校長ブログ

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2024/04/23(57)3回目の校歌のお話

 新学期が始まって2週間が過ぎました。この間、新しいクラスでの生活や気温の寒暖差、生徒の体調が心配でした。先週はほとんど学校にいなかったので、生徒の様子が分からず、もどかしさを感じていました。全体的には無事に学校生活を送っているように見えますが、一人一人をしっかりと見守る必要性を感じています。26日(金)は体育大会、今日から学年練習が始まりました。短い練習期間ですが、それだけに集中して取り組んでほしいものです。

 さて、卒業式の式辞の中で本校の校歌についてのお話をしました(校長ブログ49)。実は、この話には続きがあります。作詞をされた渋谷 敦(しぶや あつし)先生はこうおっしゃっています。「歌は時代とともに生き、時代とともに消長する。やがてこの歌詞が古めかしく、なじまないものになったとき、この歌はいつでも改正され、新しい歌にとって代られても構わないと思う。その踏台(ふみだい)となる日まで、今の願望と今の喜びが、声高らかに歌いつがれていったら、草創時代に生きた私たちの証(あかし)として十分であろう。そんな、ささやかな、一途な願いが、この歌詞にはこめられている。」 私はこれを読んだ時に、現状に留まらない進取の気概を感じました。同時に、先人の足跡を大切にしながら、世界とつながって生きていくことこそが、地球規模の課題解決のために必要であり、そのことは不変のものであるという渋谷先生の確固たる信念を感じます。校歌誕生から50年。体育大会当日、「歌おう!! みんなの校歌を」

▲学年練習はじまりました

▲歌おう!みんなの校歌を 

2024/04/17 (56) 足の痛み

 先週4月8日、左足の甲〜足首〜土踏まずにかけて激痛が走りました。年に数回は発症するのですが、今回の痛みはいつもよりもひどかったような気がしました。8日は始業式、入学式。テーピングをし、鎮痛剤を飲んで式に臨みました。幸い2・3年生や新入生に大きな迷惑をかけることはなかったようで一安心。翌日も杖をつきながら勤務しました。痛みが出るたびに、学校(本校だけでなく、一般的な学校)の施設が人に優しくないことを痛感します。校内に入るためには、一部スロープはあるものの、基本的には段差を越えなければなりません。どこに行くにも段差や階段だらけ。本校は手すりなどが割と多く付けられていますが、車椅子や松葉づえをついての移動はかなり難しいと思います。普段気にならないちょっとした段差も、体に痛みがあると、高い壁のように感じられます。そんな時に生徒から「大丈夫ですか」「早くよくなってください」「危ないから気を付けてください」と声をかけられました。その言葉だけで痛みが和らぎました。

 コロナ禍の中、一人一台端末が進み、オンライン会議や在宅での仕事が当たり前のように行われています。2年前、本当ならばつくば市に行って受ける研修を、学校でオンラインによって受講しました。移動時間を考えるとずいぶん助かりました。その一方で、私はある障がい者の方の次の言葉にはっとさせられました。「障がい者があれだけテレワークやオンライン授業を熱望したのに、あれだけ声をあげたのに、ちっとも耳を傾けてもらえなかった。ところがいざ「自分」たちが同じような困難に直面したらこれだけスピーディーに、これだけダイナミックに世の中変わっていくんだなって、やっぱり悔しいですよ。」

 いろんな出来事が自分事になってはじめて人は考え、行動します。しかし、困りごとがある人の立場にたって、その思いを自分事とし、他者のために行動することによって、少しずつでしょうが、環境がよい方向に変わっていくと思います。学校の施設を一気に改修することは難しいです。しかし、学校の中で困っている人を見かけたら、自分事としてそっと寄り添い、優しく、当たり前のように支える雰囲気をつくっていきたいと思います。

▲ちょっとした段差もつらい

▲家庭科室前の階段の手すり

▲事務室前のスロープ

▲正面玄関のスロープ

2024/04/09(55)藤の花

 今日4月9日(火)は、昨日の始業式・入学式とはうって変わって透きとおるような青空。午前中、2・3年生は課題考査、1年生はオリエンテーション、午後から対面式、部活動紹介と続きました。1年生の前でお話をさせていただきましたが、素晴らしい礼法所作、きらきら光る表情、真剣に聴く態度、私も気が引き締まりました。

 校長室横の庭に藤の花が咲きました。私は恥ずかしながら、藤の花は芽吹いて、少しずつつぼみが開いて、花が咲くのだろうと思っていました。ところが、観察してみると、様々な変容を経て、美しい紫の花となることが分かりました。

3月1日、立派になって卒業した生徒たち。3年間、楽しいことも、つらいこともあったことでしょうが、色々な困難を乗り越えて大きく成長しました。1日1日成長し、大輪の花を咲かせたのです。これから、子供たちの、毎日の少しずつの成長を見逃さないよう、伴走していきたいものです。

▲3月7日「藤の花」

▲4月2日「藤の花」

 ▲4月9日「藤の花」①

▲4月9日「藤の花」②

▲4月9日「藤の花」③

2024/04/08(54) 熊本県立球磨中央高等学校第8回入学式 式辞(抄)

 ただ今、入学を許可しました104名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。

晴れて本校への入学を果たされた皆さんを、職員、在校生一同、心から祝福し、歓迎します。今、皆さんは入学の喜びとともに、新しく始まる学校生活への大きな期待に胸をふくらませていることと思います。今の気持ちを大切にして、志を高く掲げ、それぞれの夢の実現に向けて、これからの学校生活を充実させてください。

本校は、平成29年4月に開校し、今年で8年目を迎えます。球磨商業高等学校の伝統を引き継ぎながらも、新たな専門的で探究的な商業に関する専門的な学習活動を行う商業科及び情報処理科、地域の課題を発見し、未来創造を担う人材を育成する地域未来探究科からなり、皆さん方は八期生となります。

 商業科や情報処理科では、実践的・探究的な学習活動を通して、「新たな価値の創出に向け、探求・創造・実行することができる人材」、「経済発展と社会的課題の解決を両立できる人材」を育成し、地域産業をはじめ、経済社会の健全で持続可能な発展を担うための資質・能力を育成します。

 地域未来探求科では、地域への愛情を深めた、将来の地域社会の発展を担う地域リーダー育成をします。学びは本来

楽しい活動です。どうか専門的で、創造的な各科の学びの中で学ぶおもしろさを味わってください。

さて、本校の教育方針は、「全ての人の幸福のために、倫理的に正しく、規律ある判断力をもって責任ある行動がとれる人間の育成を目指す」です。世界では戦争やテロが至る所で起こり、地球沸騰化や大規模な自然災害、エネルギーや水、食糧の枯渇など、本来ならば地球人としてこうした大きな問題に立ち向かわなければならないはずなのに、自国第一主義と分断、偏見と暴力、富の集中と貧困がその解決を阻んでいます。また、SNSの急速な発達は、私たちの生活を便利にする一方で、自分に都合のいい情報だけを取り込み、平気で嘘をつき、人をだまし、人の心を傷つけています。

熊本県は、人吉球磨は、熊本地震、豪雨災害と本当につらい思いをしてきました。そして人々はその苦しみに正面から立ち向かい復旧・復興にまい進しています。だからこそ、他者のことを自分事として捉えることの大切さ、一人一人の力を合わせることの大切さ、人を思いやることの大切さを知っています。本校では教育方針に基づき、自分自身の、他者の、地域の、あらゆる人々の幸せのために行動する人材を育てていきます。現在、本校の学校生活はコロナ禍以前の状況に戻ってきました。どうか、クラスメート、先輩、先生方とともに充実した毎日を過ごし、皆さんの無限の可能性を伸ばしてください。

そして、入学式にあたり、私から皆さんにお願いがあります。

「いってきます」「いってらっしゃい」「ただいま」「お帰りなさい」、この当たり前の、本当に当たり前の会話が、当たり前にかわされてほしい。この言葉が聞こえるということは、今日一日を生きている証です。皆さんに期待することはたくさんありますが、一教師としての、一人の大人としての願いは、健康であってほしい、生きて欲しい、ただその願いだけです。皆さんはたくさんの人から愛されています。そして、この球磨中央高校でたくさんの人と出逢い、支え、支え合ってください。自分を大切にし、周りの人を大切にし、毎日を過ごしてください。当たり前の幸せを土台にして、3年間をかけて自分の未来を開拓してください。

この3月に卒業した生徒が「私たちの未来のために」と題した作文を書き、警察庁長官賞を受賞しました。その作文の終わりには「明日、当たり前の日常が当たり前に来るとは限らない。もしかしたら、明日、当たり前が変わるかもしれない。そのことを胸に刻んで、一日一日を大切に自分の行動に責任をもってこれからも生活していきたい。」と書かれています。何気ない日常の一日一日があることを幸せと思い、大切に生きてください。

新入生の皆さんの輝ける未来を祈念いたしまして式辞といたします。

 令和六年四月八日 

   熊本県立球磨中央高等学校長 松下 宏則

▲入学おめでとうございます。

▲入学式の準備

24/03/28(53)転退任式

 今日3月28日(木)は転退任式。3月は旅立ちの時期、それはお別れの時。今年度末の異動で10名の先生が本校を離れます。1年間同じ職場で働いた仲間、新米校長のいたらなさにめげることなく、それぞれの持ち場で力を発揮していただきました。たった1年、しかし私にとっては大切な1年でした。教員のリーダーとして学校経営に尽力していただいた先生、生徒の発表や商品開発の指導はもちろんのこと、学校の運営に大きな功績があった先生、優しく丁寧に生徒の悩みを受け止め、生徒のよき理解者であった先生、防災教育の公開授業でカレーを袋で作り、参観者を驚かせた先生、忙しい校務を果たしながらも、球磨中央百貨店のポスターや映像づくりで高い技術力を見せた先生、レベルが高く元気が出る授業を展開するとともに、生徒の進路目標実現のため力を尽くした先生、先進的な授業や部活動指導、インスタグラムの即時更新など色々な場面で活躍した先生、予算や施設管理など、生徒の目にはなかなか見えないのですが、重要な事務の仕事を正確にこなした先生、フットワークが軽く、勉強熱心、生徒への声掛けを常に忘れなかった先生、豊富な経験を持ち、生徒だけではなく私たち教員にとっても頼りになる先生。私は、先生方と出会えて本当に幸せです。そして心から感謝しています。どこの職場でも活躍できる先生ばかり。それぞれの職場で大きな花を咲かせてください。「本当に有難うございました!」「ご自身もご家族も健康第一で!」、そして「いってらっしゃい!」

花壇の花のお見送り

 ▲花壇の花のお見送り

正門を越えて

 ▲正門を越えて

旅立ち

 ▲旅立ち

24/03/22(52)3学期終業式でお話ししたこと

 まずは、みなさんにお礼を言わせてください。3月1日、本当に素晴らしい卒業式でした。3年生だけでなく、2年生がきちんとした態度で臨んだからです。1年生は式には参加していませんが、前日の表彰式の態度が本当に立派でした。1年後、2年後、一緒に感動的な卒業式を創りたいと心から思いました。
 3学期終業式にあたり、1年前、自分が何をしていたのか振り返ってみました。去年、前任校の終業式が3月24日、そしてその日は、引継ぎのために、私が初めて球磨中央高校を訪ねた日でもありました。本山校長先生が球磨中央高校生について熱く語られたことを、今でも鮮明に覚えています。それから1年、学校行事で見せる真剣なまなざしと笑顔、授業や部活動にまじめに取り組む姿、日々の生活での元気な声、どれだけ皆さんから元気をいただいたか分かりません。私は皆さんとの出会いを心から感謝し、そして幸せを感じています。私は、人との縁を何よりも大切にしています。4月の始業式で紹介した言葉、
 「人間は一生のうち逢うべき人には必ず逢える。しかも一瞬早過ぎず、一瞬遅過ぎない時に」
 出逢った瞬間が何かの縁だと思います。みなさん、どうかこれまで出逢った人との縁、この1年で出逢った人との縁、これから出逢う人との縁を大切にしてください。
 さて、私が初めて3年生の担任をしたのが今から28年前。私よりはるかに豊かな感性と才能をもった45名。キラキラと輝いている生徒たち。私は一瞬で3年7組が好きになりました。この生徒たちの夢を叶えるため、自分に厳しくし全力を尽くそうと、教室に自分に対する戒めの言葉を書いて貼りました。同時に、これから多くの困難に直面していく45名に対しての贈る言葉としました。
 「自律」 私はもともとなまけものです。なまけものの自分をしっかりとコントロールするために、時間を守る、先のことを考えて行動する、規則正しい生活を送ることを心掛けています。生徒にも、目標を達成するために、自分に厳しくあってほしいと願いました。
 「努力」 私にはこれといった取柄はありません。だから、何かを達成しようとするためには、勉強し続けるしかありません。せっかくの才能を持った生徒たち。その力を開花させるために、自分で自分を鍛え、前に進んでほしいと願いました。
 「想いやり」 私はこれまで、たくさんの人たちに支えられ、助けられてきました。つらいとき、泣きたいとき、お互いに励ましあえるクラスであってほしい。一人の喜びがクラスの喜びになってほしいと願いました。
 この「自律」「努力」「想いやり」は、今でも自分の戒めの言葉です。そして、今年は、本校卒業生に贈る言葉としました。皆さんに贈る言葉としました。初めての校長として皆さんに出会いました。皆さんのために自分に厳しくありたいと思いました。これから夢を達成するために、皆さんには困難を乗り越えていってほしいと願い、贈る言葉としました。初めて生徒の前で決意を述べてから28年、この言葉を再び託せる皆さんたちに出会うことができました。
 新しいステージは目の前です。新たな球磨中央高校の歴史をつくる主役は皆さんたちです。どうか、その覚悟をもって春休みの間、力をためてください。4月8日(月)キラキラ、ワクワクしている皆さんと会える日を楽しみにしています。

皆さんの進級をチューリップも喜んでいます

 ▲皆さんの進級をチューリップも喜んでいます

贈る言葉

 ▲贈る言葉

24/03/13(51)にんじんの葉、だいこんの葉

 今年に入ってから、にんじんの葉とだいこんの葉を栽培(?)しています。料理で余ったにんじんとだいこんです。だいこんの葉は料理に使いますので、ぎりぎりまで葉を切った切れ端を栽培しています。現在、私の部屋には、にんじんの葉とだいこんの葉3きょうだいがいます。以前、食べるために野菜の切れ端を栽培するという記事がありましたが、私の場合は、どちらかというと、観賞用に育てています。わずかな実の栄養と水で育っているのでしょうか。

 毎日水を換え、受け皿を洗うなど、大切に育てています。球磨中央百貨店で購入した赤いサボテンとも仲がいいみたいです。気が付けば葉っぱに「おはよう」「元気?」「おやすみ」などと声掛けをしていて、はたから見るとちょっと滑けいだと思います。学校の花壇の花もそうですが、優しい気持ちで大切に育てると、すくすくと成長する気がします。以前、植物は人間の気持ちが分かるという内容の本を読んだことがありますが、その真偽は別にして、そう思いたくなります。わが家のにんじんの葉とだいこんの葉、私にこころの健康を与えてくれています。

チューリップが咲きました

 ▲チューリップが咲きました

ムスカリも育っています

 ▲ムスカリも育っています

わが家のにんじんとだいこんの葉

 ▲わが家のにんじんとだいこんの葉

24/03/07(50)少しずつ

 素晴らしい卒業式。卒業生と在校生が一緒になってつくった卒業式。3月1日、私は誇らしい気持ちになりました。卒業式が終わったと思ったら高校入試。後期(一般)選抜が3月5日・6日に実施されました。卒業生が本校の歴史を積み上げて旅立つと同時に、新しい風が吹いてくる。学校はこうやって少しずつ成長していくものだと実感しています。

 暖かい日があったかと思ったら、次の日は寒くなる。寒暖差が大きく、体調を崩している人もいるかもしれません。私もその一人です。でも春は少しずつ近づいています。折にふれて紹介している事務室横の花壇のチューリップが大きくなりました。ムスカリのかわいい花も咲いています。木々の枝は芽吹いています。今春、どのような彩りが見られるのでしょうか。

 本校は、遠方から通学してくる生徒も多く、また交通手段が限られている事から、送迎のための車の校内乗り入れができます。保護者の方がルールを守ってくださるので、現在まで事故等は起きていません。先日、さらなる安全環境づくりのため、学校技師の方が一時停止「止まれ」の文字を白いペンキで書き、標識を立ててくれました。生徒の安全確保は私たちの一番大切な使命です。そのために出来ることを少しずつ重ねていこうと思います。

チューリップ、楽しみです

 ▲チューリップ、楽しみです

ムスカリの花

 ▲ムスカリの花

本校のしだれ桜

 ▲本校のしだれ桜

「一時停止」の標識

 ▲「一時停止」の標識

一時停止「止まれ」

 ▲一時停止「止まれ」

24/03/01(49)熊本県立球磨中央高等学校第五回卒業証書授与式 式辞(抄)

 令和2年2月27日、全国の小中高等学校の臨時休業が発表された時、皆さんは中学2年生、不安のなか、中学3年生の春を迎えようとしていました。追い打ちをかけるように、7月には熊本豪雨、甚大な被害を人吉・球磨の地にもたらしました。新型コロナウイルス感染症が五類感染症となったとは言え、いまだ感染のリスクはすぐ側にあります。また、多くの方々の努力によって災害からの復旧が進んでいますが、復興への道のりはまだまだ遠い状況にあります。今年1月1日に能登半島地震が起こりました。お亡くなりになられた方々へ謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に心からのお見舞いを申し上げます。被害状況や被災者の方々の様子を見ていると、とても他人事には思えず、共に支え合っていこうという気持ちでいっぱいになります。

 先行きがまったく見えない状況のなか、皆さんはどのような日々を送ってきたのでしょうか。令和3年4月8日の入学式、希望と不安はどちらが大きかったのでしょうか? 令和4年、2年生となった皆さんは、中堅学年として学校内外でどのような活躍を見せていたのでしょうか。 令和5年4月10日、初めて皆さんに出会ったとき、そうした思いが次々とこみ上げてきました。そして皆さんの一日一日の生活を間近で見ていくうちに、1年生の時、2年生の時、様々な不安や悩み、苦労もあったでしょうが、それらを乗り越え、立派に育ってきたことを確信しました。体育大会、一所懸命に競技に取り組み、友達を大きな声で応援する姿、弾けんばかりのダンスで見せたかわいらしさと格好良さ、最後の写真撮影での達成感いっぱいの笑顔、こんなに楽しく、幸せな体育大会は初めてでした。
 10月、コロナ禍前と同じように開催した球磨中央百貨店。開店当日まで数々の苦労や失敗があったことでしょう。しかし、皆さんのおもてなしの心が前日の悪天候を追い払い、素晴らしい秋晴れの2日間をもたらし、実に3,500人ものお客様が来られました。この経験は何にも代えがたい、君たちの財産です。
 ほかにもたくさんの学校行事、部活動、検定試験に取り組んできました。一人一人が真剣に向き合い、一人一人が主人公となりました。この3年間で成長した皆さんは、予測困難な社会において、未来を切り拓く、私たちの希望の光なのです。

 さて、本校の校歌が作られて今年で50年になります。作詞した渋谷 敦(しぶや あつし)先生は、この校歌の歌詞について「校内に限らず、郷里の、日本の、世界の誰にでも愛され、いわば世界の友達とともに歌われるという遠大な願いを込めている。さらに「悠遠の光」と「雄渾の伝統」は日本や郷里の遠い長い縦の系譜(つながりのこと)であり、「今ぞ咲く」「今ぞ呼ぶ」の発想には、日本や世界と連帯する横の系列(結びつきのこと)」を織り込んだとおっしゃっています。先人たちが築いた伝統を受け継ぎながら、地域・日本・世界とつながる。まさに、本校が目指す地域のグローカル人財の育成がすでにこの校歌に刻まれていたのです。 私は自信をもって言います。本校の校歌に刻まれた理念こそが、皆さんの未来を照らす光なのです。
 さらに、倫理的に正しく、思いやりの心を持ち、責任ある行動をとる「誠実」、学び続け、伝統を大切にしながらも常に新しいことに挑戦する「進取」、他者を敬い、自分を大切にし、世界の平和を願う「友愛」、この本校校訓は、皆さんが目指す道を示す羅針盤なのです。球磨中央高校での3年間の学びを誇りにして、あらたな場所で活躍してください。

 そして、私から皆さんにお願いがあります。それは「命」を大切にしてくださいということです。皆さんはたくさんの人から愛されています。見返りなど関係なく、皆さんを愛し、支え続ける家族、苦楽を共にしてきた友人、身近で成長を見届けてきた本校職員、そのほかたくさんの人から愛されています。ここで、ある詩を紹介します。

 いろんなひとがいるけれども 今日一日やさしい心でいよう
 いろんなことがあるけれども 今日一日あかるい心でいよう
 この道は遠いけれども 今日一日すすもう
 何があっても大丈夫  今日一日笑顔でいよう

これは、重い病気と闘いながら必死に生きていらっしゃるある患者さんの詩です。自分のために、自分を愛してくれる人たちのために「命」を大切にしてください。一日一日を大切にしてください。これが私の最後のお願いです。
 私の大切な、大切な108名のみんな、輝く未来に向けて「いってらっしゃい!

       令和6年3月1日 熊本県立球磨中央高等学校 校長 松下 宏則

書道部からのメッセージ

 ▲書道部からのメッセージ

卒業式前日

 ▲卒業式前日

24/02/26(48)歴史を楽しむ②

 私の愛読書の1つに「熊本の石橋313」(熊本日日新聞社)があります。熊本県には多くの石橋があり、同書によると「全国にある石橋の半数が熊本に現存」しているそうです。この本は1998年(平成10年)が初版で、紹介されている313のうち、その後の災害で失われた石橋も少なくありません。川の大小にかかわらず橋を架けることは、往来や運送などの利便性を格段に向上させ、人々の生活を豊かなものとしました。石橋の建設に関わった石工(いしく)たちは、当時の最先端の技術を駆使しながら命がけで臨みました。石工たちの苦労、住民の希望が石橋の造形美の中にあらわれているようで魅了されてしまいます。この本では、人吉・球磨の石橋として17基が紹介されています。校長ブログでは相良村の橋谷橋と湯前町の下町橋を紹介しました。石橋に関心を持つと、ほかの石造物(せきぞうぶつ)にも感心を持つようになりました。五輪塔(ごりんとう)や宝篋印塔(ほうきょういんとう)、板碑(いたび)、六地蔵塔(ろくじぞうとう)が好きで、「石仏と石塔」(石井進・水藤真監修 山川出版社)を手に、県内を巡っていました。意識して歩くと、石造物にはよく出会います。例えば錦町ですと、土屋観音堂。本や地図、カメラ、野帳をバックに詰めて、道に迷いながら、目的の文化財を探し回っていた30歳代。見つけたときの達成感とともに、授業で生徒に紹介する楽しさも忘れられません。

ご紹介した本

 ▲ご紹介した本

下町橋(湯前町)現在修復工事中

 ▲下町橋(湯前町)現在修復工事中

土屋観音堂と石造物(錦町)

 ▲土屋観音堂と石造物(錦町)