進路便り 第2号 令和3年(2021年)11月26日発行 熊本県立盲学校 進路指導部                     1 進路指導部より  前号では、マッサージ・鍼灸の国家資格を取得するための学科(理療科)について、その特徴や就職先等を紹介させていただきました。本号では、熊本以外の盲学校に設置された学科を取り上げ、その特徴や就職の状況等をご紹介いたします。 2 卒業後の進路解説A 「熊本以外の盲学校に設置された学科のご紹介」 【理学療法学科】  理学療法学科は、大阪南視覚支援学校や筑波大学附属視覚特別支援学校(東京)に設置されており、3年間の課程を修了し、国家試験に合格すると、理学療法士という資格を得ることができます。その業務は病院や介護施設、障害者施設におけるリハビリであり、整形外科的な疾患だけでなく、脳卒中後遺症、脳性麻痺、交通事故による手足の切断、スポーツ事故に伴う脊髄損傷、心臓病や肺の病気に対する体力維持訓練など、多岐にわたります。マッサージ師・鍼灸師よりも高度な医学知識を学ぶ必要があり、合格率は79%程度と、難易度は少々高いのですが、医療現場には必須の人材であり、診療報酬(医療行為に対して病院に支払われる金額)もそれなりに高いので、求人数・給料面ではマッサージ・鍼灸師に比べて若干有利です。職務を行うに当たっては、患者さんの動作や姿勢等を詳細に観察する必要があり、神経を使うという性質上、全盲者よりも弱視者の方が多い状況にあります。 【音楽科】  音楽科は、京都府立盲学校に設置されており、洋楽(ピアノ・管弦楽器・声楽・作曲等)や、邦楽(箏・三弦等)の知識や技術を学ぶことができます。「小さなころから習い事等で音楽に触れていた」という方が入学する場合が多く、そうした人が音楽に関する理論や演奏技術を深めることに向いていますが、理療科や理学療法科のように、資格取得を目指す学科ではありません。卒業後は、一般の音楽大学へ進学して音楽教員や音楽教室の講師になる者、自身で音楽活動を行いつつCDを発売する方などがいますが、就職にあたっては個人の技術が重要視されますので、安定した収入を得ることが難しいといった一面もあるようです。 ※筑波大学附属視覚特別支援学校(東京)にも同学科が設置されていますが、令和5年度より新規入学者の受け入れが停止されることとなりました。   【専攻科普通科】 専攻科普通科は京都府立盲学校に設置されており、大学進学を目指す視覚障がい者に対し、1年間、志望校に応じた授業や模擬試験等を実施しています。盲学校普通科からの大学進学に不合格であった者や、理療科を卒業して大学進学を目指したいと考える者等を受け入れ、集中的な指導が行われています。直接職業につながるわけではありませんが、大学に合格することで、盲学校では学ぶことのできないさまざまな知識を得ることができるという意味で、大変有用です。なお、視覚障がい者の入学が多い大学の学科としては、福祉・心理・教育・文学(主に英語)等です。大学卒業後の職業としては、福祉相談員・学校教員・図書館職員・通訳者・一般事務等があります。   【その他、理療科卒業生を対象とした学科】 「理療科を卒業して国家試験にも合格したけれど、自分の技術に自信が持てない」、「もっと高度な治療技術を身につけたい」というニーズを満たすために、福岡高等視覚支援学校や京都府立盲学校は、研修科を設置しています。本学科では、臨床実習や技術向上に特化した指導を集中的に受けることができるため、将来的に開業したいと考える生徒等にも大変有用です。 また、「卒業はしたけれど国家試験に不合格だった」という生徒のために、福岡高等視覚支援学校は「再研修科」を設置しています。学校を離れての再受験では、合格率が極端に下がってしまうことが知られていますが、本学科において再受験に特化した授業を受けることで、多くの生徒が合格の結果を得ています。 【終わりに】  このように、熊本以外の盲学校には、さまざまな学科が設置されており、各人の進路に応じてこれらの学科を受験することができます。なお、各校には寄宿舎が設置されているため、本校と同様に食事の提供や生活上のサポートを受けることが可能です。 幼・小学部等の保護者の皆さんにとっては、進路選択はまだまだ先のお話かもしれませんが、「こんな選択肢もあるのだ」ということを知っておいていただければ、お子様とともに進路を考える材料になるはずです。進路指導部では今後もさまざまな進路情報の提供に努めて参ります。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。 3 その他の進路情報 「見えない方、見えにくい方のためのニポラチャンネル」の紹介  視覚障がい者が独立し、社会で働くためには、単独歩行・料理・文書の閲覧や記入・パソコンやスマートフォンの操作等、さまざまな技術を身につけなければなりません。これらの指導は盲学校でも行っていますが、幼児児童生徒が多くの時間を過ごすご家庭内においても訓練を行っていただければ、さらに高い自立を達成することが可能となります。視覚障がい者情報提供施設である「日本ライトハウス」が解説した本Youtubeチャンネルでは、視覚障がい者向けの支援機器や便利グッズの使い方・生活上の工夫といった、さまざまな情報を配信しています。添付のチラシより本チャンネルにアクセスの上、いろいろな情報に触れていただく中で、便利だと感じたものについては積極的に生活に取り入れていただければ幸いです。