進路便り 第2号 平成29年12月15日発行 熊本県立盲学校 進路指導部                      高等部では毎年、社会で活躍しておられる卒業生をお迎えし、職務の内容や進路選択における助言などをいただく『先輩を囲む会』を開催しています。今年度は、理療科を卒業した二人の先輩をお迎えし、お話を伺うことができました。本号では、その内容をお伝えします。 ■講師プロフィール @池田敏雄先生(昭和59年度専攻科理療科卒業) 市内の病院に勤務していたが、視力の急激な低下により退職。1年間のリハビリを経て実家で開業し、2年半ほど営業を行った。その後、より高い技術を身に着けるために、治療院へ就職。3年7か月の修業を経て、再び開業。経営安定を機に持家を購入し、治療院を開設。 A樋口知子先生(平成26年度専攻科理療科卒業) 盲学校入学前は栄養士として高齢者施設などで勤務。心身両面で困っている人を支えたいとの思いから、ヘルスキーパーを志すようになった。現在は株式会社TMJにて、契約社員として勤務。同社に務める社員に対して、20分間のクイックマッサージを提供している。患者層は20〜60歳代で、99%が女性。 ■講師の先生方からのメッセージ (1)池田先生からのメッセージ 1対1で患者さんと接する仕事なので、話題の引き出しをできるだけ増やし、どんな方とでも話を合わせられる柔軟性を持つことが必要です。問診は患者さんが施術室に入った時から、世間話の延長で自然に聴取し、話しやすい雰囲気を作るように心がけています。また、普段から治療院を清潔に保ち、施術者自身も身なり・服装に留意して、患者さんに安心感を得ていただくことにも尽力しています。見えないからこそ、真摯に経営を行っているのだということを理解していただくことが必要です。 (2)樋口先生からのメッセージ 私たちが患者にとっての良き相談相手になる可能性を秘めています。体調面の不安を周囲になかなか相談できないといった訴えや、症状を改善するために、病院のどの科を受診すればよいかわからないといった訴えを聞くこともあります。また、さまざまな心の悩みを抱える方も増えていて、ちょっとしたことでも相談できる場所を提供することが必要になっています。 生徒の中には、視力の低下により、仕方なく盲学校に入学する人もいると思いますが、そうした方は、なるべく早期に夢や目標を持ってほしいと思います。目的がはっきりと定まれば、それを実現するための学習にも身が入ると思います。 ■質疑応答 生徒の皆さんからは、多くの質問がありました。いくつか紹介します。 質問@:学生の頃に抱いていた働くイメージと、実際に働いてみてのイメージの間にギャップはあったか? 池田先生:もともとマッサージをすることが好きだったので、ギャップを感じて落ち込むようなことはなかった。社会に出て気付いたのは、先輩とのかかわりの重要性だった。特に、一緒に飲みに行くことで、普段聞けない治療技術などを聞くことができた。改めてコミュニケーションの重要性を認識した。 樋口先生:学生時代は、給料が安い・無資格者に仕事を奪われているといった悪い噂しか入らなかったが、それは自分自身が情報を収集しきれていなかったと思います。ヘルスキーパーに興味を持ってからは学習への意欲が高まり、卒業して患者さんと接する中で、より仕事を楽しいものとして認識することができるようになった。 質問A:収入はどれくらいですか? 池田先生:病院勤務の際の初任給は手取りで13万程度だった。開業後、経営が安定した今では、1日に少なくとも4名、多い時には10名の患者さんに施術を行う。治療料金は3500円である。 樋口先生:勤務形態は半年区切りの契約社員であるが、会社から契約を打ち切ることはないと言われている。時給1200円であり、日曜・祝日が休みなので祝日が多い月は月給が減少するが、多い時で手取り18万程度である。 ■終わりに 今回の『先輩を囲む会』は、進路について悩む多くの生徒にとって、とても良い機会になったようです。1時間15分という限られた時間でしたので、多くの生徒から「もっと質問したかった」、「もっとじっくりとお話を聞きたかった」という意見も聞かれました。将来の進路を考えるよい機会になったと思います。