平成27年度スーパーサイエンスハイスクール研究開発実施報告(要約)


① 研究開発課題
② 研究開発の概要
③ 平成27年度実施規模
④ 研究開発内容
⑤ 研究開発の成果と課題
① 研究開発課題

Ⅰ 国際社会で科学技術をリードすることのできる人材育成のため、科学的な創造力・独創力・探究心や科学的リテラシー及び語学力を身に付けるためのカリキュラム・指導法の研究開発を行う。
Ⅱ SSHの研究成果を地域に普及を図り、理数教育向上のための中核拠点校としての在り方に関する研究開発を行う。
② 研究開発の概要

研究開発課題を解明するために以下の 4つの仮説を設定する。

仮説【1】

創造力・独創力を育成するための教材を開発し、それを用いた探究活動や、大学の施設設備を活用し、より高いレベルの課題研究・テーマ研究等に取り組むことによって、科学的な創造力・独創力・探究心を育成することができる。

仮説【2】

「科学情報」や「科学家庭」などを学校設定科目とし、教科横断型の学習教材を開発するとともに最先端の科学技術の授業等によって、科学的リテラシーの醸成を図ることができる。

仮説【3】

「科学英語」を学校設定科目とし、科学分野の学習教材を開発することによって、国際社会で活躍できる語学力を身に付けることができる。

仮説【4】

研究成果の普及活動をとおして理数教育の充実を図るシステムを構築することによって、県内の理数教育の水準を高める中核拠点校となることができる。

これらの 4つの仮説に基づき、以下の【1】〜【4】の研究テーマを設定し、以下の事業を実践する。

【1】科学的な創造力・独創力・探究心(科学的な探究能力)の育成

 (1) スーパーサイエンスⅠ「科学的能力開発ゼミ」(理数科 1年)
 (2) スーパーサイエンスⅡ「課題研究」(理数科 2年)
 (3) テーマ研究(普通科・美術科1、2年) 
 (4) 科学系部活動の研究(希望生徒)

【2】科学的リテラシー(科学知識の活用能力)の醸成

 (1) 科学情報・科学家庭(理数科 1年)
 (2) 特別授業・特別講演会(理数科及び普通科 2年・全校生徒)

【3】語学力を身に付ける学習活動の推進

 (1) 科学英語(理数科 1年)
 (2) 英語の活用力強化(理数科2・3年)
 (3) スーパーサイエンスⅢ(理数科 3年)新規

【4】中核拠点校としてのシステム構築

 (1) 普及活動と中核拠点校の在り方 
 (2) 地域社会への成果の普及

●今年度、新たに学校設定科目スーパーサイエンスⅢにおいて、テーマ【3】語学力を身につける学習活動に関する取組を取り入れ重点的に取り組んだ。
 上記の 4つの仮説に基づく活動を統一するための行動指針として

『みつめる』『きわめる』『つなげる』二高SSH

を掲げる。これは、科学的探究能力(科学する力)の育成に必要な取組を示すものである。
③ 平成27年度実施規模

各学年理数科の 3クラス(生徒 120名)を主対象に実施する。指定 5か年で全校生徒に対象を拡大していく。
通番事業名理数科(主対象)普通科美術科
1スーパーサイエンスⅠ「科学的能力開発ゼミ」 ○  
2スーパーサイエンスⅡ「課題研究」 ○  
3テーマ研究  ○ ○
4科学系部活動の研究 ○ ○ ○
5科学情報・科学家庭 ○  
6特別授業・特別講演会 ○ ○ ○
7スーパーサイエンスⅢ ○  
8科学英語 ○  
9英語の活用力強化 ○  

●事業対象の拡大について
  • 昨年度に引き続き、普通科・美術科 1,2年生全クラスを対象とし「テーマ研究」を実施した。
  • 探究活動の全校展開が完成し、全科全クラスの全校生徒が探究活動を経験した。
④ 研究開発内容

第1年次(平成23年度)
  スーパーサイエンスⅠ
  (ア)科学的能力開発ゼミ:科学的な創造力・独創力・探究心を培う。物理・化学・生物・地学の分野で実施。
  (イ)環境学習:観察、実験、フィールドワークを伴った野外研修の実施。生物や地層・地形を観察する能力を高める。
  (ウ)体験学習:植物染色体についての講義と観察体験学習の実施。先端の科学技術を学ぶ。
 スーパーサイエンスⅡ
  (ア)課題研究:大学・大学院と連携して、物理・化学・生物・地学・数学・工学・環境の各分野で実施。
  (イ)体験学習:関東地方の大学・研究機関・博物館の研修の実施。最先端の科学技術を学ぶ。
 スーパーサイエンスⅢ
  (ア)3年間の探究活動をまとめて個人ファイル化し、SSH研究集録を作成する。
  (イ)環境学習:熊本県立大学環境共生学部と連携して実施。
 普通科におけるテーマ研究:研究手法や論理的思考力・創造力・独創力・探究心等を身に付ける。
 科学系部活動の研究 :専門的な研究に取り組み、科学的な創造力・独創力・探究心等を高める。
 科学情報・科学家庭・科学英語:教科横断型の学校設定科目。教材開発に重点を置く。
 特別授業:先端科学技術の知見及び研究者・技術者を目指そうとする生徒の育成を図る。大学の先生による「出前授業」や生徒が大学へ出向いて実験・実習を行う「体験学習講座」を実施。
 特別講演会:全校生徒を対象に、科学の分野で国際的に優れた業績を上げている研究者や技術者を講師に招き、SSH特別講演会を開催。
 英語の活用力強化:外国人講師による英語での理科実験(物理、化学)やJSPS(日本学術振興会)フェロー講義
を開催。
 成果の普及:SSHの研究成果や科学系部活動の成果を県内の高校や小中学校、一般市民へ普及する。
     
第2年次(平成24年度)
 スーパーサイエンスⅠの科学的能力開発ゼミの新しい教材や指導方法の開発を続ける。数学分野を追加して実施。
 スーパーサイエンスⅡの課題研究の口頭発表やポスターセッションにおいて、英語での発表を目指す。
 科学情報・科学家庭・科学英語の教材や指導方法を改善して実施。
 成果普及の方法の在り方を検証し、さらに工夫して実施。
     
第3年次(平成25年度)
 スーパーサイエンスⅠの科学的能力開発ゼミについて、第 2年次までに開発した教材や指導方法を冊子にまとめ、
さらに教材や指導方法の開発を行い実施。
 スーパーサイエンスⅡの課題研究の口頭発表やポスターセッションにおいて、英語での発表を行う。
 科学情報・科学家庭・科学英語の教材や指導方法をさらに改善して実施。
 成果普及の方法の在り方を検証し、さらに改善して実施。
 第二年次の各事業について評価規準の作成と評価方法の工夫及び改善を行い、より効果的な事業の推進ができる
よう検討していく。
 SSH研究成果中間報告会を開催し、研究成果の普及に努める。
     
第4年次(平成26年度)
 【1】科学的な創造力・独創力・探究心(科学的な探究能力)の育成
  スーパーサイエンスⅠの科学的能力開発ゼミにおいて、生徒の変容の様子をはかる評価法の検討。
  課題研究・科学系部活動の研究・テーマ研究などを外部の発表会、学会にて発表し研究の質を向上させる。
 【2】科学的リテラシー(科学知識の活用能力)の醸成
  科学情報・科学家庭の内容を検証し、改善して実施。外部への発表・普及を行う。
  特別授業・特別講演会の充実。
 【3】語学力を身に付ける学習活動の推進
  科学英語の 3年間の教材を比較し、より効果的な教材開発を行う。
 【4】中核拠点校としてのシステム構築
  県の理数教育向上のためのシステムの構築を推進する。
 【5】中間評価を受けての取組
  第 1年次〜3年次の各事業について事業評価を行い、より効果的な事業の推進ができるよう検討していく。
     
第5年次(平成27年度)本年度
 【1】科学的な創造力・独創力・探究心の育成
  スーパーサイエンスⅠの科学的能力開発ゼミにおいて、生徒の変容の様子をはかる評価法を確立する。
  課題研究・科学系部活動の研究・テーマ研究などを外部の発表会、学会にて発表し研究の質を向上させる。
  校内の研究発表会を充実し、学科学年を越えて探究活動について切磋琢磨する環境を構築する。
 【2】科学的リテラシーの醸成
  科学情報・科学家庭の内容を検証し、改善して実施。大学等外部機関との連携や他教科との連携も行う。外部への発表・普及を行う。
  特別授業・特別講演会の充実。
 【3】語学力を身に付ける学習活動の推進
  科学英語の3年間の教材を比較し、より効果的な教材開発を行う。英語による発表会や国際学会などで英語による発表を行う。
 【4】中核拠点校としてのシステム構築
  熊本県SSH指定校合同課題研究発表会の開催と充実。SSH校以外の県内高校や他県の SSH校などにも連携を
広げる。
  熊本県内の科学系部活動生徒の合同研修会をさらに充実させ、県内高校生の研究内容の充実を図る。
  5年間の SSH事業をまとめた研究成果報告会を開催し、各種取組の成果の普及を図る。
     
○教育課程上の特例等特記すべき事項
 理数科 1年:「総合的な学習の時間」に代えて「スーパーサイエンスⅠ」(1単位)、「情報の科学」に代えて「科学情報」(2単位)、「家庭基礎」に代えて「科学家庭」(2単位)、「英語表現Ⅰ」に代えて「科学英語」(2単位)を
設定する。
 理数科 2年:「総合的な学習の時間」に代えて「スーパーサイエンスⅡ」(1単位)を設定する。
 理数科 3年:「総合的な学習の時間」に代えて「スーパーサイエンスⅢ」(1単位)を設定する。
 
○平成 27年度の教育課程の内容
 平成 27年度の教育課程表を実施報告書Ⅳの関係資料に記載する。
     
○具体的な研究事項・活動内容
 【1】科学的な創造力・独創力・探究心(科学的な探究能力)の育成
  (1)スーパーサイエンスⅠ「科学的能力開発ゼミ」(理数科 1年)
  (2)スーパーサイエンスⅡ「課題研究」(理数科 2年)
  (3)テーマ研究(普通科・美術科1、2年)
  (4)科学系部活動の研究(希望生徒)
 【2】科学的リテラシー(科学知識の活用能力)の醸成
  (1)科学情報・科学家庭(理数科 1年)
  (2)特別授業・特別講演会(全校生徒)
 【3】語学力を身に付ける学習活動の推進
  (1)科学英語(理数科 1年)
  (2)英語の活用力強化(理数科2・3年)
  (3)スーパーサイエンスⅢ(理数科 3年)新規
 【4】中核拠点校としてのシステム構築
  (1)普及活動と中核拠点校の在り方
  (2)地域社会への成果の普及
⑤ 研究開発の成果と課題

○実施による成果とその評価

  【1】科学的な創造力・独創力・探究心(科学的な探究能力)の育成
  (1)スーパーサイエンスⅠ「科学的能力開発ゼミ」(理数科 1年) 評価法の研究により、客観的評価と自己評価と併用することで生徒の変容を捉える手法を開発した。その結果、生徒の創造力・独創力、探究心の成長を確認することができた。
  (2)スーパーサイエンスⅡ「課題研究」(理数科 2年) 外部発表会、学会等に参加する機会を増やし、全ての班が発表した。大学院生に対しポスター発表し、アドバイスを受ける機会を設けた。発表を繰り返すことで、研究内容を深化させることができた。
  (3)テーマ研究(普通科・美術科1、2年) 1・2年生ともに全員が研究内容をポスターにまとめ、ゼミ内で発表会を行った。代表 50班は体育館でのポスター発表会(学年)、県立劇場での SSH研究成果報告会(全校・外部公開)を実施した。生徒のポスタープレゼンテーションを評価した結果では ,科学的探究のレベルまで到達した生徒数が H26:18.9%から H27:33.8%と増加しており、探究の質も向上してきた。
  (4)科学系部活動の研究(希望生徒) 物理、化学、地学、生物の 4部門で活動、研究成果を外部発表会、学会等で発表した。物理部が熊本県生徒理科研究発表会で最優秀賞受賞、九州大会出場。生物部が平成 27年度熊本県科学研究物展示会にて熊本県教育委員会賞を受賞。
   
 【2】科学的リテラシー(科学知識の活用能力)の醸成
  (1)

科学情報・科学家庭(理数科1年) 科学情報では、昨年度に引き続き、Scrachを用いたプログラミング学習を行った。
科学家庭では熊本県立大学、尚絅大学と連携し、官能検査体験と食事摂取調査の分析、定量する方法に取り組んだ。また、鰹節製造販売業者にアドバイスをいただき、だしの成分について科学的検証を行った。今年度新たな取組として、熊本県立教育センターと共同で授業研究を行った。2年生が 1年生の授業にメンター役で参加し、知識構成型ジグソー法で研究対象についての知識を深めた。また、研究内容をポスターにまとめ、ポスター発表を行った。

  (2)特別授業・特別講演会(全校生徒)大学と連携し、体験学習講座や高校での出前授業を実施した。今年度は美術科の生徒にも対象を拡げ、理数科・普通科・美術科の全生徒向けに九州大学や熊本大学、東海大学での体験学習講座を実施した。全校生徒対象の特別講演会では、KUMADAIマグネシウム合金に関して熊本大学先進マグネシウム国際研究センター長 教授 河村能人先生の講演を行った。
   
 【3】語学力を身に付ける学習活動の推進
  (1)科学英語(理数科 1年)
   マラヤ大学予備教育部日本留学特別コース(マレーシア)の高校生と英語でポスターセッション交流会を行った。研究の内容を英語でポスター化し、マレーシアの高校生と研究に関する交流発表会を行った。
  (2)英語の活用力強化(理数科 2年)
   2年生において、1年次実施の科学英語を発展させたコミュニケーション能力育成プログラムを新たに実施した。課題研究の内容を英語でポスターにまとめ、大学院の留学生向けに「英語発表会」を行った。
  (3)スーパーサイエンスⅢ(理数科 3年)新規
   3年間の研究の成果を英語ポスターにまとめ、大学院の留学生向けに「英語発表会」を行った。
   
 【4】中核拠点校としてのシステム構築
  (1)普及活動と中核拠点校の在り方 熊本県内 SSH3校合同でのポスター発表会を企画、開催した。熊本県内の科学系部活動生徒の合同研修会を企画、開催した。
  (2)地域社会への成果の普及 江津湖みなも祭り、世界一行きたい科学広場、西原村水生生物調査、青少年のための科学の祭典などの科学実験教室の実施。日本物理教育学会九州地区研究会、熊本県教育研究会理化部会における研究発表において実践事例を報告した。
   
○課題として以下の点が挙げられる。
 
 【1】科学的な創造力・独創力・探究心(科学的な探究能力)の育成
  (1)スーパーサイエンスⅠ「科学的能力開発ゼミ」(理数科 1年)
   今回作成したルーブリックをもとに、より汎用性の高いルーブリック評価法を作成し、他の探究活動や各教科の授業にも広めていくことが求められる。
  (2)スーパーサイエンスⅡ「課題研究」(理数科 2年)
   外部機関との連携、外部発表会参加の充実など研究の質を高める手法を確立できた。今後はこのノウハウを汎用性が高い形で指導書等のマニュアル化を検討していきたい。
  (3)テーマ研究(普通科・美術科1、2年)
   探究活動の指導経験がない教師にも指導の道筋が見えやすいようにワークシートや指導案を作成できた。この内容をさらに充実させ、汎用性を高めることが必要である。
  (4)科学系部活動の研究(希望生徒)
   継続研究の充実や、課題研究班と共同して研究活動を行い、内容を充実させる。また、参加生徒の多くが理数科であるので、他の学科からも参加者を増やし、活動を拡大充実させる。
   
 【2】科学的リテラシー(科学知識の活用能力)の醸成
  (1)科学情報・科学家庭(理数科 1年)
   5年間の実施内容をもとに、他教科との連携や普通科・美術科への成果の普及を進める。
  (2)特別授業・特別講演会(全校生徒)
   5年間の実施内容をふまえ、さらなる充実を目指す。
   
 【3】語学力を身に付ける学習活動の推進
  (1)科学英語(理数科 1年)
  (2)英語の活用力強化(理数科2・3年)
  (3)スーパーサイエンスⅢ(理数科 3年)
   理数科3か年を見通した、継続的、かつ計画的な指導プログラムを構築する。県内、県外、及び国際的な研究発表会やコンテストへの積極的な参加を図る。
   
 【4】中核拠点校としてのシステム構築
  熊本県内 SSH3校、各理科部会と連携することができた。次年度は熊本県外の SSH校との連携、県内の SSH校以外との連携を推進する。