の生活を作り上げていけるような仕組みを作っておられるとのことでした。 5 その他    就労継続支援B型と生活介護がありますが、分けているのは制度上のこと、みんな一緒に仕事をしているので、工賃も同じ時給380円(令和4年8月現在)だそうです。今のところ視覚障害者はいませんが、「入るとなれば、みんなで話し合いながら本人に合った仕事を見つけていける」とのことでした。  利用にあたって「ここまでできた方がよい」という能力などの基準は設けておらず、「自立」「働く意欲」「お互いに危険がない」ということを条件にしておられるそうです。  現在、スタッフ・メンバー合わせて60名ほどですが、高齢化に伴い、なかなか仕事に出てこられない方もおられるようです。しかし、本人から「やめます」と言われるまで、職場環境を整えることで働くことを続けられるように努めているということでした。今後の受け入れについて伺ったところ、製造やお弁当の仕込みの人数を増やす方向で考えておられるとのことでした。 【終わりに】  今回の見学で、「おれんじ村」が「自立」「働くこと」を大切にし、熱心に活動しておられることがよく分かりました。  進路指導部では今後も情報発信に努めてまいります。引き続き、どうぞよろしくお願い致します。