徒然雑記帖

2019年4月の記事一覧

学校のピクトグラムとして相応しいのは?

 

 小学6年と中学3年を対象に、18日に行われた全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の問題が翌19日の新聞に載っていました。参加校は全ての国公立校と、約50%の私立校で、小6と中3合わせて212万人が同一日に検査を受けたと知り、センター試験の約55万人と比べいかに大規模な試験だったかと、驚きをもって記事を読んだところです。

 私、中学3年生を受け入れる高校の校長として、彼らがどういう問題を解いてきたのか知っておくことは必要だと思い、全ての問題に一通り目を通しました。

 

 やはり、初めて中3で導入された英語が印象的です。「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能をバランス良く身に付けて活用できるかを調べるため、自分の考えを英文で表現したり、話したりする問題など、高校入試よりも難しいのではと思いました。

 

 英語の問題、新聞では「話す」技能の問題は省略されていましたが、テレビニュースで試験の様子が放映されたので概要を知ることができました。マイクが付いたヘッドセットを装着した生徒の声をパソコンで録音する方式で実施され、USBメモリーに保存された録音音声を委託業者に送って評価するんだそうです。サイトの個人ページにログインして動画を見ながら答えており、「なるほど、こうしてやるんだ。でも隣でしゃべっている生徒の声が聞こえてこないのかな・・・?」と心配しました。一体どんな問題が出題されたんでしょう。国立教育政策研究所のHPにはスクリプトがpdfで公開されているようですから、後ほど目を通してみようと思います。

 

 「書く」では、世界の食糧危機と日本の食品ロス問題(毎日沢山の食糧が廃棄されている問題)のレポートを読んでどう感じたか、英文で書かせる問題がありました。限られた解答時間の中でどういった観点から書けばいいのか悩んだだろうな・・・と思いました。

 でも、今回一番印象に残った問題として敢えて一つ取り上げるとすれば、次の問題です。外国人旅行客用のタウン・ガイドを作成するために、「学校」を表す2つのピクトグラム(案内用イラスト)のうち、どちらが良いかをウェブサイトで意見を募集するという設定で、1つを選んで自分の考えや理由を25字以上の英語で書くというものです。

  

 皆さんだったらどちらを選びますか?自分がもつ「学校」のイメージで選ぶのではなく、「外国人旅行客にとって」という前提条件が問題をことさら難しくしているようにも思います。一体どちらを選んだ中学生が多かったのでしょう?

 

 私、とても興味を持ちましたので、担任の先生の協力をいただき、機械科3年B組の生徒の皆さんにSHRの時間にアンケートを実施してもらいました。結果は、Aが22人(55%)、Bが18人(45%)で僅かにAのほうが多かったものの拮抗していました。

 Aを選んだ人たちは、「黒板と本があり、大きい大人(先生)が小さい子ども(生徒)に何かを教えているようで、一目瞭然で学校をイメージしやすく、この光景は世界共通だと思う」といった理由を挙げた人が多かったです。また、「Bの建物は病院や図書館、博物館かもしれないし、日本人ならともかく、外国人にとって時計があるこういう形状の建物が果たして学校と認識できるのか?」と疑問を呈した人もいました。

 一方、Bを選んだ人たちは、「Bは生徒たちが朝8時に登校しているようで学校と分かりやすいけど、Aは塾(予備校)とも捉えられるのでは」といった理由を挙げていました。その他、「Aは読み聞かせをしているようで幼稚園や保育園のようだ」とか、「外国の学校で(日本のように)教師から生徒へ一方的な授業がされているのだろうか」と、いぶかる理由を挙げた人も数名いて興味深かったです。それにしても、それらの理由を英語で書くのは、語彙力の問題もあり難しかったかもしれません。

 

 文部科学省は中3で「英検3級相当以上」という学習目標を掲げているようです。それはともかく、自分で考え、それを英語で表現し、相手に伝える力は、私の世代の人たちが英語学習で求められた力とは大きく異なっているように思えます。

 グローバル化という言葉が盛んに使われている昨今、コミュニケーション能力重視の姿勢は続くでしょうから、日頃から自分の考えを英語で伝える練習はますます必要になることでしょう。でも、一朝一夕にはそういった力は身につかないはずです。新入生の決意作文の中に、「特に、中学校のときに苦手だった英語を頑張りたい」と10名近くの生徒の皆さんが書いていましたが、そういうところを踏まえて地道な努力を期待します。

【校長】